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最強ヴァンパイア、人間界でバンドデビューを決意す  作者: Rockston.
バンドバトル 決勝トーナメント編
27/69

第27話「最強ヴァンパイア、鬼戦が決す!」

 Zドームを覆う轟音。

 十基の和太鼓が一斉に打ち鳴らされるたび、観客の体は揺れ、視界すら歪む。

 ブラムーの舞台は今や嵐の中に投げ込まれていた。


「くっ……!」

 アカネの額から汗が飛ぶ。

 破れたスネアを横目に、残されたタムやバスドラムを必死に叩き続ける。

 だが、どうしても音圧が足りない。

 十基の和太鼓が作り出す、地鳴りのような“戦”の表現に押されていく。


 観客も騒然としていた。

「アカネ……限界か……?」

「和太鼓十基にドラムだけじゃ無理だ……」


 審査員の神谷豪が苦い顔で呟く。

「……リズムは正確だ。だが音量と音圧の差が大きすぎる」

 マリア・デル・ソルも首を振る。

「このままでは呑み込まれる……」


 ――その時だった。


「総長ォォォ!!!」


 観客席の最前列。

 数人の影が立ち上がった。

 派手な特攻服。荒くれた雰囲気。

 かつてアカネが身を置いていた暴走族の仲間たちだった。


「オメェら……何でここに」


「しっかりしろやアカネぇ!!」

「アタシら楽器なんかなくても音鳴らしてたじゃねえか!」

「そうだろ、総長ォォォ!!!」


 ひとりが叫ぶと同時に、彼女の首にぶら下がっていた古いヘルメットが外され、ステージに投げ込まれた。

 カランッ! 乾いた音が響く。


 アカネはその音を聞き、瞳を大きく見開いた。


「……そうだ」


 彼女は破れたスネアの前から立ち上がると、ドラムに取り付けられていたマイクを引き抜いた。

 次々に転がるケーブルを手繰り寄せ、マイクを片手に握る。


「何を……?」

 ユウトとマナブが驚きの声を上げる。


 アカネは床に置かれたヘルメットを拾い上げ、ステージ中央へ。

 さらに、破れたスネア、マイクスタンド、照明台の金属パーツ、転がったケーブル巻き取り……目に入るあらゆるものをかき集めた。


「……それだ」

 リーラが目を細める。


 アカネはニッと笑った。

「へへっ……これで十分だろ」


 コンッ!

 彼女はマイクを床に置き、その前に置いたヘルメットを叩いた。

 ステージ全体に、増幅された音が響き渡る。


 カンッ! ガンッ! ドンッ!

 マイクスタンドを打つ。照明台を叩く。ケーブル巻きを床に打ち付ける、床を踏む。

 叩けばすべてが楽器に変わっていく。


「……!!!」

 観客が総立ちになった。


 審査員席で鷲塚 演義が思わず立ち上がる。

「これは……ライブハウスの即興演奏を思わせる“原始パーカッション”だ! どんなものでも楽器にしてしまう発想力……しかもリズムが崩れない!」


 桐島翔も拳を叩きつける。

「これだよ! これがアカネの本質なんだ! あらゆる音をリズムに変える天才!!」


 リーラはその姿を見て、確信した。

「――勝てる!」


 まるでリーラと初めて出会った、公園でのアカネの姿だった。

 遊具を叩き、バイクをふかし、金網を鳴らし――音をリズムに変えて遊んでいたあの日。

 アカネの強みは、どんなものでも楽器に変えてしまうこと。

 バイクのエンジン音も、暴走族の仲間のヘルメットも、公園のブランコも。

 あらゆる音を果てしない音色として紡ぎ、無限のリズムを生み出す。


 その奔放で無限のバリエーションの前に――焔鬼蓮華の最強の和太鼓ですら、霞み始めた。


「うおおおおおおッ!!」

 アカネが叫ぶ。

「いくぞおおおお!!」


 ラストのラッシュ。

 マイクを構えたまま、ステージの隅から隅まで駆け巡り、ヘルメットを叩き、鉄骨を殴り、ケーブルを弾き、床を踏む。

 観客の歓声も混ざり合い、一つの巨大なグルーヴとなる。


 そして――。


「これで決めるッッ!!!」


 超高速のヘルメットスネア連打!

 カンカンカンカンカンカンカンカン!!!


 ――BPMが、インクリメントのように上がっていく!

 正確かつ衝撃的なスピードだ。

 まるで歯車が狂いなく加速していくように、音が重なり、観客の心を直に叩き続ける。

 腕が閃光のように動き、マイクが拾う音は爆発する火花のように響いた。


「アタシが……!!」

「ブラムーの……!!」

「ドラマーだ、バカヤロォォォォォォ!!!!」


 その瞬間。


 観客席で暴走族の仲間たちも叫びながら、ヘルメット同士をぶつけ合った。

 ガンッ! ガンッ! ガンッ!

 彼女らの音もまた、Zドームに混ざり合う。


 ――観客も、仲間も、すべてを巻き込んだリズム。


 焔鬼蓮華が最後の意地で、十基の和太鼓を連打で打ち鳴らす。

 ドォォォォォォォンッッ!!!


 その時――。


 バンッッッ!!!


 和太鼓の皮が一斉に破れた。

 十基すべて。


 場内が静まり返った。


 やがて、爆発のような歓声が湧き起こる。


「アカネぇぇぇ!!!」

「ブラムーーーッ!!!!」


 アカネは大きく息を吐き、汗だくの顔で笑った。

 スティックを掲げる。

 仲間たちが泣き叫び、暴走族の少女たちも涙を流しながら腕を振り上げていた。


 リーラが駆け寄り、アカネの肩を掴む。

「よくやった……! お主は最強じゃ!」


 アカネは泣き笑いしながら答えた。

「へへっ……当然だろ。アタシは……ブラムーのドラマーだぜ!」


 Zドームを揺るがす大歓声。

 ブラムーの勝利は、誰の目にも明らかだった。

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