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最強ヴァンパイア、人間界でバンドデビューを決意す  作者: Rockston.
バンドバトル 決勝トーナメント編
22/69

第22話「「最強ヴァンパイア、鬼との戦にてブラムーロック炸裂す!」

 ――Zドーム。

 焔鬼蓮華えんきれんげの炎の戦舞台が終わった直後、観客席はまだざわめきに包まれていた。

 鬼の軍団が残した余韻はあまりに強烈。舞台の熱をそのまま飲み込むように、司会者がマイクを握り直した。


「皆さま!! 見事な和のロックを響かせた焔鬼蓮華えんきれんげ! しかし!! まだこの勝負は終わっていません! 続いての登場は――個性派にして下位から追い上げてきたダークホース、闇の女王リーラ率いる四人組! ブラムーだぁぁぁ!!」


 ライトが逆のステージへ向かう。

 そこには――何もない。

 装飾も幕も炎もなく、ただ黒い床と壁、そして四人の立ち姿だけ。


 焔鬼蓮華えんきれんげの豪華絢爛な舞台の直後だけに、そのシンプルさは異様にすら見えた。


「……なんもねえ……」

「さっきの和の迫力のあとだと、逆にスカスカに見えるぞ……?」

 観客の一部は戸惑いの声を漏らす。


 だがその沈黙を切り裂くように、リーラがマイクを握った。


「……戦か。ならば、我らは真っ直ぐに戦うのみじゃ」


 その言葉と同時に――


 ギャァァァァンッ!!!

 ギターリフがステージに響き渡った。

 ユウトの音は余計な装飾を削ぎ落とし、ただ直線的に、鋭く突き刺さる。


 リーラが相手を睥睨へいげいし、目に力を宿した。

 「焔鬼蓮華えんきれんげよ!よう見よ。我らは飾らん。ただ音と魂で貴様らの軍勢を迎え撃つ――ブラムーの覚悟、心して聴け!」


 ブラムーの一曲目は、焔鬼蓮華えんきれんげと同じ「ロック」。

 しかし方向性は真逆だった。


 音数は極端に少ない。

 ベースはうねるように低音を支えるだけ。

 ドラムは一打一打を丁寧に刻み込み、無駄を削ぎ落としたリズムで前へ進める。


 ――足せばいいってもんじゃない。

 引くことで強さを示す、一音の重み。

 その美学が、彼らの音に宿っていた。


 「……一音が、とても重い」

 審査員の一人、トップアイドルの美波 エリカが思わず呟く。

 「そう。音圧は敵わないはずなのに、不思議と同じくらいの存在感を感じる」

 ドラマー・神谷かみや ごうが目を細める。


 別の審査員、作曲家の朝霧あさぎり りょうが頷きながら言葉を続けた。

 「これはリーラだけじゃない。アレンジの妙だ……マナブの采配力だろう。音を鳴らす勇気より、鳴らさない勇気の方が難しい。その間をここまで美しく使えるのは尋常じゃない」


 観客も次第にざわめきをやめ、無言で耳を傾けていた。


 やがて――リーラの声が入る。


 高らかに、しかしつややかに。

 闇の女王のハイトーンが、まるで翼を広げるように会場全体を包み込む。


「うおお……!」

「声で持っていかれる……」

焔鬼蓮華えんきれんげは“戦”だったけど……こっちは“宇宙”って感じだ……!」


 ストレートなロックサウンドの上に、広がるヴォイスが覆いかぶさる。

 まるで突き刺さる攻撃と、広がる宇宙の攻撃魔法を同時に受けているような感覚に陥る。


 熱ではなく、光でもなく、暗闇から立ち上がる神秘の音。音圧は負けていても、表現されたもののスケール感的には大きく感じる。これぞ、ブラムーの真骨頂だ。


 観客の胸をひとつひとつ掴んでいく。


 焔鬼蓮華えんきれんげが全軍で押し寄せる「刀」だとすれば、ブラムーは孤高の「矢」だった。

 三本の矢が一直線に心を貫き、そこからヴォイスの余韻が波紋のように広がっていく。


 演奏は中盤から終盤へ。

 ドラムのアカネは迷いなく叩き続ける。

 一打一打の精度を研ぎ澄まし、父から受け継いだ魂を込める。

 ベースのマナブは無表情のまま、だがコード感の巧みなコントロールと、うねるようなリズムで確実に楽曲をさらなる高みへ上げる。

 ユウトのギターは攻撃ではなく導線。声へとつなげ、観客をリーラの領域へと誘う。


 そして、リーラの声が最後の一音へと収束していった。


 ――シンプルにして、強靭。

 観客は静まり返り、その余韻に浸っていた。


―――


「……見事だな」

 審査員の一人、超有名ロックバンドのリーダー・桐島きりしま しょうが唸る。

 「装飾を捨ててここまで戦えるのは、本物の実力があるからだ」


 ただ、すぐに冷静な意見も出る。

 「焔鬼蓮華えんきれんげの総合力と比べると、やや単調にも映る」

 「三曲での勝負だから、まだ判断はできないな」


 途中経過の審査員票は――焔鬼蓮華えんきれんげにやや傾いていた。


―――


「……ふん。なかなかやりよる」

 焔鬼蓮華えんきれんげの鬼ボーカルが、不敵に笑った。

 「面白き……戦になろうぞ」


 舞台はまだ始まったばかり。

 一曲目を終えた両者の差は僅か。

 次の二曲目が、この戦いの趨勢を大きく変えていく――。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

よろしければ、率直な評価や感想をいただけるとうれしいです。

よろしくお願いします。

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