第31話「最強ヴァンパイア、vs宿敵セリウス!」
「リーラ。お前だけは、絶対に倒す」
背後から突き刺さる声に、思わず足が止まった。
振り返れば、そこに立っていたのはサングラスの奥で目を光らせる男――EDMの帝王、DJセリウス。
彼は片口を吊り上げ、挑発的に笑う。
「楽しみにしてるぜ。本物の“歌”ってやつを、な」
そう吐き捨て、踵を返そうとした――その瞬間。
「息子よ!」
大臣の声が廊下に響き渡った。
「……えっ、息子!?」
アカネが目を剥き、マナブも手にしていた譜面を取り落としそうになる。
リーラも一瞬だけ目を見開き、すぐに表情を引き締めた。
驚愕するブラムーのメンバーを置き去りに、舞台袖の空気は一気に張り詰めていく。
セリウスは足を止め、ゆっくりと振り返った。
サングラスの奥から突き刺すような眼差しを父へと向ける。
「……親父、か」
挑発的な笑みを浮かべたまま、吐き捨てるように言った。
大臣は一歩踏み出し、必死に声をかける。
「セリウス……もう良いのだ。お主の心の痛みはわかっておる。だが、私はこれからも姫様をお支えしたい。国を守るために共に力を尽くしていこうではないか。お主もだ……息子よ」
セリウスの眉がぴくりと動いた。
しかし、次の瞬間、その目は怒りで燃え上がる。
「ふざけるな、親父!!!」
怒声が舞台袖に轟き渡り、ブラムーのメンバーは言葉を失った。
「俺たちがどれだけ屈辱を味わってきたと思ってんだ! 王族の血を引いていながら……いつも頭を下げ、蔑まれ、笑われ……! 悔しさで夜も眠れねえ日が、俺にはどれだけあったか……親父が一番わかってるはずだろう!」
大臣は苦しげに顔をゆがめ、拳を握りしめる。
「……それでも、国を思い、耐え抜いてきたのだ。お主の力は、憎しみではなく未来のためにこそ使うべきもの……」
だがセリウスは聞く耳を持たなかった。
「俺は絶対に許さねえ! 王位を奪ったあの家系を……そしてリーラを……! 必ず叩き潰し、この手で王位を継承する!!」
吐き捨てるように言い放ち、セリウスは乱暴に踵を返した。
「待て、セリウス!」
大臣の叫びも虚しく、その背中は闇の中へと消えていった。
残された大臣は拳を震わせながら、ただ立ち尽くすしかなかった。
リーラはその光景を見て、幼い日の記憶を呼び起こす。
――泥だらけになって遊んだ日々。
――「俺が一番になる!」と胸を張って笑った幼なじみ。
人一倍プライドが高く、誰よりも強くあろうとした少年。
けれどその裏にあったのは、常に影。
(……辛かったのだろうな)
理解できる。
痛みも、苦悩も。
だが。
「戦に、情けは不要じゃ」
リーラはつぶやき、瞳に炎を宿す。
―――
アナウンスが会場に響いた。
『次なる対戦――ブラムー VS DJセリウス!』
観客の歓声が爆発する。
その熱気に押され、舞台袖が震える。
リーラはギターを構えて、仲間たちを振り返った。
アカネは迷いなくスティックを構え、マナブもベースを抱きしめるように握りしめている。
二人の瞳に揺らぎはなかった。
「ユウト氏がいないのは痛手だ」マナブが言う。
「だが……俺たちには俺たちの音があるぜ」アカネが力を込める。
「戻って来るかは分からぬ」リーラは静かに首を振った。
「だが、戻れる音を――我らで示そう」
アカネがにやりと笑い、スティックを掲げる。
「ブラムーの勝利のために……ブチかますだけだぜ!」
観客の声がさらに大きくなる。
ライトが点滅し、レーザーが宙を切り裂く。
セリウスがステージに現れた瞬間、轟音のサブベースがホールを揺らした。
地響きのような低音。空気を押し潰すほどの音圧。
リーラは深く息を吸い、目を閉じる。
幼なじみの顔。誇り高い瞳。
だが――勝負は勝負。
「行くぞ」
光が爆ぜ、観客の絶叫が一斉に降り注ぐ。
Zドームは戦場と化した。
ユウトが戻るか否かは、まだ誰にもわからない。
だが、今この瞬間――ブラムーの戦いが始まる。
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