第32話「最強ヴァンパイア、負ける確率90%と予測す!」
ドームの奥、ステージへと繋がる長い通路。
スモークが薄く漂い、壁越しに観客の熱狂が地鳴りのように響いていた。
アカネが腕を組み、舌打ちする。
「チッ……すげぇ歓声だな。まるで暴走族の集会じゃねぇか」
マナブが冷静に声を落とし、耳を澄ませる。
「いや……あれは観客全体が音に乗せられてる状態だ。完全にセリウスのペースだ。クラブのような熱気を生んでいる」
「低音のキックとベースで空間を支配してる。理屈を超えた盛り上げ方だ」
リーラは目を閉じ、深く息を吐く。
「良い音じゃ。だが、負ける訳にはいかぬ」
重たい扉が開き、ステージへと続く階段が現れる。
観客の視線とライトの熱が、一気に彼らの体を包み込んだ。
ステージに足を踏み入れた瞬間、凄まじい熱気が吹きつけた。
数万の観客が跳ね、腕を振り上げ、セリウスの音に身を委ねている。
「うおおおおおおお!!!」
「セリウス! セリウス!」
その声援の渦の中、ユウトを除いたブラムーの三人が立ち位置につく。
スポットライトが彼らを照らすと、一瞬だけ歓声が変化した。だがすぐに低音のうねりに飲み込まれ、再び「セリウス!」の大合唱に戻ってしまう。
「……チッ、完全に向こうがホームだぜ」
アカネが不敵に笑い、腰に手を当てた。
「上等だよ。燃えるじゃねーか」
マナブは観客の動きをじっと観察していた。
「視線の八割がセリウスに固定されてる。俺たちに注がれる注意はごく一部……。この状態で巻き返すには、相当なインパクトが必要だ」
「じゃが、不可能ではないのじゃろ?」
リーラが横目で問う。
「演奏の一撃目で“空気の支配権”を奪えれば、逆転はある」
マナブはそう結論づけるが、その声は硬かった。
スクリーンにはセリウスの姿が大写しになっている。
サングラス越しに笑いながら、フェーダーを操り、観客を煽る。
「お前らぁ! まだまだ足りねぇぞ! もっと狂えぇぇ!!!」
ドロップが落ち、轟音の低音が炸裂する。
観客の熱狂がさらに跳ね上がり、ドーム全体が揺れた。
「ぐっ……腹に響くな……」マナブが思わず声を漏らす。
「クソッタレ、ズシズシ響いてくるな! でもよ、アタシらの音だって負けてねぇ!」アカネが肩を回し、笑って見せる。
リーラはマイクを握りしめた。
「うむ……負けるわけにはいかぬ」
ここで、ようやく司会がステージ中央に現れた。
だがその声は、すでにセリウスの作り出した音と観客の咆哮にかき消されそうになっていた。
「え、えーっ、それでは! 二回戦第一試合、DJセリウスvsブラムーを開始いたします!」
観客は説明など気にせず、狂ったように踊り叫び続けている。
「ルールは時間内に客を盛り上げた方が勝利! 会場全体の動きと歓声をコンピュータで解析し、より大きな熱狂を生み出したチームが勝ちです!」
「うおおおおおおお!!!」
アカネが舌打ちして笑う。
「クソ、完全に向こうのペースじゃねぇか。だけどよ……こっからぶっ壊してやんのがアタシらだろ?」
「……そうだな」マナブが小さく頷いた。
「だが、我々に不利な勝負、ユウトの不在など、様々な状況を鑑みて、ここから勝てる確率は10%と言っていい。だが、奇跡を起こすのがブラムーだ」
リーラが拳を握り、観客を見渡した。
「よし――」
司会が大きく腕を振り上げる。
「では――バトル開始ッ!!!」
その瞬間、ライトが炸裂し、ブラムーとセリウスの戦いが幕を開けた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
よろしければ、率直な評価や、感想をいただければ励みになります!より良い作品が創れるよう、頑張ります!
よろしくお願いします。




