第20話「最強ヴァンパイア、鬼と対面す!」
「――皆さんッ! 本日はついに!
バンドバトル・トーナメント本戦、一回戦第一試合の開幕ですッ!!」
司会者の甲高い声が、Zドームの天井に反響した。
巨大なスクリーンに「決戦開始」の文字が躍る。
「この会場に集まった観客は――なんと五万人! さらに全世界で数千万の視聴者が見守っております!
そして! 本戦の戦場となるのはこのZドームッ!
端と端に設置された二つの巨大ステージ!
中央には観客席が広がり、その真ん中には、今大会を象徴する存在――最強の審査員席がございますッ!」
会場中央にライトが落ちる。
巨大なテーブルに十名の審査員が並ぶ。
審査員紹介!
1.朝霧 燎 … 世界的作曲家。「メロディの魔術師」と呼ばれる。
2.ケヴィン・ロッソ … 伝説のメタルギタリスト。速弾きの第一人者。
3.神谷 豪 … 日本のトップドラマー。精密機械のようなリズム感。
4.マリア・デル・ソル … 世界的ベーシスト。グルーヴの女帝。
5.Rockston.(ロックストン) … DTM界の革命児。
6.綾城 燿子 … フォロワー1000万超のインフルエンサー。
7.鷲塚 演義 … 日本を代表する名俳優。舞台演出の目利き。
8.ランス・カーク … 世界的演出家。大規模ライブの神。
9.桐島 翔 … 超人気ロックバンド《Crimson Howl》のリーダー。
10.美波 エリカ … トップアイドルにして審美眼鋭いアーティスト。
―――
「――そう! 作曲、演奏、表現、演出、人気、すべての角度から審査される、ガチ中のガチ!
各試合は三曲勝負! 一曲ごとに審査員が票を投じ、多くを獲得した者が勝利を掴む!
第一試合のテーマは――ロック! バラード! 最後は自由! 三曲勝負でございます!!」
観客「うおおおおおおお!!!」
火柱が噴き上がる。大画面には対戦カードが映し出される。
第一試合 焔鬼蓮華 vs ブラムー
「それでは! 最初にご登場いただきましょう!
今大会最大編成ッ! 17名の軍団!
和の旋律を武器に、圧倒的な完成度で勝ち上がった予選第4位ッ!
鬼の軍団――《焔鬼蓮華》!!!」
ドームの左ステージに、ゆっくりと明かりが灯っていく。
まず、ステージの装飾が浮かび上がった。
竹林を模した柱、散りゆく桜の花びらを映すスクリーン、
背景には金箔を思わせる屏風がそびえる。
和を極限まで重んじた舞台美術。
「どん……!」
ステージ手前のライトが点灯する。大きな太鼓が一つ。
「どん、どん……!」
二つ、三つとライトが順に走り、
十基の巨大な太鼓が、弧を描いて並んでいく。
「ドドドドドドン!!!」
一斉に叩き鳴らされる。その迫力は、観客の胸を直接揺さぶった。
そこに尺八が泣き、三味線が爪弾き、琴が流れ込む。
和旋律が重なり合い、最後にギター、ベース、ドラム、キーボードが一斉に轟く。
「ジャーーーーンッ!!!」
光が走り、全員の姿が浮かび上がる。
赤い鬼面をつけたボーカルが一歩前へ。
マイクを掴み、低く、しかし堂々と声を放った。
「我ら、焔鬼蓮華と申すッ! この戦いの舞台にて――名を刻もうぞ!」
まるで戦国武将の開戦宣言のような凄み。
観客は「うおおおおお!!」と総立ちになった。
―――
「さあ! 続いてご登場いただきましょう!
対するは予選第9位!
個性派、下位から徐々に追い上げてきた、今大会最大のダークホース!
ステージ装飾など必要なし! ただ立つだけで空気を支配するッ!
闇の女王率いる――《BLAMOO》!!」
右ステージに、白いライトがぽつんと灯る。
舞台には、何もない。装飾も演出も、一切なし。
ただ、4人が立っているだけ。
にもかかわらず――観客は息を呑んだ。
圧倒的なオーラ。
リーラがマイクスタンドを握った瞬間、
まるで空気が凍るように、ドーム全体が静まり返る。
ユウトはギターを抱え、マナブは静かに構える。
アカネはスティックを指先でくるくると回し、深く息を吸った。
「何もないのに……ヤバい……」
観客の一人が呟いた。
そう、ステージは無装飾。だがリーラの存在そのものが、光よりも濃い影を放っていた。
―――
「さあ! 舞台は整った! 東の鬼か、西の闇か!
第一試合、開戦前夜の空気は最高潮に達しております!!」
観客の歓声は爆発し、SNSには
「#ブラムー」「#えんきれんげ」「#開戦」などが瞬時にトレンド入り。
審査員席でも、ギタリストのケヴィンが腕を組み、呟いた。
「どっちも強烈だな……これは面白い」
作曲家・朝霧は目を細める。
「和旋律の完璧な構築美と、未知数のカリスマ……まさに好対照だ」
―――
リーラが小さく笑みを浮かべた。
「ふむ……鬼ども、全力でかかってくるがよい。我らが蹴散らしてやる」
鬼のボーカルも、不敵に笑う。
「面白き……戦になろうぞ」
――戦端は、切って落とされた。
次の瞬間、会場全体に重低音が響く。
第一試合、最初の一曲目が始まろうとしていた。
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