表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/69

第10話「最強ヴァンパイア、アイドルバンドと咆哮す!②」

 後攻は我ら、ブラムー。

 我は一歩前に出て、ギターの弦が鳴り響く中、静かにマイクを握った。


 「――我が、真に歌いたいこと。感じて欲しいこと。それを、今宵ここに捧げよう」


 その声は光ではなかった。

 だが、聞く者の内側を震わせる炎。じわじわと胸を熱くし、気づけば拳を握らせる力があった。

 静かに始まり、次第に盛り上がり、叫ぶように爆発する――その歌声に、場がじわりと呑み込まれていく。


 ギターのアルペジオが切なく響き、ベースが低音で腹を揺さぶる。ドラムは抑揚をつけ、アカネのリズムが4つ打ちで心拍のように空気を振動させる。


 そこに、マナブの打ち込みが絶妙に重なり、音の重なりが観客の心を静かに、しかし確実に掌握していった。


 ……演奏が終わった瞬間、街角は一瞬、息を止めたような沈黙に包まれる。


 そして――


 「きゃあああああああ!!!!」


 割れるような歓声。観客の拍手と叫びは明らかに我らに向けられていた。


 勝負は、我らブラムーの勝利。

 息を整える我に、群衆は喝采を浴びせ続ける。

 マナブもアカネも、笑顔を隠せない。ユウトは拳を軽く握り、満足げに頷いた。

 「あたしらは強いぜ、バカヤロウ……!」

 アカネの目が潤むほど感動していた。


―――


 だが――その瞬間。


 「チッ……ふざけんなよ」

 完璧な笑顔を浮かべていたカイが、低く唸った。

 「俺たちが……人間ごときに負けるはずねぇだろ……!」


 その声色に、観客がざわめく。次の瞬間、空気はさらに凍りついた。


 「なぁ、兄弟!!今夜は満月だ!喰ってやろうぜ!」


 カイの身体がうねり、骨が軋む音が響く。メンバー全員の体も同時に膨れ上がり、裂けた衣服の下から獣の毛並みが現れた。

 狼耳、鋭い牙、伸びる爪。五人はたちまち巨大な狼男へと姿を変える。


 「うわぁぁぁぁぁぁ!!」

 観客は悲鳴を上げ、蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。


 人々は叫び、一斉に四方へ散った。手にしたスマホを投げ出す者、走り去る足、泣き叫ぶ声。路上の光景がたちまち混乱に変わる。


 「この姿で生き残ったやつはいねぇ……! 全員喰ってやる!!」


 その時、女子高生の一人が逃げ遅れた。恐怖で体が固まり、座り込んで動けない。消え入りそうな声で「助けて……」と呟く。


 カイの視線が、その少女に吸い寄せられる。まるで標的を見つけた狩人の目だ。爪先が路面を掻き、次の瞬間には彼の体が跳ぶように前へ出る。


 ――カイの右腕が、鋭く伸びた。


 少女の目に映るのは、もはやアイドルではなく、モンスターだ。爪は光を受け、先端が冷たく光る。

 

 彼女は後ずさり、両手で顔を覆う。周囲の世界がスローモーションのように引き伸ばされていく。


 「や、やめ……!」


 その声をかき消すかのように、狼男カイの爪が少女の顔に届こうとしていた――


『vs Howl Beats編 最終話』につづく

面白いと感じてもらえたら、ブクマや評価で応援していただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ