イエス・キリストはもちろん本名じゃないって知ってるよな?
ローマ教皇もヨハネ・パウロとかまるでフルネームみたいな表記だけど実際のとこ「ヨハネパウロ」という1つの名前と解釈した方がいいやつ。ちなみに教皇はそもそも実名じゃない。
悪魔城伝説というファミコン時代のアクションゲームを知っているだろうか?
ワラキア公ヴラドが人間をやめ、そのついでに息子アドリアンまで勝手に魔族との契約で魔族に身体を変貌させてしまったというのがプロローグとなる。
人間であったヴラドはたかが元人間でありながら「魔王」ドラキュラとなる。まあ、勝手に魔王名乗ってるだけの痛いおっさんだけどな。ああ、当方IGAなる人物に改変されまくって以降の設定は一切受け入れてませんので。クソIGA。
まあ、そんな話をしたいんじゃあない。ヴラドはヴラド・ツェペシュ、アドリアンはアドリアン・ファーレンハイツ・ツェペシュがフルネームである事がマニュアルの物語を見るとわかる。
ヴラドは当然皆さんご存じの通り、「特にドラキュラのモデルでも何でもない」けど、ドラキュラと呼ばれた実在の人物。ワラキア領主であり、ドラキュラ以外にもヴラド・ツェペシュの通称、あだ名でも知られた人物。
そう、20世紀の頃ならともかく21世紀の今これを書くのはもはや恥ずかしいぐらいに有名だけれど、ヴラド・ツェペシュとは日本語にするなら「ヴラド串刺し公」。ファミリーネームではない。
当然、昔の日本の書籍でも「串刺し公を意味するツェペシュの名で」的な説明はあったのだけれど、ヴラド・ツェペシュ表記が多い割にその説明は(当たり前ではあるけど)最初に少し触れるだけなので、それをファミリーネームと勘違いする日本人は多かったのですよ。そもそもが、その名を知った経緯の多くはそういった書籍ではなく、漫画やアニメだろう。
「ツェペシュ」以外にも「テペシュ」表記なんかも使われている。最古が何かはわからないけれど、手塚治虫のドン・ドラキュラにおいて、ドン・ドラキュラの先祖として、登場している。当然その名があだ名や通称だなという説明はされていない。
悪魔城伝説のアドリアンも「わかっていて敢えてファミリーネーム」にしたのではなく、ほぼ確実にファミリーネームとの勘違いからきたものと思われる。
ちなみにヴラドが「吸血鬼ドラキュラ」のモデルというのもほぼガセだぜ。ヴラド・ドラキュラと吸血鬼ドラキュラには共通点は「ドラキュラ」という名前以外無いと言ってもいいぐらいに無い。
名前はヴラドから持ってきた事は確かなのだろうけれど、モデルにはしていない。ブラムはヴラドの事なんて全く知らないのだ、名前以外。
今回の話と違うけど、ついでなので書いてしまうと、もはや確定事項のように「ドラクル=竜」と断定されてるけど、これ決着はついてないし、未来永劫決着はつかないだろう。「ドラクル=悪魔」の可能性は高いのだ。「龍と悪魔が同一視され」というのはまあこれはほぼ無い。
そして「ドラキュラ」と「ドラクレア」では意味が違う。ドラキュラであれば、「ドラクル+a」、ドラクレアであれば「ドラク+lea」。
ただ、ドラクでもドラクルでもどっちでもルーマニア語で意味するところは「悪魔」なんですけどね。そして、当たり前のように昔から受けいれていたけど「a」にも「lea」にも「の息子」なんて意味はないらしく、「ドラゴンの息子」説は正直、もうあっちこっちに無理があるぐらいに「遥か昔の強引な説」でしかないはず。
どうにも「ドラクル」を「龍」とするのは、ルーマニア語がそうだったからというのではなく、こじつけの可能性が高そう。Draco=竜というのはラテン語だというのは多くの人が認めている。それがルーマニア語に採用されていたと証明できる人がいないというのが現状。
父の代で既に「ドラキュラ」と呼ばれていたとする説もあるので、「龍の息子の意味」だと堂々と解説するのは…日本に限らずおよそ世界中でだけれどよろしくないなと思う。実は英雄だ説も同じく。
自分を悪魔と称するわけがないから、悪魔の意味のはずがない、だから竜だ、って言われてもさ、信長だって、「第六天魔王」って署名したじゃん?ヴラドの所業を思えば、自ら悪魔を名乗るのは全くおかしくないじゃない?と。「いや、そうだとしてもドラクルはヴラド2世、父親の方だぞ?」と言われてもさ、それも前述の通り、「ドラキュラ」と既に呼ばれていた説もあるわけで。
これはさ、ヴラド関連の書籍において「ヴラドの悪趣味な残虐行為」はウソだ、と言っておきながら、ドラキュラの名の由来とかは古典的なそういった書籍で記述されたものは信じるというおかしなやり方をしてることから起きてる事。
ヴラド二世が「ドラクル」の称号を得ていたという物的証拠は「有る」とされてるのだけれど、全く見た事がない。
35年ぐらい前からドラキュラ関連は時々本を漁ってるんだけど、1回も見た事ないんですよね、本人が「ヴラド・ドラクルと署名した書簡」がルーマニア博物館にある、ハンガリー博物館にあるとか言われてるけど、ホントにあるなら証拠写真ぐらい今の時代ネットにあがってそうなのに、それが無い。書籍でも見た事がない。となると博物館という権威を持ってこられても正直確認のしようがないわけで、「父親がドラクルだった」「父親もドラキュラだった」「父親はドラクルともドラキュラとも呼ばれていなかった」とそのどれもが有り得る。個人的には二世がドラクルの称号を持っていたという時点で「ガセ」だと思うんですけどね。ドラゴン騎士団の団員なんていっぱいいたわけで、何でヴラド二世だけそんな大層な称号使ってんのよ。
「虎の穴のレスラーとしては別に特別大した事無い」のにその象徴たる「タイガー」の名を冠したタイガーマスクの名と覆面を伊達直人が使えていたのは、「大した事ない」ように見えて設定的には虎の穴の期待の星だったからなんですね。で、ヴラド二世は?
ああ、ドラキュラの話で埋まっちゃったね。イエス・キリストのキリストももちろん、ファミリーネームではない。これも有名だから書くのも恥ずかしいけど、一般的に日本ではメシアと言われるやつ。めし屋のおっさんでもモンゴルマンの事でもないからな?
チンギス・ハーン、ジンギスカン、チンギス・カアン、表記があまりにも多いし、ハーンだの大ハーンだの素人にはわけのわからないテムジン君。の「ハーン」も当然名前ではない。
微妙なのはレオナルド・ダ・ヴィンチ。「ダ・ヴィンチ」はダ・ヴィンチ出身である事を示すもので、「木曽義仲」とか「水戸光圀」なんかと同じ。ただ、ダ・ヴィンチも名前の一部ではあるともいう。わけがわからんね。
同じく微妙なのがジャンヌ・ダルクだろうか。ジャンヌ本人はジャンヌ・ダルクを名乗っておらず「ジャンヌ・ラ・ピュセル」と署名した事は知られている。
ジャンヌの父の姓は「おそらくダルクだろう」というその程度のレベルであり、ジャンヌ本人は文化としては母の姓を使うと主張しているので、父の姓がダルクだったとしても「ジャンヌ・ダルク」はおそらくは彼女の本名ではない。ただ、父がおそらくは「ダルク」であっただろうという点においては、キリストやツェペシュとはだいぶ意味が異なる。現代においてもジャンヌが「ジャンヌ・ラ・ピュセル」の通称で知られていたなら、「ラ・ピュセルはファミリーネームではない」というパターンになったのだけれど。
d'arc表記のアポストロフィーは英語では文字省略の意味。それを de arc=ド・アーク(ド・アルク)、つまり貴族称号と解釈し、元々はアークだというのが英語の「Joan of Arc」綴りの要因っぽい。
ただ、ジャンヌの父は貴族になる前から「Darc」であったようなので、「ド・アーク」ではなく「ダルク」だというのは確かなはず。d'arc表記がどこから出てきたものなのかはわかんなかった。
大体ドラキュラの話になった。が、ヴラドの現在の定説の大部分はやっぱり怪しいと思う。