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母は異世界でも強し  作者: 神代 澪
23/80

館の掃除とお買い物

 


 次の日は朝からタカ、エレイン、リンネットと一緒に館へ向かった。シノは子どもが増えたので孤児院に残っている。長年保育士をしていただけあって、笑顔で子どもたちの相手をしているのはさすがだ。私なら大きな声で怒り散らしているに違いない。。

 南門でクラウスと待ち合わせをしていたが、やっぱり予定よりも人数が多い。ウォルフとリゼルダ、それに大きな袋を抱えたマルセロもいた。


「おはようございます。今日はよろしくお願いしますね。」

「ああ、おはよう。ウォルフは仕事の話しもあって来てもらった。」

「あたしは工房のことを相談しようと思ってね。」

「お店は大丈夫なんですか?」

「店自体は忙しくないんだが、服の問い合わせが多くてね。工房を優先させた方がいいって話しになったのさ。」


 布さえあればすぐにできるけど、その布が尽きたから当分新しい服は作れない。工房建設は急ぎになりそうだ。


「おはようございます。面白そうなんでついて来ました。」


 ――やっぱり一人だけ理由がおかしい。ってかその袋何?


 マルセロの言葉に皆がため息をついた。南門から館までは片道一時間ぐらいだった。そして館の門から正面玄関までは更に二十分程かかった。ヴィンスは南門からすぐだと言ったが、富裕層は普通馬車を使うので時間の感覚が違うことに今更ながら気づく。


 ――これは馬車が必要かな?いや、今は切実に車が欲しい。


 掃除は洗浄の魔術で一気にやろうと思っているので、先に館の中を確かめることにした。

 扉を開けると玄関ホールの広さに驚く。正面には絵画が飾ってあったらしい跡があった。その上にはエントランスがあり、左右から緩やかにカーブした階段が繋がっていた。館の中はうっすらホコリが積もっているものの、思いの外キレイだった。

 ひとつずつ部屋を確認して回ったが、どの部屋も家具はあっても装飾品や絵画の類いはなかったので、全ての扉と窓を開け外へ出た。


 ――今回は外観もまとめてやっちゃいますよー。


 私は館をすっぽり包み込むイメージで魔力を手のひらに集め、「洗浄」と呟き魔力を放出する。大きいのでかなりの時間と魔力を使ったが、充電要らずなので疲れることはない。


「相変わらずバカみたいな魔力だな。」


 ボソッとウォルフの呟きが聞こえた。


「いやぁ、いつ見ても素晴らしいですね。さすがです。」


 マルセロが笑顔で誉めてくれるが、そこで皆気づいた。


「マルセロ、袋はどうした?」

「ありがとうございます。中でキレイになってるはずです。」


 クラウスが額に手を当てため息をついた。そう、あの大きな袋は洗濯物だ。そのためについて来たのだろうか?相変わらずよくわからない人である。


 館がキレイになると、それぞれが使う部屋を決めていく。

 タカは一階にある書斎のついた部屋。リンネットは今回天涯つきのベッドがなかったので三階の眺めのいい部屋。エレインは二階のテラスがある部屋。私はちびちゃんズと二階の一番広い部屋に決めた。

 家具はたくさんあったので、使わない部屋の物と入れ換えたりして自分たちの好みで整えた。

 その間リゼルダが厨房で必要な物を書き出してくれていた。


「厨房は何もなかったから調理器具から食器まで一通り揃えないといけないよ。それにしても広いねぇ。あたしもこんなところに住んでみたいよ。」

「住めばいいじゃないですか。部屋はいっぱいあるんだし。」

「そうかい?じゃあそうしようかね。」


 ――なんかこのノリ前にも覚えがある……。


 戻ってきたウォルフは頭を抱えていたが、リゼルダが決めたことに反対はしなかった。

 ここ数年は世界の均衡が崩れた影響が徐々に出ていて、魔獣が人里に出没するため村や街を捨て、王都のような城郭都市に移住する人が増えているそうだ。

 ウォルフの息子たちも結婚を期に部屋を借りるつもりでいたが、人が増えすぎて空き部屋がなく、あっても高くて借りられないので、今現在3DKに三世帯で住んでいるそうだ。


「そうなると、土地持ち貴族は税が取れなくて大変じゃないですか?」

「私兵を持っていて領民を守ってる貴族もいるが、少数だな。」


 私の場合税金は魔獣狩りで稼げるのであまり心配はしていないが、お貴族様もなかなか大変らしい。



 昼食はお弁当持参だ。シノとアリシアは子どもたちから目が離せず食事を作る余裕がないので、孤児院の昼食分と一緒に作ってきた。

 午後は買い物をするため、リゼルダとリンネットと三人で王都に戻る。その間クラウスとウォルフとエレインは領地内を確認するらしい。確認といってもエレインのサーチを使うのですぐに終わるらしい。


 ――それってズルくない?



 私たちは一時間半かけて王都に戻り調理器具から見ていくことにした。

 お鍋もフライパンも大きさがいろいろあって迷いそうだが、リゼルダが勢いよく選んでいくのでお任せして私はお財布係りに徹する。

 生活雑貨はもちろんリゼルダのお店で購入する。リゼルダが引っ越しを決めた報告をすると、ロアンヌは「私もそっちがいい。」と言った。

 部屋はあるので、私的にはいつでもウェルカムだが、お店に通うのが大変になるのでロアンヌは引っ越しを断念した。


 リンネットは天涯付きのベッドが欲しいと騒いでいたが、今日は時間がないので却下し、後日ゆっくり選びに行く約束をしてなんとか納得させた。


 リゼルダが食器は館に合った良いものを使いたいと言うので、ちょっと大きなお店に入ってみた。

 店内にはカトラリーがデザインごとにセットで飾ってある。

 リゼルダといくつ買うか相談していると店主らしき男性が奥から出てきて、私たちを見るなり眉根を寄せた。


「お客様、当店にはお客様に合う品は置いてございません。西の市場へ行かれることをお勧めいたします。」


明らかに馬鹿にしたような笑顔で丁寧に追い払われてしまった。


 ――お金はあるのに……、身分社会めんどくさいね。


「これはあれですね。アルフレッドさんかジグセロさんに頼むしかなさそうですね。どちらが適任でしょう?」

「そりゃアルフレッドだね。ジグセロはめんどくさいから。」

「確かに。あの兄弟はめんどくさいですね。」


 そんなこんなでアルフレッドに相談して直接工房を紹介してもらった。

 今回自分だけ仲間外れだとちょっと拗ねていたけれど、工房で食器を購入している間に馬車を用意してくれていた。そしてアルフレッドは当たり前のように乗っている。

 屋台でお茶とおやつを買って館に戻ったが、ヴィンスの言った通り馬車だとすぐだった。


 クラウスたちは領地内に魔獣がいないことを確認した後、タカと一緒に図書館で得た情報や、竜人族の国への道中でわかったことなどをまとめていた。

 私とリゼルダは厨房で調理器具など買ってきたものを片付けていく。新しい道具が並んでいるのを見ると使いたくなる。私は頭の中で引っ越しパーティーの計画を立て、何を作るか考える。厨房の片付けが終わると、お茶とおやつを持って応接室に向かった。


 皆でおやつを食べようと準備していると、マルセロの姿が見えないことに気づいた。誰も見ていないと言うので、エレインにサーチしてもらうと、地下にいることがわかった。

 館の地下といえば怖い系しか浮かばない。エレインとリンネットは探検気分で先頭を行き、私はクラウスに隠れるようにゆっくり進む。他の皆が後ろにいるので後方は安全だ。と思いたい。


 地下には食糧庫や酒庫があった。檻でないことにひとまず安心する。

 外と違ってとてもひんやりしていて、冷蔵庫要らずだ。

 マルセロは食糧庫で魔方陣を展開していた。「何をしているのか」というクラウスの問いに、城にある自分の部屋と繋いでいると、悪びれもなく言った。


 ――やってることもおかしい。これって犯罪じゃないの?


「どうしてマルセロさんの部屋と繋ぐ必要があるんですか?」

「毎回あの袋を抱えて来るのは大変ですから。」

「自分で洗濯すればいいでしょ!」

「いやぁ、そんな無駄な魔力使えませんよ。」

「洗濯は無駄じゃありません。」


 ――ダメだ……この人とはわかりあえない。


「もういいです。でもここに繋がれると、食糧庫が使えないんで、上の空いている部屋と繋いでください。」

「それはありがたい。」


 マルセロは展開していた魔方陣を消すと、部屋を選びに上がっていった。

 皆何も言わないが、呆れているのが顔に出ている。なんだかとても疲れた。マルセロが頻繁に出入りするようになれば間違いなくこういうことが増えると思う。


「誰かマルセロさんに一喝できるような人いませんか?」

「知ってはいるが、立場上そう簡単には会えんな。」

「誰ですか?」

「現特級魔導師殿だ。」

「お偉いさんじゃ難しいですね。」


 どうやら諦めるしかないらしい。だが、ここへ来る以上はしっかり働いてもらわなくちゃね。


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