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母は異世界でも強し  作者: 神代 澪
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聖女の仕事とエレインの武器

 


 エレインが修行の旅に出るまであと三日、ウォルフたちと買い物へ行き、食糧と水は既にエレインのアイテムボックスに入っている。そして討伐訓練に必要だからと、武器屋に連れて行ってもらったエレインが選んだのは弓矢だった。忍者から離れていくのがちょっと残念ではある。

 本人はそれを出発までにクロスボウに改造すると意気込んでいたが、一日を待たずして救援要請がきた。好きなだけあって、設計は完璧だったが、細かい作業が苦手なのである。

 元の世界でも戦闘系のゲームが好きで、武器には詳しいし、部屋にもたくさん飾ってあった。私は散々聞かされていたが、何一つ覚えていない。

 あの日も引っ越し作業中に壊れたら嫌だと言って、私の仕事道具と一緒にキャリーワゴンに積んでいたので、この世界にも大量に持ち込まれている。

 それを見てロベルトは目を輝かせ、マルセロがこちらでも使えるようにならないか研究していると言っていた。



 エレインがお弁当とおやつを持って行きたいと言うので、今日はシノとアリシアにも手伝ってもらい、お菓子作りをすることになった。


 ――修行の旅におやつがいるのか?


 と、そんな疑問は置いといて、クッキーと蒸しパンを大量生産する予定だ。


 いつもシノとアリシアにちびちゃんズを預かってもらっているお陰で、リゼルダのお店の改装も順調に進んでいる。

 オルドラ王国へ来てからは、バタバタ続きでゆっくり話したことがなかったので、久しぶりに楽しくおしゃべりしながらのおやつ作りだ。


 この孤児院はアリシアしかお世話をする人がいないので、当然彼女にはお休みもない。かなりブラックなお仕事ではないかと思ったのだが、アリシアはその辺の事情をいろいろと教えてくれた。

 アリシアは中級聖女で、修道館から派遣されて来ていると言った。私もシノも修道館や聖女の仕事には興味があった。

 下級、中級の聖女は王都や周辺の街の療養所や診療所に派遣され、そこで癒しを与えたり、お世話をするというように、人々のために活動することで等級が上がるらしい。

 上級になると、庶民ではなく貴族が相手になり、そこからお茶会や舞踏会に呼ばれるようになる。そうなると、貴族からの寄付金もあり、生活が一気に華やかになるそうだ。

 ただ、十歳の鑑定で上級聖女になった者は最初から貴族相手の仕事につくため、修道館の中ではお姫様の如く振る舞うのだとか。


 ――うわぁ、そんなところ絶対行きたくない。うちの子だったらげんこつものだよ!


 療養所や診療所で仕事をする下級、中級聖女は交代でお休みがあるけれど、休みの日にも上級聖女のお使いを頼まれたりと、結局休めないので、普通の生活に近い孤児院はとても良い仕事場だと笑っていた。


 ――確かに、世の母親は年中無休だもんね。偽姫様の我儘に付き合うよりは断然いいね。


 そこでふと考える。私って聖母の肩書きは持ってるけど、今現在はただのおばさんである。充電器にはなれても、使える魔術は少ないし、助格コンビがレア種ですごくても、私がすごいわけではない。


「タカさんは図書館に通って勉強してるんですよね?」

「そうね。本を読みながら魔術を使ってみたりしてるわ。昔は小学校で先生をしていたの。きっと昔を思い出して楽しんでるんじゃないかしら。」


 シノもずっと保育士をしていたので、毎日子供たちと過ごすのがとても楽しいと笑った。


 ――私もせっかくの魔力が宝の持ち腐れにならないように、魔術の練習しようかな。……よし冒険者ギルドに行こう!モヤモヤするときは推しを見て元気を補充しなくちゃ。でも今はおやつ作りが最優先だね。


 うんざりするくらいたくさん作った。できたてを食べられるように、一旦私のアイテムボックスに入れて、私が出かけている間に子供たちが食べられるように、シノのアイテムボックスにも入れてもらった。



 ギルトの訓練場ではエレインがクロスボウの練習をしていた。腰に付けたアイテムボックスから棒を出してクロスボウにセットして構える。

 棒だけ?と思ったら、エレインがクロスボウを構えるとセットした棒に矢尻と羽根が現れた。的に向かって放った矢は明らかに軌道修正されて飛んでいき的の中央に刺さった。


 ――なんだそれ?


 目の前の光景があまりにも突っ込みどころ満載で、逆になんと言っていいのかわからない。


「露ちゃん。あり得ない。」

「けど、あるんだな。」


 矢尻と羽根は魔力でできているから、棒さえあればいくらでも作れて、自分の魔力だからイメージ通りに飛ばせるらしい。


 ――クロスボウ必要か?


 まあ、せっかく作ったしエレインが満足してるんだからそれで良しとして、私のアイテムボックスからエレインのアイテムボックスへおやつを移していく。


「クッキーと蒸しパンだけ?飽きるんじゃない?」

「飽きるほどいっぺんに食べなきゃいいでしょ!」

「なるほど……。お弁当はサンドイッチが食べたい。」

「マヨネーズが無いから、クラウスさんが必要だね。」


 そんな会話をしながら周りを見回し癒しを探したが、今日はいなかった。残念だけど夕食の準備もあるのでゆっくりはしていられない。

 ガッカリしながらギルドを出たところで推しを見つけて胸が高鳴る。


 ――はぁ。神様ありがとう。元気出たー。


「今日はどうしたんだ?」

「エレインに届け物があったので。私はお先に失礼します。」

「……ああ、気をつけて。」


 ――いつ見てもステキですなぁ。推しのいる生活、最高!



 その夜タイミングよくクラウスが来てくれたので、マヨネーズ作りを手伝ってもらった。


「明日は具材の買い出しに行こうと思うんですけど、竜人族の国に行くのは七人ですよね?」

「そうだが、一人で買い物するのは大変だから俺も一緒に行こう。」


 クラウスは荷物持ちについて来るつもりらしいが、私がアイテムボックスを持っていることは忘れているんだろう。それでも他に必要な物があるかもしれないので、そこは突っ込まずに一緒に来てもらうことにした。

「お肉ばっかりはダメですからね!」


 私が一言釘を刺すとクラウスは無言で固まってしまった。きっとお肉をいっぱい買うつもりだったのだろう。


 明日は朝市が立つ日なので、早い時間に約束をした。エレインは、マルセロと武器改造の話しをする約束があるから行けないと言うので、リクエストを聞いて買い物リストを作った。


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