知りたくなかった新事実、そして
よろしくお願いします
「今までお世話いたしました」
「挨拶違くない!?」
「言葉通りですが」
「ソウデスネ……」
なんやかんや、部下のスパルタ指導のおかげで、王太子の仕事はなんとかなりそうである。
書類の山がその日になくなるくらいには、王太子も進化したのだ。一徹二徹くらい、寝なくてもなんとかなる! なれ、しろ。と圧が……嫌ならさっさとやれや、とばかりの愛情溢れる指導の賜である。
王太子妃のほうは、ほぼ全てをブロックして閉じ込める方向にシフトしたのでトラブル発生率は激減した。素晴らしい。
未だ思うままに物欲を叫んでいるらしいが、今着ている王妃のお古ドレスのなんと美しいことか。見習えそのセンス。
「ピンクがないっ!!」
王太子妃に派手なショッキングピンクなぞいらんわ阿呆が。
「ところで、辞めてどうするんだ?」
幼なじみ兼部下のことだからと、心配はしていないが興味はある。
今までなんだかんだ言いつつも、見捨てないでいてくれたのは彼だけだったから。
「ああ、言ってませんでしたか」
「それどころじゃなかったしな」
自嘲気味に返したが、全くもってその通りですね、と頷かれた。遠慮ぉ!
「惚れた女性がフリーになったので、口説き落として婿入りすることになりました」
「なにその衝撃の新事実! 全然知らなかったし、よくそんな時間あったな!?」
「自分優秀なので」
そうだよコイツそういう奴だよ優秀なんだよ変なとこさぁ! と幼なじみバージョンで拗ねてみたが、ブリザードも真っ青な視線に凍る前におめでとう、と祝った。
「ありがとうございます」
「こんな状況だから、祝いも出せないが。退職金はちゃんと受け取ってくれ」
「お気遣いなく。受領済です」
「抜かりないな」
心のアップダウンを乗り越えて、王太子は笑顔で送り出そうと声をかけた。
「どこに婿入りするんだ? 家柄によっては顔を合わせることも多いだろう」
そこは抜かりも容赦も優しさもない部下である。鋭い言葉の刃は自由奔放であった。
「貴方が婚約破棄した、公爵家に。ユリアナの婿になって、女公爵になる彼女を支えます」
「は?」
では、失礼。
バタン。扉が閉まっても王太子は動けなかった。頭が回っていない。混乱ここに極まれり。
「な、こ、こう、ユリ、ゆ……ユリアナだとぉ!?」
やっと回路が回復して、叫び声を上げた頃には、部下はとっくに公爵家の馬車で帰宅しており、誰も聞いてくれる人はおりませんでしたとさ。
後に、史実にやらかし王太子、のちやらかし国王と刻まれる王太子は、反省を胸に地道に借金返済のために働き、返済が完了した年に国王になった。
妻である妃との間に子はなく、弟王子に王位を譲ることが決まった。
史実の重要な部分には、必ず女公爵とその夫の記載があり、事実国を回していたのはこのふたりなのだろうと推察された。
女公爵夫妻は、男女女男男と子宝に恵まれ、幸せに暮らしたという。
入婿が事ある毎に、王太子(国王)を言葉の刃でぶった切っていたことは、さすがに記されてはいなかった。
完結です。おつき合いありがとうございました。