6 王妃バンビョーネの友人
さて問題はこの「ヒマノニトン」である。これが道を走ればどうしても騒ぎになるのは避けられない。しかしこれは輸送問題を解決できる有効な手段だ。
そこでまた王妃に相談することにしたオカピーヌは王城に向かった。
「なんですって!と、とにかく一度見てみたいわ!」
お忍びで郊外へとやってきた王妃とオカピーヌ。お供はあの御者と若い騎士である。
「では作りますね」
オカピーヌは土に手をつけ、オカップヒマノニトンバージョンを作り、周りを走らせた。
「これがゴーレム・・・」
「あの、お乗りになりますか?」
「ええ、乗ってみたいわ」
そして王妃を乗せたオカップヒマノニトンは誰もいない草原を走り回る。
「ああああああ!ヒャッハー」
王妃とは思えぬ叫びが隣から聞こえるが、聞かなかったことにするオカピーヌ。
「これは凄いわ!画期的な発明ね!」
「ですがこれをどのように発表したら良いのか困りまして」
「このゴーレムは王家が長年かけて研究させた事にするわ。研究者は秘匿するという事にします。ところでこれはどのくらい作れるのかしら?」
「必要なだけ作りますわ」
こうして量産されたヒマノニトン。
もちろんヨントンも作られた。
「ところで、あなたの身分なんだけど、今のまま大使の妹では何かと不便でしょう。我が国に帰化して、それなりの身分を持たないかしら。わたくしの側近としてそばにいて欲しいわ」
「とても有難いお言葉です・・・」
「あら、なにか他にやりたい事でも?」
「ご存知かと思いますが、パズールにいた頃王太子妃の教育を受けました。そしてマヨール殿下との婚約破棄と国外追放のため、こちらにお邪魔しております」
「もちろん知ってるわ、でもそんな事どうでも良いことよ。あの見る目のない王子は周辺国で笑いものになってるわ。なんでも男爵の庶子、しかも市井で育った娘を妃にしたいとか言ってるそうね」
「そう言ってくださると気持ちも晴れます。そのような経緯がございまして、王宮や貴族社会に縛られるのが辛くなりました」
「そう、わかったわ。じゃあ側近にするのは諦めます。その代わり友人になってくれないかしら」
「ええええ!陛下の友人にですか!」
「そうよ。身分なんてどうでもいいわ。あなたと友達になりたいの。だめかしら?」
「そんな恐れ多い」
「恐れ多いって、あなたヒマノニトンの試乗の時わかったでしょ?元はあんな感じよ」
「ま、まああの時は少々驚きましたが…」
「だからね、いいでしょ?」
「わかりました。ではお友達にしていただきます」
「やだわ、いただきますなんて堅いわ」
「あは…あはは……」