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最強ヴァンパイア、人間界でバンドデビューを決意す  作者: Rockston.
バンドバトル 決勝トーナメント編
28/69

第28話「最強ヴァンパイア、不協和音を察知す!」

 ――会場全体を揺るがした和太鼓の破裂音が消えたあと、Zドームには一瞬の静寂が訪れた。


 すぐに、観客席から大歓声が巻き起こる。

「ブラムー! ブラムー!!」

「和太鼓を打ち破った……まさか、あんな決着になるなんて!」


 司会者がマイクを握りしめ、叫んだ。

「皆さん! ただいまをもちまして、全バトルが終了いたしました! これより審査員による最終集計に移ります!」


 審査員たちが慌ただしく集計に入る


 数分後――。


「……審査の結果!」

 司会者が大きく腕を振り上げる。

「勝者は――ブラムー!!! ブラムーです!!!」


 再び轟くような拍手と声援。

 観客が一斉に立ち上がり、会場全体が地鳴りのように震えた。


―――


 その熱気の中、ステージ中央に立つ焔鬼蓮華えんきれんげのリーダー鬼神丸が、ゆっくりと口を開いた。


「……見事なり」

 声は低く響き、場内を一気に静める力があった。

「良い戦であった。我らは負けた。だが、誇らしい戦であった。……素晴らしい家臣を育てたものよ、リーラ殿」


 その言葉にリーラが小さく笑う。

「……いや、あやつらは家臣ではない。我の“仲間”じゃ」


 その一言に、ブラムーのメンバーたちの胸が熱くなる。

 ユウトはギターを握りしめ、マナブは眼鏡を押し上げ、アカネは破れたスネアを見下ろしながら、少しだけ涙ぐんだ。


 鬼神丸は、ゆっくりと瞳を細める。

「……なるほど。家臣ではなく仲間、か」

 そしてふっと笑みを浮かべる。


「我らはこの戦に勝利し、ヴァンパイア族の王位を得るつもりであった。だが……心変わりした」

 観客も審査員もざわめく。

「え? ヴァンパイア? 王位? どういうこと!?」

「今なんて言った!?」


「これほどの人間を育てるお主について行きたくなったのだ、リーラ殿。我らは、お主の軍門に下ろう。お主となら――魔王をも倒すことができるやもしれぬ」


 観客のざわめきがさらに大きくなる。

「魔王!? ヴァンパイア!?」

「ゲームの話……!?」


 リーラはすぐに一歩近づき、小声で返す。

「……小声で話してくれ。力がバレたらゲームオーバーなのじゃ。それより……魔王とはどういうことじゃ? やつは、わらわが封印したはずじゃ」


 鬼神丸は低く答える。

「……お主が人間となったことで、封印の力が弱まったのだ。魔王の力が、少しずつ復活しつつある」


 リーラの表情が険しくなる。

「……そうか。ならば急がねばならぬな」


―――


 戦いが終わり、ブラムーの面々は控え室に戻った。

 誰もが疲れ切っていたが、心は燃え尽きるどころか、むしろ熱く燃えていた。


 最初に口を開いたのはアカネだった。

「なぁ……スネアのことなんだけどさ」


 彼女は破れたスネアを手に取り、指で縁をなぞった。

「……細工されてたかも知れない。調整は完璧だった。これまで何万回も叩いてきたスネアだ。破れるかどうかなんて、アタシには分かるんだよ」


 ユウトが顔をしかめる。

「……まさか」


 マナブが低くつぶやく。

「確かに、アカネ氏の言うとおりだ。これは偶然じゃない」


 リーラがゆっくりと歩み寄り、スネアを手に取る。

 その目が赤く光った。


「……やはりか」

 彼女の指先から魔力が走り、破れたスネアに淡い紋様が浮かび上がった。


「(これは……時間差魔法)一定のタイミングで破れるよう細工されている」


 ブラムーのメンバーは息を呑む。

「……!」


 リーラはスネアから目を離さず、低く告げる。

「この細工ができたのは――控え室にいた大臣だけじゃ」


 控え室に重苦しい空気が流れた。

 勝利の余韻が、一瞬にして消え去る。


 ブラムーの面々は互いに顔を見合わせた。


 仲間の一人であった、マネージャーの大臣が裏切っていた……。


 強敵、焔鬼蓮華えんきれんげとのバトルに勝利することができた矢先、新たな戦いの気配が、すぐそこまで迫っているのを全員が感じ取っていた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

よろしければ、率直な評価や感想をいただけるとうれしいです。

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