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母は異世界でも強し  作者: 神代 澪
7/80

大掃除と洗浄の魔術

 


「ここが俺たちの借りている家だ。」


 ウォルフの指さす先にあったのは家ではなく、屋敷……いや、館レベルの大きさだった。


 ――えーっと、五人で借りるのにこの大きさ必要か?


 特大のツッコミを胸にしまい込み、ウォルフに促されて中へ入ると皆既に到着していて、エレインは「ゾンビ出そうじゃない?」となんだかとても楽しそうだし、リンネットは「探検してきていい?」と今にも走り出しそうだ。ミランダとイレーヌはクラウスの腕にぶら下がって遊んでいた。


「先に部屋を決めろ。じゃなきゃゆっくり休めないだろう?」


 ウォルフはそう言って私たちを二階へ誘う。

 リンネットは一人部屋がいいと言ったが、エレインは一緒でいいらしい。ゾンビにビビったか?と思ったけれど、そこは黙っていてあげましょう。

 ミランダとイレーヌはクラウスが遊んでいてくれるというので、遠慮無くおまかせした。


 ――寡黙な偉丈夫は思いの外子煩悩だったよ。


 二階には部屋が七つあり、そのうち三つは使っているということで、残りの四部屋を順番に見て回る。

 御園夫妻は広すぎると落ち着かないと言い、中でも一番狭い部屋を選んだ。狭いと言っても今まで見たこともない広さだったが……。

 私たちは人数も多いし、外に出られないことを考えて、ちびちゃんズが走り回っても大丈夫なように一番広い部屋にした。空き部屋から余っているベッドを運び込んだ後、リンネットの部屋を探しに行く。リンネットは全部の部屋を見てから決めると言い、三階へ駆け上がっていった。


「見てみてー。天涯つきのプリンセスベッド。」


 リンネットの選んだ部屋はお嬢様が使っていたであろう、可愛らしい家具の揃った部屋だった。気に入ったようでなによりだ。


 部屋が決まれば掃除の時間だ。アイテムボックスのおかげで荷物と呼べるような物は何もない。一階に降りて掃除道具を借りようとウォルフを探してあちこち覗いてみる。掃除が行き届いていないと聞いていたが、行動範囲が分かるほど使っていない場所にはほこりのジュータンが敷かれていた。

 私は一階の端のほうにある調理場でウォルフを見つけ声をかけた。


「ウォルフさん。部屋が決まったので、お掃除したいんですけど。」


 私の声にウォルフが振り向き「掃除の前に買ってきた食材を出してもらってもいいか?」と言う。すっかり忘れていたが、私のアイテムボックスに入れたのだから、私じゃないと出せない。

 私はアイテムボックスから購入してきた物を出しながら、掃除に使えるような魔術がないか聞いてみる。


「野営の時は洗浄の魔術を使うこともあるが、せいぜい身体と服をキレイにするぐらいだ。けっこう魔力も必要だからな。」

「それ!教えてください。」


 私は洗浄の魔術を教えてもらい、早速部屋で試してみる。ただし先刻の風魔法の一件があるので、ウォルフの監視つきで……。子供たちや御園夫妻も洗浄の魔術に興味津々で見学に来た。


「ベッドで試してみましょうか。魔力の調節はどのようにすればいいんでしょう?」

「いきなりベッドか?まあ、あれ程の魔力を放つんだから大丈夫か。洗浄するもに向かって魔力を放出しながら呪文を唱えれば自動的にそれに必要な魔力が出てくるもんだが。」


 私は部屋に並べて置いてあるベッドに両手をかざし、手のひらに魔力を集める。そして「洗浄」と言いベッドに向かって魔力を放つ。

 放たれた魔力が水に変わりベッドを包み込む。数秒で水が消え次に風が包み、しばらくするとふわっと風が消えた。

 触ってみるとホコリでざらざらしていた寝具がつるつるのふわふわになっている。


 ――感動だぁ。洗浄の魔術万歳!……でも一つずつやるのはちょっと面倒だね。


 タカも挑戦してみたが、かなり魔力を消耗したようで、ステータスを確認するとベッド二つで魔力が四分の一程減っていたと言う。


「私は魔力無限だから減ることはないし、それならいっそのことまとめてやっちゃいましょう!」


 私の言葉にウォルフが驚愕して呟く。


「魔力無限って……。」


「今はそんなことより、ちゃちゃっとやって夕食の準備をしないと、遅くなりますよ?」


 半ば強引に大掃除の準備をしていく。食材や書類をアイテムボックスに放り込んで、皆で館の外に出る。


「それじゃあいきますね。」

「ちょっと待て!建物ごとやるのか?いきなり家がキレイになったら目立つだろう。」


 ウォルフがあわててストップをかける。

 確かに目立つのはまずいので、入り口から魔力を流し館の中だけ洗浄することになった。

 ゆっくりと集中してイメージを膨らませると、手のひらに集まる魔力もそれにあわせて大きくなっていく。


 私が「洗浄」と言って魔力を放つと入り口から水が勢いよく流れ、階段を駆け上がる。窓ガラスがガタガタと音をたてることで、各部屋に水が満たされていくのがわかる。さすがに大きな館なので時間はかかるが、魔力はいくらでもあるので疲れるということもない。

 水が消え、風に変わった頃にウォルフの仲間であろう二人の男性が戻ってきた。


「何をやっているんだ?」


 黒髪を後ろで一つに束ねた男性の問いにウォルフが説明している間に洗浄は終わった。

 皆で館の中に入ると想像以上にキレイになっていて驚いた。


 ――ホコリもクモの巣も消えてるし、壁も柱も床も全部ピカピカ!これできっとGを見ることはないね。


 私が満足している横で、現状についていけない人が二人。

 とりあえずのあいさつだけをして彼らへの説明をウォルフに任せ、アイテムボックスから荷物を出す作業をしていく。書類を出し終えキッチンへ行くと、これまた感動の嵐が吹き荒れた。

 鍋やフライパンの焦げはもちろんカトラリーの錆びも落ちて、キッチンが輝いていた。

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