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第14話「最強ヴァンパイア、父へ歌唱す!」

 狼王はステージ中央でマイクを握りしめ、低く吠えるように言い放った。

 「……生きることを歌うか!ならば――なぜ、世の息子達を“消滅”させたのだ!」

 その怒気を孕んだ声が会場を震わせる。観客が一瞬息を呑んだ直後、狼王の演奏が始まった。


 轟音が渦を巻く。

 《キングス・ファング》の二曲目――それは狼王の、息子たちへの愛をそのままぶつけた歌だった。


 「オゥル!オルガ!カイ!ミドス!ダイン!

  お前たちは余の牙!余の誇り!」


 咆哮とともに、獰猛なリフとビートが観客を圧倒する。

 その歌詞は荒々しくも、そこに宿る想いは純粋だった。


 「国のため 自らのため

  守るため 鍛え抜いた

  強さこそが 道だと信じた

  血を滲ませても 倒れても

  獣族は戦士! 立ち上がれと!

  愛ゆえに 突き放す!」


 ――まるで戦場の父が、我が子を励ますように。

 その熱量に、観客は涙を浮かべ、リーラですら胸を抉られるような衝撃を覚えた。


 演奏を終えた狼王は、荒く息を吐きながら、拳を握った。

 「……強く……あれと鍛え続けた結果……お前に、負けるとはな……!

  もっと、もっと鍛えておくべきだった……!」


 その悔恨に、リーラは静かに首を振った。

 「それは違う。力ではない。鍛錬ではない。必要なのは――信じること」


 狼王の瞳が揺れる。


―――


 リーラは静かにマイクを握った。


 「確かに……愛じゃ。だが、狂うほどの愛情は子を縛る」

 「戦いを、強さを求めすぎ、子らの心を曲げ狂気へと駆り立てた。観客を襲うなど言語道断!それは許せぬ」


 ユウトたちが演奏を始める。

 静かなピアノの旋律、ギターのアルペジオ、ベースの柔らかな支え。

 そこに我の声が乗る。


 「我にも父がいる……

  ただ自分を認めてほしかった

  強さではなく ただひとつ

  優しく抱いてほしかった」


 狼王は、はっと息を呑んだ。

 「なに……? 認めてほしいだと……? 強さではなく……?」


 リーラの歌は続く。


 「あなたの期待に 応えたい

  だから 愛してほしい ただそれだけ

  私を信じて 見守ってほしい」


 「ば……ばかな……!余は強さを与え、武器を与え、道を示したではないか!それが愛ではないと……?」


 リーラの声はさらに震えるほどに力を帯びる。


 「遠い遠い場所 会えないのなら

  歌にして 届けよう 父へ」


 その瞬間、狼王の肩ががくりと落ちた。

 「……アイツらも……望んでいたのか……強さではなく……信じる心を……」

 過去の記憶が脳裏をよぎる。

 何度も拳を振るい、何度も「立て」と叫んだ。

 その声に従う息子たちの眼は、いつしか怯えに濁っていたのを――。


 「……余は……間違えた……」

 「アイツらを……認めなかった。

  声を聴こうともしなかった。

  耳を……傾けなかった……!」


 観客は固唾を飲み、その葛藤を見守っていた。


―――


 サビが爆ぜる。

 高音が天を突き抜け、観客は思わず涙を流した。

 拳を振るうのではなく、胸を押さえて――ただ、その声を受け止めていた。


 演奏が終わり、静寂が訪れる。

 狼王はステージに膝をつき、震える声を漏らした。


 「……余は……取り返しのつかないことを……」

 その目から涙が零れる。

 「少し強くなったからと調子に乗り……余は……愛を曲げてしまった」


 狼王は呻くように嘆いた。

 「……父である、余に認めてもらうために、ヴァンパイア国の王位を奪おうと、この戦いにまで出たと言うことか……。余計なことを……!」


 その目からさらに涙が溢れた。


 「息子たちよ……許してくれ……」


 「奴らの歌とダンス、素晴らしかったぞ」


 「今更……何を言うか……」


 そのとき、リーラがそっと近づき、耳元で囁いた。


 「ヤツらは消滅しておらぬ。人間を襲おうとしたから、我の魔法で魔界の端に帰しただけじゃ」

 「……!」

 「まだやり直せる。父としても、子としても」


 狼王は涙を拭い、リーラを見つめた。

 「……なんと慈悲深き……余は……余は……」

 やがて立ち上がり、観客の前でリーラの腕を高々と掲げた。


 「勝者――ブラムー!」


 ――大歓声!

 会場全体が震えるような熱気に包まれた。


 「余は……獣族は、リーラ殿の軍門に下ろう」

 「王位継承権を必ず勝ち取ってくれ!」

 リーラの歌が、獣国という大国を従わせることになった。


 「本意ではないが……分かった。我に任せるがよい」

 渋々だが、引き受けたリーラであった。


―――


 ライブ終了後。

 スマホに届いた通知をユウトが開く。


 「……結果発表だ!」


 メンバー全員が覗き込む。

 アカネが肩を組んで笑う。

 「いやー、こりゃ絶対ギリギリだぜ」

 マナブが冷静に答える。

 「いや、演奏は観客に確かに届いていた。確率は50%だ――」


 画面に映し出された数字。


 第9位――ブラムー


 「……!!」

 次の瞬間、全員が飛び跳ねた。


 「やったああああああ!!」

 「本戦出場決定だあああ!!」

 「ブラムー!!ブラムー!!」


 涙と歓声が入り混じり、抱き合う仲間たち。

 そして――リーラは夜空を見上げ、心の中で呟いた。


 (父上よ……我の歌は、あなたに届いただろうか)


 光り輝く東京湾の夜景の中、

 少し、父に会いたくなったリーラであった。

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