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形式上の会話

「皆さん、おはようございます。吸血人族ヴァンパイアと夜型の皆さんはこんばんは。天気予報の時間です。司会はいつも通りモヒカンとトゲ付き肩パッドがチャーミングポイントな人間ニンゲンのヒヤッハと」


「先日ようやく喉風邪から復帰しましたハーピィと言う名の血族トライヴ翼人族ハーピィである私でお送りします。イェーイ皆ひさしぶりー!!」


「いやぁ久しぶりですハーピィさん。復帰イッパツ目でちょっと心配だったんですが、その様子だと元気そうですね」


「そうっスねー!私プロ意識とか欠片も無いし労働意欲も低いんでね!演じるって事が無理なんですよ!いや厳密には無理って訳じゃないけどまぁ気乗りはしませんね!だから皆さんご覧の通り元気バリバリです!そしてヒヤッハさんの肩パッドの針が当たるんじゃ無いかとビクビクするこの席も久しぶりです!やっぱり何気にストレスですコレ!いい加減その肩パッド外しません?いま喋ってて思ったんだけどこれのストレスが積み重なって喉風邪ひいた説も浮上してきましたからね私の中で!」


「チャームポイントなんでそこは譲れませんね!そんでハーピィさんのお喋りも相変わらずですね!いつもなら問題は無いんですが本日は早めに切り上げて欲しいですね!午後から緊急でパンドラ軍の隊員を募集する特別番組が流れますからね!時間管理をシビアにして行きたいところです!フリじゃないからねマジで!前置きはもういいんで早く今日の天気を言っちゃってください!」


「おっとすいません!分かってはいたんですが久しぶりの放送なんで張り切って喋り過ぎちゃいました!そんじゃまぁ今日の天気なんですけど、見ての通り快晴です!ココに来るまで我が身で体感した感じ温度も高いです!クッソ暑いです!こんな日はアイスをバカ喰いしたらウザいだけの過度な暑さも一種の楽しみに変わります!情熱の有る料理人達のおかけで今の時代は猪人族オークや人間でなくとも様々な料理が楽しめますからね!便利な時代になったモノです!」


「そうですね水分補給を怠らないようにしたいですね体調を崩してしまっては勝てるケンカも勝てないんでねそれとハーピィさんまた喋り過ぎてます急いで雨の予想も済ませてくださいマジで」


「おっとすいません!続いて雨の予想です!湿気に負けて虫の飛ぶ高度が下がってたりもしないしむしろメッチャ高くまで飛んでますね!今日1日は雨も無さそうですね!そうそう虫で思い出したんですけど私やすんでいる途中に軽いリハビリがてら久々に狩に出掛けたんですよ!そんで木の上から手頃な獲物がいないか探してたんですけどふと足に違和感を感じましてね!なんだと下を向いたらファイターケムシが大量に足に昇ってきていて思わず絶叫しちゃいましたよ!あの毛虫その名の通り誰彼かまわずファイトしにくるんでね!」「ハーピィさん」「毒にやられたらめっちゃ痒くなるんですよ!私も含め大半のハーピィは他の人達みたいに器用な手を持ってないのでなおさら驚異です!そんで慌てて近くの川に飛び込んだらたまたま魚と一緒に」「あの、ハーピィさん」「泳いでいた怪詩人族セイレーンと鉢合わせちゃって「また魚を狙いにきたのか!!」と怒鳴られちゃったから慌てて誤解を解こうとしたらですね私の絶叫を聞き付けたのかそう遠くない距離からバンボスが雄叫びを挙げながら」「あのマジで時間無いんで」「猛スピードでコッチに迫ってきてたからもう慌てて逃げようとしかけたんですけどどうしても間に合わないって距離でも無さそうだったんで後で痒くならないようにまずは毛虫だけ水の中でバババッと洗い落としてから」「おいコイツつまみ出せ!!」


グダグダな流れのまま、テレビが午前9時を告げる音を鳴らし始めると、ツゲレはそれの電源を切ってから、寝ているレツヒを揺り起こす。


「起きろ兄者、そろそろ準備する時間だぞ」


「ンン……ふが?ん……ぅんん」


レツヒが目覚め始める一方、ジャスフィアとサーシャは、一晩中起き続けて穏便かつ確実に断る方法を考えたり、ジャスフィアが道さえ教えてくれれば1人で兄弟を案内して来るだの、サーシャがドラゴンの動きに慣れてない者達だけで行くのはさすがに危険だから認めないだの、ああでも無いこうでも無いと意見を出し合うが、答えが見つからずに悩み続ける中で、広間の置き時計が何度目かの鐘を鳴らす。



「…………………………………………………………」

『そろそろ不味いな。もうこれしか思いつかないし、体力も温存しとかねぇと』



時計を見て現時刻が朝の9時である事を確認したサーシャが、思い詰めた顔で結局は依頼を受けると言い出すと、ジャスフィアがそれなら一緒に行くと言い出して「来なくていいだの」「絶対に付いて行く」だのの押し問答が繰り返された挙句、またも断る方法の見つからなかったサーシャが深いため息を落とす。


それから30秒程の間が空いた後、とりあえず仮眠を取ろうとの結論に2人は至った。


「飯も済ませなきゃだからな、12時には起きて来いよ。簡単なヤツしか作れねぇけど」


「あぁうん、それじゃあまた後でな」


それぞれ反対方向の扉から広間を出て、2人は自室に向かう。


仮眠の為にジャスフィアとサーシャが寝室に向かう一方、レツヒはまだ完全に目覚めていない頭と体で、全裸のまま四つん這いで布団から這い出して冷蔵庫に向かっていき、扉を開き、1リットルの鉄製ボトルを手に取って、濃厚な甘みのンダム果汁と少量の水が混ざったジュースを一気に呑み干す。


「あ"ぁ"〜」


寝起きの渇いた身体に甘いフルーツジュースをキメたレツヒが、心身の充足から満足気に喉を鳴らす。


「目が覚めたんなら用意してくれ。暑くなるから水分は多めにな」


「ぁ〜…わぁってるよ」


ボキボキと首を鳴らしてから徐に立ち上がったレツヒは、乱雑に床に脱ぎ捨てている適当な衣類には目もくれず、ハンガーに掛けられた昨日と同じ戦闘用の衣服を着込んでいく。


準備を済ませた兄弟が、家を出てから約1時間半歩いたところで、目についた適当な店に入って朝昼兼用の飯を済ませる頃、既に起きだしていたサーシャは、キッチンで料理の準備を進めていた。


食材の栄養をなるべく残しつつ、寝起きすぐの状態でも食べやすいように柔らかくする為に蒸し物をする待ち時間の傍ら食器を用意していく。


棚から取り出した食器をキッチンに並べていくやり慣れた単純な作業。


ほとんど頭を動かさずともできる作業の中で、脳はこれから先の出来事に関連付けられた記憶を、半ば以上無意識に思い出していく。



エルフの集落で暮らしていた幼い頃、姉のような存在だったミーナと言う名の年上の子に、森へと初めての狩に連れて行ってもらった。


その際に、他の大陸から来ていた余所者達が、サンプルを取るつもりだったのか無闇矢鱈に動植物を銃で撃ち殺したり刃物で切り取っては、クルマと呼ばれる半自動で動く台車に乗せた、巨大な箱の中にそれらを詰め込んでいく様子が、小高い場所から確認できた。

途切れる事の無い彼等の騒ぎに反応したのか、たまたま姿を現した子供のドラゴンにも安易に手を出した結果、辛うじてドラゴンは倒したものの彼等はほぼ壊滅状態。


これ以上森を荒らされないよう、彼等が体勢を立て直さない内に残った者にトドメを刺そうとするミーナと、殺すのはさすがに可哀想だと彼等を助けようとするサーシャが言い争っている内に、親のドラゴンが現れては、子を殺された怒りで生き残った者達を肉塊に変えていく中、ミーナがサーシャの手を引き逃げるよう促す。


しかし、自分達にも気付いたドラゴンが一瞬で間を詰めては、瞬く間も無くミーナが殴り殺される。

共に衝撃で飛ばされて、土壁と、死体になったミーナが覆い被さる事で生の気配を隠せたのか、奇跡的にサーシャは殺されずに済んだ。


後から知った事だが、飛び去って行ったドラゴンはその後、我が子を殺した者の仲間が残っていると思ったのか、それとも見せしめか、単なる八つ当たりかは分からないものの、周囲の人族を無差別に殺し回ったと記録されている。


サーシャが住んでいた集落もまた、ドラゴンが敵だと認識した範囲内の人族に含まれていたのだろう。呆然としたままミーナの死体を担いで数日かけて集落に帰ると、集落は既に廃墟になっていた。



『……………』


見慣れた室内の景色を映しだす物質的な視線よりも、過去の出来事を思い描く精神的な視線に意識が吸い込まれていく中、ふいに、手に持っているはずの皿の重みが消えて行く感覚によってハッと我に帰るが、反応が間に合わず、手の中から滑り落ちた皿が地面とぶつかり、けたたましい音を立てながら割れる。


「っと!ぁ〜……」


ため息を履きながらしゃがみ込み、反射的に手で掃いて破片を集めるが、2回掃いたところで非効率だと頭で判断し、部屋の隅に置いていた小さなホウキとチリトリを持ち出してソレで破片をかたづけていく。


「…どうすればよかった…」


当時のサーシャにミーナを説得する方法は無かった。

グダグダ言い争わず、ミーナに賛同して淡々と処理をした後すぐに立ち去れば結果は違っていたのだろうか。

いまさらアレコレ考えても仕方ないとは思いつつも、考えずにはいられない。



「サーシャー入るぞー」


「っ!?」


とつぜん廊下から聞こえて来たまだ寝ている筈のジャスフィアの声に、サーシャが慌てて破片を掃いて道具を隅に置いやる。


「お、おぉ…どうかしたか?」


改めて小皿を棚から出したサーシャが、たった今ドアを開けて入ってきたジャスフィアに声を掛ける。


「あぁ、いや、できる事だけでも手伝おうと思ったんだけど…もうこんな出来あがっているもんなのか」


「まぁな…うん」


『こいつ…ちゃんと休めてるのか?』


なんとも言えない表情で見てくるジャスフィアに対し、バツが悪そうにサーシャが問いかける。


「な、なに?」


「なぁサーシャ、この料理、いつから作ってんだ?」


「なんだよいきなり…40分ぐらい前からだけど」


「え、40分?お前ちゃんと休めてんの?起き出す時間とかも入れたら1時間も寝てないんじゃ無いのか?」


「いや、慣れてるし少し寝れば充分だよ。この程度の手間ぐらいは掛けれるかと思ったからそれ相応の料理を作ってるだけだ。別に手ぇ抜こうとすれば幾らでも抜けるし、自分の体調も見つつ趣味も兼ねてやってんだから気にすんな」


「う、う〜ん……」


イマイチ腑に落ちていない様子のジャスフィアに、後は蒸し上がるのを待つだけだと言ってサーシャが退席させる。


程なくして蒸し上がった魚の切り身を、どんぶりの中に入っている意図的に冷ました米の上に乗せ、そのどんぶりと副菜と汁物をお盆の上に乗せて広間に運び、食事を済ませて、小休止をしているところで、歓迎の有無はともかく計ったのであろう程良いタイミングで呼び鈴が鳴らされる。


「…来やがったな」


サーシャが言い終えたところで、2人で立ち上がって玄関に向かう。


「よう」


ジャスフィアが静かにドアを開くと、短く挨拶をするレツヒと、小さくお辞儀をするツゲレの姿が見えた。


「いちおう聞いとくが、引く気は無いんだよな?」


サーシャの確認にレツヒが即答する。


「ふふ、微塵も無いね」


「………入れよ。中で話そうぜ」


サーシャが促すと、レツヒとツゲレが玄関内へと足を踏み入れる。



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