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ポンニチ怪談

ポンニチ怪談 その75 リスタートテスト

作者: 天城冴

泣きわめく赤ん坊をあやそうとしてうまくできない元ニホン国与党議員イシバラ。ついに赤子の口をふさいでしまい…

「わあああああん」

「ど、どうすりゃいいんだ…。わ、儂の子供はこんな…いや、このころは女房かお手伝いさんに任せっきりで。わ、笑ってるときしか抱いたこと無いし…」

泣き続ける赤ん坊を抱えて元国会議員イシバラは困惑していた。

「ふぎゃーふぎゃー」

「い、いったいなんだって、儂がこんな赤ん坊の世話をやらなきゃならんのだ。65歳になってからの義務ってなんだ。再就職先だってあったはずなのに、ナンタラ委員会の提案とかで、議員は率先してやる義務がって、こんなくだらんこと」

ブツブツいいながら赤ん坊をあやそうとするが、抱き方が悪いのか、イシバラがいやいや抱いているのが伝わったのか、一向に泣き止まない。

「ぎゃあああーぎゃー」

「ああ、くそ!風呂に子供をいれるのが、まだよかった。湯船にいれて体洗えばいいんだから。そのわりには委員の奴らが不満げな顔をしてたのがわからんが、とにかく入れればいいんだよな。そうだ、こいつは黙らせれば」

と、何を考えたのか自分の手を赤ん坊の口に当てようとした。

「ふぎふぎ」

「さあ、黙らんと本当に口をふさいじまうぞ、ほら苦しいだろう、黙れ、黙るんだ!躾の悪い子だ!」

と赤子の口を無理やり塞ごうとするイシバラ。赤ん坊は苦しがって手をバタバタさせるが、イシバラはやめない。

パタ

赤ん坊の腕が力なく垂れさがった。

「や、やっと、静かになった。…気絶したんだよな、まさか死んだんじゃ」

白くなった赤ん坊の顔をみて、青くなるイシバラ。

“おや、大変なことをしてしまいましたねえ”

天井のスピーカーから声が響いた。

「わ、わざとじゃない、だ、黙らせようと」

“1歳にもみたない赤ん坊にそんなことをしたら、死んでしまうかもしれないって思わなかったんですか。本当にアナタは使えない人ですねえ”

「な、何をいう!わ、儂は議員だ、こ、子供の世話なんか!」

“は?今この国で最も重要なのは子育て、子供の世話ですよ。アナタのやってきた、議員モドキの仕事なんてほんと価値がない、意味がないどころか、害悪でしたよ。この国をこんなにひどい少子化、財政悪化、環境汚染にしておきながら、高給を食み、のうのうとしていた。むしろ害です、ゴキブリ以下ですよ、アレの方がよっぽど世の中の役にたっている”

「な、何を言うんだ!儂は与党ジコウ党の議員で、大臣も務めたんだぞ、それを変な事ばっかりさせおって!」

“本当にオツム弱くて記憶力もダメダメなおじさんですね。ニホン国は終わったんですよ、アナタ方ジコウ党のせいでね。オリンピックだのバンパクだのにムダ金をつぎ込んで借金だらけ、軍事費だので使えもしない戦闘機だのミサイルだのを買いこんで、食料生産を担う人を疎かにして食料自給率を最低した。さらにエッセンシャルワーカーを冷遇してインフラ他を破壊した。いやはや酷すぎたため、国際機関カッコクレンより国家再建のため我々リスタート委員会が再教育に送り込まれたのですよ、お忘れですか?”

「え、えーと、(そういえばアトウダさんがそんなことを、ブツブツ。そういえば最近会っていない。そうだ、他の議員仲間にも)。いや、そのちょっと、アトウダさんとかに会わせて

くれんか。同期に会えば、思い出すかも」

“無理です、消去しましたから”

「え?」

“ですので、消去しました。必要ないので”

「消去って、必要ないって。ど、どういうことか!まさか殺したのか!」

“そうも言えますね。アナタと同じようなテストを受けて不合格でしたので、消えていただきました”

「なんということを、か、彼らも我が国の重鎮なのに!」

“は?この国に巣食っていた害虫の間違いでしょう。なにしろろくでもない事しかやらないうえに威張り散らし、基本的な身の回りのこともできない幼児以下の存在。成人で生物学的父親にもかかわらずホモサピエンスならできて当然の父親の役割すら果たせないとは。他の生物ならとうの昔に存在していないはず、それを誤魔化して意地汚くこの世にしがみついていたとは。あんなものを生かしてのさばらせておいたからニホン国は滅びかけているのですよ、この悲惨な現状はアナタ方のせいなのですよ、それすらわからないのですかねえ”

「い、いや、それは儂らにも悪いところがあったのかもしれんが、だからって殺さなくても」

“ですので、こうしてリスタートすべき存在か、テストを受けていただいたんですよ。自分の世話、子供の世話、親の世話ができるか。激減したエッセンシャルワーカーや農家の代わりができるか。なにしろアナタ方は他のホモサピエンスの老いたオスのように教養もなく知恵や知識が不足していますからねえ。そのくせ、学ぶ気が一向にないのでね”

「ま、まさか、こ、子供の世話ができないぐらいで…。ふ、風呂にはいれたぞ!」

“嫌がる子供を無理やりに湯船に投げ入れ、洗って放り出したのが?いいきかせてゆっくり湯に入れて、体を洗った後ちゃんと拭いて服を着せなきゃダメですよ、幼児なんですから。かわいそうにそういったケアを疎かにしたせいで、あの子は風邪をひいて死んでしまうところでしたよ。それに今抱いている赤ちゃんも死なせて”

「い、いやこれは、その、ちょっとうるさすぎて」

“赤ちゃんは泣くものですよ、それも知らなかったんですか、本当に無知なんですね。とにかく殺してしまったことになりますねえ、酷い大人だ。まあ、大丈夫ですよ、すべて精巧なバーチャルです。大事な大事な子供をアナタ方のテストになぞ本当に使うものですか。とにかくほとんど、不合格。料理、洗濯などもロクにできない、自分の服すら管理できない人任せ、本当にてがかかる子供以下なので、これ以上生きていられると困りますよ、この国は資源も金も人手もすべて不足している。アナタのような無駄モノを生かしておく余裕はないんですよ”

「ま、まってくれ、そ、そんな、ひ、酷い」

“酷い?アナタ方の犯罪行為を隠蔽するために死に追いやられた人たちや失政のために破産、閉店、解雇などで死んだ人たち、栄養も教育も不足した子供たち、親や祖父母の介護に疲れた子供たち、彼らを放置してやりたい放題やっていたアナタ方のほうがよほど酷いのでは?彼らをきちんと生かせるようにしていれば、こんなことにはならなかったのにねえ。ああ、リベラルとか他の人々が声を上げても聞こうとすらしなかったし、支持率が最低限2割しかなくても居座るような図々しい、厚顔無恥なあなた方にいっても無駄ですね、本当に無駄なんで、消去します”

「や、やめてくれ、た、助け…」

イシバラが言い終わらないうちに、彼は消滅した。

管理室で消滅を確認していたリスタート委員会のテスト委員は

”本当に、隣国からのこの装置は便利ですねえ。一瞬にして物質を原子レベルに分解して、有用な鉱物に変化させる、まあこの部屋の中だけですけどね。もっともこの装置、元ニホン国人がつくったんですけど。ニホン国のジコウ党が基礎科学を疎かにして研究者がごっそりほかにいってしまって、逆輸入ですよ。本当にあのジコウとかは…。ま、ほとんど片付きましたが、まだアレの類似のメイジとかニホンコンサバとか、権力を増長させたマスコミの連中が残っていますから、さくさくテストを受けさせましょう、あの連中に残り少ない資源を無駄に使われてはたまりませんから“

と、つぶやきながら元ニホン国議員や政財界マスコミ関係者らのリストを眺めてた。


どこぞの国では、赤ん坊が泣くことが当たり前ということすらわからない高齢男性が少なからずいるらしいですが、当然のことながら少子化が進み、若人やら技術者やら科学者は流出しまくっているそうです。そういう国を再生させるには、思い切った手を使わないとダメなのかもしれないかもしれないですねえ。

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