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最強ヴァンパイア、人間界でバンドデビューを決意す  作者: Rockston.
バンドバトル 決勝トーナメント編
31/69

第31話「最強ヴァンパイア、vs宿敵セリウス!」

「リーラ。お前だけは、絶対に倒す」


 背後から突き刺さる声に、思わず足が止まった。


 振り返れば、そこに立っていたのはサングラスの奥で目を光らせる男――EDMの帝王、DJセリウス。


 彼は片口を吊り上げ、挑発的に笑う。


「楽しみにしてるぜ。本物の“歌”ってやつを、な」


 そう吐き捨て、踵を返そうとした――その瞬間。


「息子よ!」


 大臣の声が廊下に響き渡った。


「……えっ、息子!?」

 アカネが目を剥き、マナブも手にしていた譜面を取り落としそうになる。

 リーラも一瞬だけ目を見開き、すぐに表情を引き締めた。


 驚愕するブラムーのメンバーを置き去りに、舞台袖の空気は一気に張り詰めていく。


 セリウスは足を止め、ゆっくりと振り返った。

 サングラスの奥から突き刺すような眼差しを父へと向ける。


「……親父、か」

 挑発的な笑みを浮かべたまま、吐き捨てるように言った。


 大臣は一歩踏み出し、必死に声をかける。


「セリウス……もう良いのだ。お主の心の痛みはわかっておる。だが、私はこれからも姫様をお支えしたい。国を守るために共に力を尽くしていこうではないか。お主もだ……息子よ」


 セリウスの眉がぴくりと動いた。

 しかし、次の瞬間、その目は怒りで燃え上がる。


「ふざけるな、親父!!!」


 怒声が舞台袖に轟き渡り、ブラムーのメンバーは言葉を失った。


「俺たちがどれだけ屈辱を味わってきたと思ってんだ! 王族の血を引いていながら……いつも頭を下げ、蔑まれ、笑われ……! 悔しさで夜も眠れねえ日が、俺にはどれだけあったか……親父が一番わかってるはずだろう!」


 大臣は苦しげに顔をゆがめ、拳を握りしめる。

「……それでも、国を思い、耐え抜いてきたのだ。お主の力は、憎しみではなく未来のためにこそ使うべきもの……」


 だがセリウスは聞く耳を持たなかった。


「俺は絶対に許さねえ! 王位を奪ったあの家系を……そしてリーラを……! 必ず叩き潰し、この手で王位を継承する!!」


 吐き捨てるように言い放ち、セリウスは乱暴に踵を返した。


「待て、セリウス!」

 大臣の叫びも虚しく、その背中は闇の中へと消えていった。


 残された大臣は拳を震わせながら、ただ立ち尽くすしかなかった。


 リーラはその光景を見て、幼い日の記憶を呼び起こす。


 ――泥だらけになって遊んだ日々。

 ――「俺が一番になる!」と胸を張って笑った幼なじみ。


 人一倍プライドが高く、誰よりも強くあろうとした少年。

 けれどその裏にあったのは、常に影。


(……辛かったのだろうな)


 理解できる。

 痛みも、苦悩も。


 だが。


「戦に、情けは不要じゃ」


 リーラはつぶやき、瞳に炎を宿す。


―――


 アナウンスが会場に響いた。


『次なる対戦――ブラムー VS DJセリウス!』


 観客の歓声が爆発する。

 その熱気に押され、舞台袖が震える。


 リーラはギターを構えて、仲間たちを振り返った。


 アカネは迷いなくスティックを構え、マナブもベースを抱きしめるように握りしめている。

 二人の瞳に揺らぎはなかった。


「ユウト氏がいないのは痛手だ」マナブが言う。

「だが……俺たちには俺たちの音があるぜ」アカネが力を込める。


「戻って来るかは分からぬ」リーラは静かに首を振った。

「だが、戻れる音を――我らで示そう」


 アカネがにやりと笑い、スティックを掲げる。


「ブラムーの勝利のために……ブチかますだけだぜ!」


 観客の声がさらに大きくなる。

 ライトが点滅し、レーザーが宙を切り裂く。


 セリウスがステージに現れた瞬間、轟音のサブベースがホールを揺らした。

 地響きのような低音。空気を押し潰すほどの音圧。


 リーラは深く息を吸い、目を閉じる。


 幼なじみの顔。誇り高い瞳。

 だが――勝負は勝負。


「行くぞ」


 光が爆ぜ、観客の絶叫が一斉に降り注ぐ。


 Zドームは戦場と化した。


 ユウトが戻るか否かは、まだ誰にもわからない。

 だが、今この瞬間――ブラムーの戦いが始まる。

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