第21話「最強ヴァンパイア、鬼と戦す!」
――Zドームの空気が、ざわめきから緊張へと変わる。
スポットライトが中央に集まり、司会者が高らかにアナウンスを響かせた。
「さあ! 第一回戦第一試合! 三曲勝負の最初を飾るのは――和の旋律を極めし鬼の軍団、焔鬼蓮華! 先攻、一曲目は……ロックッ!!」
歓声が割れんばかりに広がる。
舞台の端、暗闇に沈んでいた焔鬼蓮華のステージに、ふっと一筋の光が走る。
――その瞬間。
「はっ!!」
全員の掛け声が会場を揺るがせた。
ベンベンベン! フォ〜! ズズズン!
三味線の速弾きが鋭く切り込み、続いて尺八が、澄んだ和の旋律を吹き鳴らす。
そこにギターの疾走感あふれるリフが重なった。
音が鳴るたび、舞台上の刀の演舞が一振りを見せる。
シャキィン! と刃が空気を切り裂く音と同時に、照明から炎が噴き上がる。
まるで一音一音が「戦」を形作るかのように。
「よーっ!」
間合いを詰めるかのように、途中でも掛け声が入る。
演奏はシンプルだが、命をかけているような熱気が、観客席にまで押し寄せる。
音、演舞、照明――全てがひとつの軍勢として襲い掛かってくるようだ。
「……シンプルなのに強い。弱点が見えない」
ユウトが息を呑む。
「ああ。演奏力だけじゃなく、演出、そして精神性……軍のように戦略的で総合力が高い」
マナブも険しい表情で分析する。
ステージ奥に並ぶ十基の和太鼓は、なお沈黙したまま。
だがその存在感だけで、まるで“伏兵”が控えているかのような緊張を生み出していた。
照明がさらに熱を帯び、戦場を思わせる炎が舞台を包む。
ギターの音が鋭く走れば、その一瞬ごとに刀の演舞が応じ、炎が噴き上がる。
戦を表現する舞台――それが焔鬼蓮華の本質だった。
「観客は……完全に持っていかれたな」
審査員の俳優・鷲塚 演義が低く呟く。
作曲家の朝霧 燎 も頷き、「和楽器とロックの融合……これは世界に誇れる水準だ」と唸る。
演奏は終盤へ。
観客の鼓動すら巻き込みながら、音がひとつに収束していく。
「はーーーっ!!」
最後の掛け声が響いた瞬間――
ドォォォォォン!!!
沈黙していた十基の和太鼓が、最後の一音だけを全力で叩き放った。
その迫力は会場全体を揺らし、観客の胸を鷲掴みにする。
爆音と共にフィニッシュ。同時に、全員が勝ち名乗りを上げたかの如く、右腕を高く上げている。
炎の照明が一斉に灯り、舞台は戦の熱気そのものに包まれた。
観客は割れんばかりの拍手と歓声を送る。
「すげぇ!」「完璧だ!」「鳥肌が止まらねぇ!!」
場内の熱は最高潮に達していた。
―――
「……やはり、ただのバンドではない」
大臣が小声でリーラに語りかける。
「奴らは鬼族。古来より“和の心”を重んじる、歴史ある部族ですぞ。勝負に美学を持ち、演奏すらも戦と同義にしております」
リーラは目を細める。
「やはりそうか……ならば我らも、戦として迎え撃つまでよ」
マナブが腕を組み、冷静に分析する。
「太鼓はまだ一撃しか使っていない。……だが必ず、どこかの曲で“全開放”してくるだろう。そのときこそ、彼らの本気のはず。つまりまだ力を隠している」
仲間たちは無言で頷く。
鬼の軍勢との戦いは、まだ始まったばかりだ。
―――
司会者がマイクを掲げる。
「さあ! 圧倒的な和のロックを見せつけた焔鬼蓮華! これぞ鬼の戦い!! しかし、まだ勝負は始まったばかり! 続いては対戦相手――ブラムーの登場です!!」
場内が再びざわめく。
闇の女王・リーラ率いるダークホース。
彼らはどんな演奏で、この“鬼の軍団”に挑むのか――。
観客も審査員も、誰もが固唾を飲んで次の瞬間を待っていた。
――次は、ブラムーの番だ。
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