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時代を超えたいい手紙





 休日のショッピングモールは込み合っていた。

「さてさて、あとはアレを買わないとね」

「……まだ買うの?」重い荷物を片手に面倒くさそうにたずねた。

「当然! あったりまえ。せっかく来たんだから買い込まないと」

「……荷物持ちがいるからって調子に乗ってるなぁ……。こっちの身にもなってくれよ」

「まあまあ、感謝してるよ。いつもありがとうね」笑顔でお礼をいう。

「まー、いいんだけどね……」少しテレているのがわかった。

「さてさてそれじゃ――……ん? あれって」

 目線は遠く。――そこには見知った人物がいた。

「ん? どうかした?」

「ふふ。いいえ。なんでもない」

 首を振って否定する。伝えなかった。

「ねえねえ、それよりも、やっぱりむこうの洋服、欲しくなってきちゃった。もう一度見に行ってみましょ?」

「え。さっき見たんじゃ……?」

「まあまあ、細かいこと気にしないの。行きましょ!」

 荷物を持っていない腕に絡みつく。

 無理やりに進行方向を変更。その場から離れた。



――――――――



「ねえ、皆元さんどこまでいくの?」

 引っ張られてつれていかれる彼がついに聞いた。

 それにウキウキルンルン元気いっぱいの彼女が答える。

「今度はあっちに私の目当ての洋服がある気がするんだよね。なにか運命の力を感じる」

「このヒト、カンで動いていやがったのか……はあ」

 溜息をついた彼はうんざりしていた。

「まあまあ、いいじゃんいいじゃん。時間はあるし、ちょっと遠いショッピングモールだから知り合いに会う可能性も低いし、やっと受験も終わったし。ようやく肩の荷が下りたところじゃん。たまにはいっぱい遊ぼう。ハズをハメそうよ!」

「ハメを外す、ね。正しくは。しかし言いまちがえ難いこと間違えたなぁ……。なにをハメる気だよ」

「なっ、なにを、ハメるなんて……真斗くん、自重して!」

「そういうことではないので人目ある往来の場で妙なことは言わないでほしい件について!」

 てか先に言ったのは皆元さんだろ、と付け足す彼。

 あははっ、と彼をからかって心底楽しそうな彼女。



「さてさて、でも私のモノばっかり見てまわちゃったから、そろろろ真斗くんの欲しい物も……――ん?」

 彼女はポケットの中身が震えていたことに気がついた。取り出して確認。

「おっとちょっとまっといてね真斗くん。なんか私のスマホに――んん?」困惑。それから、あきれた。「はあ、まったくあのヒトは……」

「ん? どうしたの皆元さん」

「いいえ、なんでもないよ。――さっ、いこーよ」

「なにか連絡があったんだろ? 返事していいよ。待つから」

「いやいやいいよ。構わねえよぅ。返事しなくていい。あんなイミフなメッセ」

「イミフ? 意味不明なメッセージだったのか。どういうこと?」

「あー、んー」なにか考えるような素振りの彼女。「いや、なんというか……」言い渋っている。

「なにか言えないこと、言いづらいことなの?」

「そーいうことのような、そーいうことじゃないような……んー、なんというか。……――あっ、そうだ。そこのベンチに座ろうよ。そこで話すから」

 彼女が指差した。

 その一角は休憩スペース。ソファベンチがあった。



 彼が腰掛けて、彼女がすぐ隣に座った。

「よよいのどっこいしょ、と」

「……」――彼女が近い。狭い。……ハズい。

 すすっ、と。

 彼が少し引く。離れる。

 ずずいっ と。

 彼女が寄る。距離を詰める。

 肘掛まで追い詰められた。

「皆元さん、せまい」

「まあまあ。仕方ないじゃあないか」

「いやそんなことないんだけど。スペースあるし、館内だから寒くもないし……」

「で、コレなんだけど」

「ん?」

 密着する彼女が、彼の正面にスマホを出して画面を見せる。

 メッセージアプリの画面らしい。そこには――




『4*1122222000

 22222000558888222

 60006666**000


 2444444 4444224444 』




「……なに、これ」

「でしょでしょ? コレが送られてきたらそう思うでしょう?」

 彼女が共感してもらえたことが嬉しようで、笑顔でコクコク頷いた。






 スマホの画面上部が、彼女の手で隠されていて見えない。

「で、皆元さん、この上は――」指を触れさせようとする。が――

「おっとととと! ちょっとまった! 勝手に触らないの。プライバシー」

 ひょいっ、と彼女がスマホを遠ざけた。

「え。ごめん」

「まったくもー。いくら彼氏彼女といえど踏み込んではいけない領域――勝手に触ってはいけないところもあるんだからね。まったくもー」彼女がぷんぷん怒る。

 ちなみに今現在かってに彼女がくっついて来ている件は棚上げだった。

「真斗くんはなにを見ようとしたの?」

「いや、上部の――今までの会話の流れから、今回のメッセージの内容を推測できるんじゃないかと思って」

「ああ、なるほどそーゆーことね」彼女がスマホをいじる。「……んー。でもでも、それは無理かな」

「どうして?」

「このメッセ、今日はじめての――一発めのメッセージだから前の会話とかないし」

「そうなんだ。でも前の会話の続きだったりしないかな?」

「いやあ、それはないね。――前のは、先週の『受験がんばれ』のメッセとスタンプだから。その会話が続いてるとは思えないもん」

「なるほどたしかに。それなら前の会話から続いている内容じゃなさそうだ」

「でしょでしょでしょー」

 彼女が、うんうんうんとあごを引きまくった。

「ところで皆元さん」

「なににに真斗くん」

「そのメッセージいったい誰から――」


「さってさて、ではでは、そろそろそろデートの続きを再開しよう!」


 彼女が勢いよく立ち上がった。

「ええぇ……」彼があきれた。

 あからさまに話をそらされた。

「それで真斗くん。次はどこに行きたい?」

「いや僕は別に……てか、まだ座ったばかりだしさ。それより――」

「さささあ! 新たな地へ。いざざざゆかん!」

 無理やり移動させられた。





 移動する彼女が彼に訊く。

「それではそれではどこに行く? あ、本屋さんにしようか? また面白いオススメの文庫やマンガを教えてよ」

「…………うん」

「前にオススメされた本、とっても面白かったし別のも教えてほしいんだ。あ、人がぐっちょぐちょになるスプラッタ系はダメね。怖いから。同じ理由でホラーもダメ」

「…………んー」

「人がぐっちょぐちょになるタイプは全部ダメ。……つまりはエッチなのもダメです。ってこと。……あー、でもでも、エッチな作品でも素晴らしいモノもあるしなぁ……。少年漫画にお色気描写は必須らしいし……。じゃあ仕方ないので多少のエロさは許容します!」

「……ん」

「あ、でもでも、ぐっちょぐちょがダメとは言ったけど、この前のスライムのやつは面白かった。アレはエロとか残酷描写とかなかったし――」

「……」

 ――イラっ。

「おい真斗くんんっ!」

 彼女が彼の腕を強めに引っ張った。

「うわっ!? なにすんの皆元さん」

「うわの空すぎ!」

「え?」

「せっかくお出かけしてるんだから、もっと集中してよ。楽しんでよ!」

「あ、ごめん」

「せっかく彼女が勇気を出してエロい話してるのに全く聞いてないしさ」

「いいやそんな会話はしてなかっただろ?」

「まあたしかにちょっと違うかもだけど、でもアレは『会話』じゃなかったよ。真斗くんからの返答がなかったもん。ほぼほぼ私のひとりごとだった!」

「……それは、まあ、ごめん」

 申し訳なさそうに彼に謝られて、彼女も冷静になる。

「……まあ、さっきの私の見せたメッセージの件で考えてくれてるのは……わかってるけど。もうあれはいいから。気にしないで」

「……気にしないでと言われても……」

「……まあ、気になっちゃうかぁ。真斗くんにアレを見せたのは失敗だったかな」

「うん、まあ。気にはなってしまうかな。――それに、なんか、なんというか……らしくない、と思うし」

「ん? らしくないってどゆこと?」


 彼女の質問に彼は真顔で言った。

「皆元さんらしくないってこと」

「私、らしくない?」

 彼女が首を傾げた。


「いつもの皆元さんだったら、絶対にもっと食いついていたと思うんだ。謎の内容を知りたいと思うはず。それなのに、今回はやけにあっさりと引き下がるから、それが気になったんだ」

「あ。あぁー。なるほどど」彼女が納得。

「電話で直接本人に確認してもいいのに、そういうことさえしない」

「……まあいいかな、と思って」

「いつもの皆元さんだったら、なんでこんなメッセージがきたのか、もしかして送信先の人物は事件に巻き込まれてしまったんじゃないか、今現在進行形で脅迫拘束されていてあんなメッセージしか送れなかったんじゃないか、とかそんな感じでもっと慌てふためくと思うんだけど」

「私そんなに妄想たくましいかな?!」

「うん」彼が肯定した。「いつもこれくらい言う」

「えー、うっそぉ」

 彼女が苦笑った。

「メッセージの内容というより、それがなぜなのかが気になったんだ」

「そっか。なるほどね」

 やらかしたな、と彼女は思った。

 ――彼に要らない心配をさせてしまった。

 それと同時に、――

 ――そんなに私のこと、気にかけてくれてたんだね……。

 嬉しかった。



 彼は、なにか、言いづらそうだった。

「だから、その、さ」

「ん? なに」

「これは、僕としてもあまり言いたくないんだけどさ」

「? うん」

「皆元さんは、あまりに無理やり話を切り上げてきただろ?」

「うん」

「だから、その、僕に言いづらい――メッセージの差出人は、元カレとかなんじゃないかな、と」

「……へ?」

 あっけにとられた。

「皆元さんは僕がメッセージの送信人物を聞いた時に、はぐらかしただろ? つまりそれは僕に触れられたくない人物。――前のカレシからのメッセージだった。だから僕に触れられたくなかったのではないかと思って――」

「ちょっ、ちょっとまった。お待ちになった真斗くん」

「ん?」

「あ、ああ、なるほどぉ。そういう風に受け取られちゃってたのかぁ……」

「え、ああ。うん、まあ、ね。女々しいと思うし、だから言いたくなかったんだけど。まあ大丈夫だから、気にはなるだろうけれど、なるべく気にしないようにするから」

 彼が、だから別に相談してくれて大丈夫だよ、と優しく告げた。



「大丈夫。ちがうから!」

 彼女がきっぱり否定した。



「へ?」

「だから、ちがうから」

「あ、そうなの?」

「うんうん。そうだよ。いらん心配です。――元カレって……私、そんなのいないし」

「え、そうなの?」

「そうだよ! てか話したことなかったかな? 真斗くんが初恋で初カレですっ! ――って、ああもう恥ずかしいなあっ! 人の行き交うショッピングセンター通路で私はなにを告白しているんだっ?! ダメっ! 疲れた! あっちのベンチで休憩しよう!」

「え、そこさっき座った場所じゃ――」

「いいから行くの! もおっ」

 彼女が彼を引っ張っていった。




「さっきのメッセージ、女の人からだから!」

 再びソファベンチに腰掛けた彼女が、隣に腰を下ろした彼に告げた。

「まあべつに伝える必要もないだろうと思って真斗くんに言わなかっただけ」

「そうなんだ」

「ええ、そうなんです。――あのヒトには今日、私が『友達』と遊びに行く、お出かけするって、伝えていたはずなのにメッセージ送ってくるから……内容も意味不明だし……だから返信しなくていいや、と思って」

「え、でも、遊びに行くと伝えていたのにメッセージが来たんだろ? それは緊急の連絡なんじゃないか。だれかが危篤だとか、亡くなったとか」

「いいえ。それはないよ。もしも緊急の連絡なら『電話』がくるはずだもん。その方が確実だし。――メッセージアプリで連絡して来てるんだから、そんなに超重要な案件じゃないはずだよ」

「そっか。たしかに」

 彼が納得した。

「ま、だいじょーぶ! そのヒトと私、近々会うはずだから、その時に直接聞くよ。だから今はデートを楽しもうよ」

「……その前に、皆元さん」

「ん? なにかに真斗くん」

「もう一度、さっきのメッセージ、見せてくれないかな」

 やはりそれでも気になる彼が聞いた。



「はあ、うーん。しかたがないないなあ……」

 彼女が渋々とスマホをいじる。

「私としては貴重なデートの時間を謎解きなんぞに浪費されたくないんだけど……」

「僕はいつも貴重な放課後の時間を謎解きに消費させられている身だから、皆元さんにそれ言う権利ねえよ、というツッコミを送ることにする」

 彼女は毛ほども気にせずスマホを操作しながら、はいはい、と相槌を打って、

「はい、どうぞ」スマホを差し出した。

「え、あれ?」

「どしたの?」

「いや皆元さん、さっきプライバシーがあるから勝手に触るなって言っていたから」

 僕に渡しちゃっていいの、と問う。

「うん。思えば私も真斗くんのスマホいじらせてもらったことあるし、アドレス帳に私の番号とか登録したとき。だから私も貸さないと不公平だと思うし。それに――」

「それに?」

「――真斗くんは変なところをいじったりしないって、信用してるから」

 だからはい、とスマホを渡された。

 うん、と返事して彼が受け取る。

 画面を見る。


 先ほどと変わらない。



『4*1122222000

 22222000558888222

 60006666**000


 2444444 4444224444 』



 そんなメッセージが表示されている。

 そして、その上部に――差出人が表示されている。


(オカ)さん?」

「そ」彼女が応えた。「そのヒトからのメッセ。さっき言ったように女の人だからね。勘違いしないように」

「大丈夫だよ。さっき聞いたから」

「それで、どお真斗くん。なにかわかった?」

「うーん……」悩む。

「ま、だよね。もういいよね。また家に帰ったら聞いてみることにするから」

 ヒュボ。

「ん?」彼が困惑。

「へ?」彼女も困惑。

 音と共に――


『222220006*0006111114444*0004*29 』


 ――新たなメッセージが表示された。


 ヒュボ。


『154555552999933444444 4444

 500028776662333331115555

 6660001122 2* 


 4444*7777783 33 333331115222225555

 888222774911222277770004*33』


 さらにまたも新たなメッセージが送信されてきた。

 計3件。



「なにやってんのあのヒトもおおおおぉ!」

 彼女が嘆いた。


「……あー、そっか。……そうかな?」

 彼が他人に聞こえないように呟いた。


 イライラした彼女がグチった。

「ああっもおっ。もう知らん! もういいっ! イミフだし! それよりもデートだデート! これ以上私の幸せな時間は渡さない。さあ真斗くん。デートを再開しよう!」

「わかったけれどかなり大きな声と内容が内容なので他人からの視線が痛いから彼女と他人のフリしたいほどなので自重してほしい件について」

 彼が彼女をとりなした。



















 ――言うべきか、言わざるべきか。


























 お出かけ終了。

 彼女の家の近くまで戻ってきた。

「ふーう。今日は楽しかったよ。真斗くん送ってくれてありがとね」

「いや、こちらこそ。それから皆元さん」

「ん? なに」

「コレ」

 彼が持っていた袋を手渡した。

「え? なにこれ。それ、って途中で買っていた……」

「家に帰ったら開けてみて。きっと必要になるから」

「はい? ――って、重っ」

「それじゃあね」

 彼が帰っていった。


 ――結局、言わなかった。

 なんと言えばいいかもわからなかったから。




















 彼女が帰宅。

「ただいまー」

「おかえりー」

 母の声が聞こえた。そして、こちらに――玄関にやってきた。

「買ってきてくれた?」

「へ? いったいなんのこと、お母さん」

「え、わすれちゃったの……て、なんだ。ちゃんと買ってるじゃないの」

 母の視線。――それは、彼から渡された白い袋で。

 袋を自然と取られる。

「あ。」――いや、それ、ちがっ、真斗くんから貰ったやつで――

 ――いやしかし説明すると彼氏とデートしていたことがバレるし――

 アレコレを考える瞬間に、母が袋の中身をチェック。

「うんうん。そうね大丈夫ね。買って来てくれてありがとう」

「えっ、へ?」

「え、なにどうしたのよ。ちゃんとそろってるわよ?」

 彼女困惑。


 母が不思議そうに袋の中身を見せて言う。

「メールで連絡した『大根』も『こんにゃく』も『ハンペン』もちゃんとあるわよ?」


「あ、うん」ついつい同意。――どういうこと?

「これを鍋に入れて煮れば完成ね」母がのんきに言う。

 脳内混乱。

 あ、今晩はおでんなのかぁ。などという思考を脇に退かせて。

 なんで真斗くんの袋からコレが? という疑問もひとまず封じて。

 この母に問うべきは――

「いや『メール』じゃないから、メッセージアプリはメールじゃないからね。お母さん」

 メールは別で機能があるから、と説明しながら明らかに問う事柄を間違えていた。

「なによ。相手に伝わるのは同じなんだから、いっしょでいいのよ」

 母からすると同じらしい。

 ――ん? メール。あれってまさか!?

 彼女が気づく。

 旧式の携帯電話――ガラケーとも言われるソレでEメールを作成送信する場合、スマートフォンの指をスライドさせて文字を選ぶフリック入力ではなく、対応するボタンを連打して文字を入力するトグル入力が一般だった。

 トグル入力。

 ――それかあ! 

 彼女は母がその入力方式を今でも利用していることを思い出した。

 なんらかの事情で数字入力の設定のままで送信してしまったのだろう。



 4*1122222000

 だ い こ    ん


 22222000558888222

 こ    ん   に ゃ   く


 60006666**000

 はん   ぺ     ん



 なるほど。

 ということは、彼はメッセージを解読できていたのだろう。

 だから大根とこんにゃくとハンペンを用意していた。


 デート中に親から連絡なんて、空気を壊すし、なにか気恥しかったから隠した。

 彼にスマホを渡す前に『お母さん』の表示を『岡さん』に変更したのもそのためだ。

 ――けれど、バレてたんだろうなぁ。安直すぎだし。


 ――そういえば、あとから送られてきた2件もあった。

 そもそも慣れた入力方式だからあれほど早く連続で送信できたのだろう。ミスっていたが……。

 あの2件、なんだったのだろう。あとで解読してみよう。




 彼女が脱力しながら問う。

「てかお母さん、遊びに出かけている先で、おつかいの連絡なんてしてこないでよ……」

「それは悪いとは思ったけど、でもお父さんに見つからないように気を使ってあげたんだから、そこは感謝してほしいわね」

「へ?」

「お父さんに見つかってたら、めんどうだったわよ? だから、私もお父さんに見つからないようにスマホをバッグの中に隠しながらメール打ったんだから。――ふふ。すごいでしょ?」

 自慢げだ。

 ――いやミスってますが? いいや、だからそういうミスだったのか。

 だから文字ではなく数字が送られてきた。


「そもそも食品売り場にいけなかったのも、あなたのせい――いや、あなたのために食品売り場の方にいかなかったんだから、これくらいは買って来てくれないと」

 意味深に母が笑っている。

「ん? え? へ? ってことは、やっぱり、まさか……」

「さてさてと、それじゃ夕食の準備手伝ってね。今日はお父さんが車を出してくれて、ちょっと遠くのショッピングモールで新しい土鍋を買ったから。ほらほら、うちの前に割れちゃったでしょ? だから家でおでんを久々に食べられるわよ」


 やはりか!

 あの場に母と父がいたらしい。

 ――お母さんに見られていたの?!




 おでんがおいしかった。

 が、なんだか味がわからなかった。












はい。


いい手紙 → Eメール

というお話でした。



え? 「おい、通常回じゃねーか!?」ですか。

あ、最終話かと思われましたか?

前回タイトルを回収したし。


いいえ、まだ続きます。ぼちぼち。


まだよろしくお願いします。

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