第13話「最強ヴァンパイア、予選最終戦が開始す!」
ランキング表に目をやると、我らブラムーはついに 11位 に食い込んでいた。
「あと一勝……!」
ユウトが拳を握る。
「でも条件があるんだよな。次は少なくとも“トップ10”の相手に勝たなきゃいけない」
アカネがスマホを覗き込みながら眉をひそめる。
「それにしてもさ……おかしくね? 最近、いくつもバンドが“辞退”してるんだぜ。しかもみんな急に」
「私も調べた。確かに辞退や棄権が続出している……」マナブが冷静に分析する。
「その結果、代わりにあるバンドが一気に上がってきた」
スクリーンに表示された名前――
《King’s Fang》
「……牙の王?」リーラが低く呟いた。
アカネが肩をすくめる。
「なんか強そうな名前だよなー。最近登録したばかりなのに、もうトップ10入りかよ」
ユウトは唸った。
「急にこんな順位まで来るとか……裏があるんじゃねぇの?」
「……裏、か」
リーラの目が鋭く細まる。
大臣が低く囁いた。
「姫……おそらく、奴らは……」
「うむ。間違いあるまい」
二人の視線はただ一点――獣族の王の影を見据えていた。
(カイたちの種族、狼王。人間界に現れるとは……)
だが、ユウトもアカネもマナブも、そのことを知るはずもない。
彼らにとっては「謎の新星バンド」が突如現れただけのことだった。
カイたちのことも、「気のせい」や「変な演出だったんじゃね?」と処理され、リーラが狼男を倒した事実は、誰一人として知らない。
―――
そして、決戦の日。
場所は "おだいば"の海を臨む新設の大型ライブハウス。
ガラス張りの壁から夜景が差し込み、光の粒が波間に揺れていた。
会場はすでに熱気で満ちていた。
「キングス・ファングだ!」
「マジで生で見られるなんて!」
観客の熱狂はすさまじく、登場前から渦巻いている。
ユウトが呟く。
「人気すごいな……」
アカネも肩を組みながら苦笑した。
「正直バケモンみたいな強さじゃねーのか?」
マナブは静かに答える。
「どんな音を鳴らすか、冷静に聴こう」
リーラは視線を伏せる。
(……あれはただの新星ではない。復讐に来た、獣族の王だ)
―――
ステージに巨躯の五人が現れると、観客が爆発した。
圧倒的な存在感。まるで王者の入場。
「――我ら、キングス・ファング!」
ボーカルの咆哮が会場を揺らす。
轟音が始まった。
ギターが刻む鋼鉄のリフ。
ベースが唸り、地を揺らす。
ドラムは正確無比に重撃を叩き出し、DJが鋭利な刃のようなスクラッチを差し込む。
ベースの高音が聞こえてしまうほど、7弦ギターの低音が厳つい。見た目も音もまさにギャングサウンドだ。
そしてボーカルが畳み掛ける。
低く、獰猛な声で――まるで拳を打ち込むように。
「牙を掲げろ!
鎖を断て! 光を閉じろ!
闘え! 倒せ! 噛み砕け!
我らは群れを超えた、王の軍勢だ!」
観客が一斉に拳を突き上げ、跳ねる。
重いリズムに体が勝手に動き、誰もが強くなった気分になる。
「うおおおおお!」
「かっけええええ!」
海に面したガラスが震え、床が揺れる。
圧倒的な低音とヘビーなノリ――それは暴力であり、魔術であり、誰をも支配する力だった。
ステージ袖で聴くブラムーの面々も、言葉を失っていた。
アカネが呟く。
「……強え……」
ユウトは悔しそうに歯を食いしばる。
「けど、負けらんねぇ……」
マナブは静かに頷いた。
「これは本物だ。だからこそ、乗り越える価値がある」
リーラは瞳を細め、狼王を睨む。
「……あの牙を、折らねばならぬ」
観客の熱狂は最高潮に達し、ステージは燃え盛る炎のように揺れていた。
観客の熱狂が渦を巻き、ステージはまるで炎に包まれたようだった。
キングス・ファング――その暴力的なサウンドは人々の熱を掌握し、誰もが「この勝負は決まった」と直感するほどだった。
だが――次は我らブラムーの番。
「あの曲で行こう」
リーラがブラムーのメンバーに伝える。
「姐さん、あの曲じゃパワーで勝てないぜ」
アカネが心配を露わにする。
しかし、即座にユウトが諭した。
「いや、いいと思う。相手がパワーなら、俺たちは心だ」
「私もそう思う。ブラムーの音色では彼らの音圧に勝てない。リーラ氏の高音があれば帯域の広さで差別化できる」マナブの分析だ。
「よし、みな準備はよいな。ゆくぞ!」
ーーー
リーラが静かに前へ歩み出る。
その背後でユウトが弦を鳴らし、アカネがスティックを握りしめ、マナブがキーボードに指を添える。
「……静かに始めよう」
「皆、聴いてくれ」
「響」
その一言とともに、会場の空気が変わった。
―――
ギターのアルペジオが波のように広がり、静かで優しいリーラの歌声が重なる。
強さではない。叫びでもない。
切なく、震えるように心の奥底から響いてくる旋律。
「……あけやらぬ空に かすかな光追い
灯し出す 日々よ……」
観客は動きを止めた。
「……うつろう時間に ゆらめく心は
何を 願う? ……」
先ほどまで拳を振り上げていた者たちが、ただ耳を傾け、涙を浮かべる者すら現れる。
「……リーラの声、やば……」
「こんな歌、聴いたことない……」
強大なサウンドと真正面からぶつかるのではなく、対極の静かさとエモーショナルな音で挑む――それがブラムーの答えだった。
そして、サビに差し掛かる!
「響けぇぇぇ!!!」
急激に激しいサウンドが会場を包む。
次第に演奏は熱を帯び、切なさが怒涛のように膨らんでいく。
観客の心に歌詞の一つ一つが響き、それぞれの人生と重なってゆく。
やがて観客は拳を振り上げるのではなく、胸に手を当て、じっと聴き入る者が増えていった。
「……勝てる……かも」
ブラムーのファンが演奏の合間に呟く。
アカネは涙ぐみながらドラムを叩いていた。
マナブは冷静にリズムを支えながらも、その表情は熱に浮かされていた。
――そして、曲が終わった瞬間。
観客は大きなどよめきとともに、割れるような拍手を送った。
「さっきのとは全然違うけど……」
「心に響くっ……!」
「どっちが勝ちかなんて、簡単に言えねぇ……!」
―――
ステージに残った二組。
会場全体が、一進一退の緊張に包まれる。
そのとき、キングス・ファングのボーカル――狼王が、ゆっくりとリーラを睨んだ。
「……なるほど。強さではなく、心を揺さぶるか」
その瞳がぎらりと光る。
「だが――心を揺さぶれるのはお前だけではない!」
リーラの肩がわずかに震えた。
「……!」
「お前が倒した、カイ達は余が天塩にかけて、大事に育てた子供達であった!許すわけにはいかん!」
「余の怒りを喰らうがよい!次の曲、ゆくぞ子供達!」
「狂」
――壮絶な音楽バトルは、始まったばかりだった。
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次回は、明日20時に投稿です。
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