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最強ヴァンパイア、人間界でバンドデビューを決意す  作者: Rockston.
バンドバトル 決勝トーナメント編
21/69

第21話「最強ヴァンパイア、鬼と戦す!」

 ――Zドームの空気が、ざわめきから緊張へと変わる。

 スポットライトが中央に集まり、司会者が高らかにアナウンスを響かせた。


「さあ! 第一回戦第一試合! 三曲勝負の最初を飾るのは――和の旋律を極めし鬼の軍団、焔鬼蓮華えんきれんげ! 先攻、一曲目は……ロックッ!!」


 歓声が割れんばかりに広がる。

 舞台の端、暗闇に沈んでいた焔鬼蓮華えんきれんげのステージに、ふっと一筋の光が走る。


 ――その瞬間。


「はっ!!」

 全員の掛け声が会場を揺るがせた。


 ベンベンベン! フォ〜! ズズズン!

 三味線の速弾きが鋭く切り込み、続いて尺八が、澄んだ和の旋律を吹き鳴らす。

 そこにギターの疾走感あふれるリフが重なった。


 音が鳴るたび、舞台上の刀の演舞が一振りを見せる。

 シャキィン! と刃が空気を切り裂く音と同時に、照明から炎が噴き上がる。

 まるで一音一音が「戦」を形作るかのように。


「よーっ!」

 間合いを詰めるかのように、途中でも掛け声が入る。

 演奏はシンプルだが、命をかけているような熱気が、観客席にまで押し寄せる。

 音、演舞、照明――全てがひとつの軍勢として襲い掛かってくるようだ。


「……シンプルなのに強い。弱点が見えない」

 ユウトが息を呑む。

 「ああ。演奏力だけじゃなく、演出、そして精神性……軍のように戦略的で総合力が高い」

 マナブも険しい表情で分析する。


 ステージ奥に並ぶ十基の和太鼓は、なお沈黙したまま。

 だがその存在感だけで、まるで“伏兵”が控えているかのような緊張を生み出していた。


 照明がさらに熱を帯び、戦場を思わせる炎が舞台を包む。

 ギターの音が鋭く走れば、その一瞬ごとに刀の演舞が応じ、炎が噴き上がる。

 戦を表現する舞台――それが焔鬼蓮華えんきれんげの本質だった。


「観客は……完全に持っていかれたな」

 審査員の俳優・鷲塚わしづか 演義えんぎが低く呟く。

 作曲家の朝霧あさぎり りょう も頷き、「和楽器とロックの融合……これは世界に誇れる水準だ」と唸る。


 演奏は終盤へ。

 観客の鼓動すら巻き込みながら、音がひとつに収束していく。


「はーーーっ!!」

 最後の掛け声が響いた瞬間――


 ドォォォォォン!!!


 沈黙していた十基の和太鼓が、最後の一音だけを全力で叩き放った。

 その迫力は会場全体を揺らし、観客の胸を鷲掴みにする。


 爆音と共にフィニッシュ。同時に、全員が勝ち名乗りを上げたかの如く、右腕を高く上げている。

 炎の照明が一斉に灯り、舞台は戦の熱気そのものに包まれた。


 観客は割れんばかりの拍手と歓声を送る。

 「すげぇ!」「完璧だ!」「鳥肌が止まらねぇ!!」

 場内の熱は最高潮に達していた。


―――


「……やはり、ただのバンドではない」

 大臣が小声でリーラに語りかける。

 「奴らは鬼族。古来より“和の心”を重んじる、歴史ある部族ですぞ。勝負に美学を持ち、演奏すらも戦と同義にしております」


 リーラは目を細める。

 「やはりそうか……ならば我らも、戦として迎え撃つまでよ」


 マナブが腕を組み、冷静に分析する。

 「太鼓はまだ一撃しか使っていない。……だが必ず、どこかの曲で“全開放”してくるだろう。そのときこそ、彼らの本気のはず。つまりまだ力を隠している」


 仲間たちは無言で頷く。

 鬼の軍勢との戦いは、まだ始まったばかりだ。


―――


 司会者がマイクを掲げる。

「さあ! 圧倒的な和のロックを見せつけた焔鬼蓮華えんきれんげ! これぞ鬼の戦い!! しかし、まだ勝負は始まったばかり! 続いては対戦相手――ブラムーの登場です!!」


 場内が再びざわめく。

 闇の女王・リーラ率いるダークホース。

 彼らはどんな演奏で、この“鬼の軍団”に挑むのか――。


 観客も審査員も、誰もが固唾を飲んで次の瞬間を待っていた。


 ――次は、ブラムーの番だ。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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