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プロローグ
神界にて。
「うーん、どうしよう」
派手な装飾が施された椅子に腰かけながら、苦悩している少女がいた。
「おや、イシス。どうかしたのかい?」
「あ、ゼウス様! さっき『カミナリ』の対象になった人間の情報を読んでいたんですけど……」
「ふむ、どれどれ……」
ゼウスと呼ばれた無精髭の大男は、イシスと呼ばれた少女から資料を受け取り目を通す。
そして喉を唸らせた。
「これは……万が一に備えなくては」
資料を返してもらったイシスは、何度も見たその人間の資料に再び目を通す。
そして苦虫を噛み潰したような表情をしながら後頭部をポリポリと掻くと。
「どこに飛ばせば……もうアシュランに丸投げしちゃおっかな」
「彼奴ならコリンとどこかに遊びに行ったぞ」
「何で肝心な時にいつもアイツはいないのよ! コリンに関しては絶対逃げただけでしょ! 決めたわ! 飛ばす星は……」
頬を膨らませ再び資料とにらめっこをするイシスを見ながら、ゼウスは無精髭を撫でる。
「やれやれ、何も起きないといいが……」