第28話「最強ヴァンパイア、不協和音を察知す!」
――会場全体を揺るがした和太鼓の破裂音が消えたあと、Zドームには一瞬の静寂が訪れた。
すぐに、観客席から大歓声が巻き起こる。
「ブラムー! ブラムー!!」
「和太鼓を打ち破った……まさか、あんな決着になるなんて!」
司会者がマイクを握りしめ、叫んだ。
「皆さん! ただいまをもちまして、全バトルが終了いたしました! これより審査員による最終集計に移ります!」
審査員たちが慌ただしく集計に入る
数分後――。
「……審査の結果!」
司会者が大きく腕を振り上げる。
「勝者は――ブラムー!!! ブラムーです!!!」
再び轟くような拍手と声援。
観客が一斉に立ち上がり、会場全体が地鳴りのように震えた。
―――
その熱気の中、ステージ中央に立つ焔鬼蓮華のリーダー鬼神丸が、ゆっくりと口を開いた。
「……見事なり」
声は低く響き、場内を一気に静める力があった。
「良い戦であった。我らは負けた。だが、誇らしい戦であった。……素晴らしい家臣を育てたものよ、リーラ殿」
その言葉にリーラが小さく笑う。
「……いや、あやつらは家臣ではない。我の“仲間”じゃ」
その一言に、ブラムーのメンバーたちの胸が熱くなる。
ユウトはギターを握りしめ、マナブは眼鏡を押し上げ、アカネは破れたスネアを見下ろしながら、少しだけ涙ぐんだ。
鬼神丸は、ゆっくりと瞳を細める。
「……なるほど。家臣ではなく仲間、か」
そしてふっと笑みを浮かべる。
「我らはこの戦に勝利し、ヴァンパイア族の王位を得るつもりであった。だが……心変わりした」
観客も審査員もざわめく。
「え? ヴァンパイア? 王位? どういうこと!?」
「今なんて言った!?」
「これほどの人間を育てるお主について行きたくなったのだ、リーラ殿。我らは、お主の軍門に下ろう。お主となら――魔王をも倒すことができるやもしれぬ」
観客のざわめきがさらに大きくなる。
「魔王!? ヴァンパイア!?」
「ゲームの話……!?」
リーラはすぐに一歩近づき、小声で返す。
「……小声で話してくれ。力がバレたらゲームオーバーなのじゃ。それより……魔王とはどういうことじゃ? やつは、わらわが封印したはずじゃ」
鬼神丸は低く答える。
「……お主が人間となったことで、封印の力が弱まったのだ。魔王の力が、少しずつ復活しつつある」
リーラの表情が険しくなる。
「……そうか。ならば急がねばならぬな」
―――
戦いが終わり、ブラムーの面々は控え室に戻った。
誰もが疲れ切っていたが、心は燃え尽きるどころか、むしろ熱く燃えていた。
最初に口を開いたのはアカネだった。
「なぁ……スネアのことなんだけどさ」
彼女は破れたスネアを手に取り、指で縁をなぞった。
「……細工されてたかも知れない。調整は完璧だった。これまで何万回も叩いてきたスネアだ。破れるかどうかなんて、アタシには分かるんだよ」
ユウトが顔をしかめる。
「……まさか」
マナブが低くつぶやく。
「確かに、アカネ氏の言うとおりだ。これは偶然じゃない」
リーラがゆっくりと歩み寄り、スネアを手に取る。
その目が赤く光った。
「……やはりか」
彼女の指先から魔力が走り、破れたスネアに淡い紋様が浮かび上がった。
「(これは……時間差魔法)一定のタイミングで破れるよう細工されている」
ブラムーのメンバーは息を呑む。
「……!」
リーラはスネアから目を離さず、低く告げる。
「この細工ができたのは――控え室にいた大臣だけじゃ」
控え室に重苦しい空気が流れた。
勝利の余韻が、一瞬にして消え去る。
ブラムーの面々は互いに顔を見合わせた。
仲間の一人であった、マネージャーの大臣が裏切っていた……。
強敵、焔鬼蓮華とのバトルに勝利することができた矢先、新たな戦いの気配が、すぐそこまで迫っているのを全員が感じ取っていた。
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