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アツいところはご用心(epilogue)

長くなりましたので、

うろ覚えの箇所補強のためにも

(prologue)(前編)の再読をオススメします。













 帰り道。

 バレンタインの件について、2人の女子が彼を脅してしゃべらせた。

 彼の話しを聞いた小型少女は、結論を出した。

「なるほど……そういうわけね。――じゃ、結局ミナが真斗に用意したバレンタインチョコは正体不明ってわけね……。あたし達と作ったチョコの内どれだったか、わからないわけね」

「ん?」と彼。

「は?」と女友達。

 その反応を見て低身長女子が、

「え?」

 と困惑を返した。


 彼が当然のように訊く。

「いや、アスカさん。わかっただろ?」

「わかるわけないでしょ!? ミナがアンタに用意したチョコは溶けちゃって、しかもミナ自身が後ろ向いて隠して食べちゃったんでしょ? だからあたしたちと作ったチョコ、そのうちどれが本命だったかなんてわからないわけ」

 それが会話の本題だった。


 彼女が友達と作った6種類のチョコ。

『トリュフチョコ』

『カップケーキ』

『星型ホワイトチョコ』

『チョコチップクッキー』

『チョコクランチ』

『ドーナツ見せかけチョコ』



 当然のように彼の幼馴染女子が言った。

「なあアスカ。今のマコの話にそのチョコ全部出てきて、誰に渡したかも判明したぞ」

「はい? うっそ? 一言もでてなかったわよ?」

「はあ」彼の溜息。「ナオ。わかるように説明してあげたら?」


 説明が始まる。

「まずアスカと作った『大量の星型ホワイトチョコ』だけど、これは大量の『義理チョコ』だ。マコに渡す分にはモフラージュチョコつってたか? クラスメイトに配ったってヤツだな。『餅まき』って言ってたし、このチョコも白いだろ。雰囲気がピッタリ合うだろ?」

「あっ、なるほど。そういうわけね。たしかに……」

 少女納得。


「マコとミーの会話で、ミーのチョコは評判がいいって話があっただろ」

「ええ、『うまいはやいやすい』の件ね。友達だったり、小学生だったり、先生にチョコをあげたて食べたって話してたわね」

「そのときチョコを食べた人たちの反応があった。まず友達――レナとカンナだけど、このとき『サクサク』って擬音を使っていただろ? つまり――」

「あっ、『チョコチップクッキー』」

「ああ、それしか考えられないわけだ。まあ、これはアタシもいっしょに作って、その場でもらったしな。女友達に配った『友チョコ』だったんだろう。チョコじゃねーけど」

「なるほど……」感心している。


「んで、その会話の中で他にも擬音があった。両親にあげたものは『モフモフ』って」

「わかったっ! それは『カップケーキ』なわけね」

「おう。だから『カップケーキ』は『家チョコ』ってつーことだ」

そのまま続けて説明する。

「それと渡す予定つってたけから当時はまだ渡してなかったんだろうけど、懇意にしている小学生に渡すチョコのときは『ボリボリ』――」

「なるほど。『チョコクランチ』ね!」

「ああ、何チョコつったらいいのかわからねーけど、まあ『小学生用チョコ』だ」

「そうね。あっ、そういえばミナが、トラやケンに渡しているのを見たかも。てか、あたしも少し食べさせてもらったんだった。アレそういえばチョコクランチだった」

「アスカ。直に渡したところ見ていたのか、てか食べたのか……それは確実だな」

「おおー、わかってきた。ナオあんたすごいわね!」

「いいや、そうでもねーよ? ――…………。」

 幼馴染が彼に視線を飛ばす。

(なあ、アスカってヘッポコなのか?)

(僕に聞くなよ。わかってるだろ?)

 アイコンタクトで意思疎通。


 そんな様子には気づかず、ポンコツ少女が質問する。

「でもミナが擬音を言っていたのはココまでだし、他のチョコはわからないわけじゃない?」

「そんなことはねーよ。てか擬音から推測するより確実だと思うぞ?」

「どういうわけ? もうヒントもないわけだし……」

「職員室の件も擬音はなかったけど同じだろ?」

「へ? ミナが先生二人のモノマネをしただけでしょ? 女性っぽい先生がおいしかったというのと、ゴリラっぽい先生が興奮してるやつ」

「そーだったな。たぶん担任の上村先生と社会科の恩地先生だろーけど……。マコのモノマネ再現がヘタすぎて断定はできないな」

「ほっといてくれ!」なんだか恥ずい彼が口を挟んだ。「僕はやりたくないって言ったのに、無理やりやらせたんだろ。だいたい先生のモノマネをした皆元さんのモノマネだから、フィルターを2回通しているみたいなもので、似てないのは当然だろうし、それでナオはよく先生を特定できたなスゲぇよ。てか無理やりやらせといて僕にモノマネのクオリティを求めるなよ。――てかいうか! 今それ関係ないよね」

「そだな」幼馴染が同意。「それより大事なのは『粉』って部分だ」

「コナ?――ああ、言ってたわね。アヤシイものじゃないかって。でも『粉』って……――あっ!」

「ああ、気づいたよな。これらのチョコの中で『粉』が使われているモノがある。――ココアパウダーを塗す『トリュフチョコ』だ。これがおそらく『先生用チョコ』だったんだろーぜ」

「あーそっかー」


「んで、ミーがマコの家族に渡したチョコだけど――」

「ええ、真斗の話じゃミナは『ドーナツ』って言ってたわね。あたしたちとは別で作っていたのかしら?」

「ああ、だけどコレは、明らかなフェイクだな。ミーがやりそうだ……。ドーナツと思って食べたら全部チョコだったというドッキリを仕掛けたんだろ。つまり――」

「あーっ! そういうこと」納得。頭を縦に振った。「アレ、『ドーナツ見せかけチョコ』だったわけね! そっかそっか。でも真斗の家族ってそれた」

「さあアスカさんこれでわかっただろ?」

 彼が話を終わらせようと口を開いた。

「ん?」振っていた頭を傾けた。「わかったってどういうわけよ真斗」

「皆元さんが僕に渡そうとしていたチョコのことだよ」

「ああ、なるほどね。それで残ったチョコがアンタに渡そうとしていたチョコで――って、んん?」

 少女がさらに首を傾ける。

「いや! 全部配っちゃったわけだけど?!」




『トリュフチョコ』――先生陣

『カップケーキ』――家族

『大量の星型ホワイトチョコ』――義理クラスメイト

『チョコチップクッキー』――友達

『チョコクランチ』――小学生

『ドーナツ見せかけチョコ』――正志




 少女が手の指で数えて、確認する。

「うん。全6種、コンプしちゃったわよ! もうチョコ残ってないんだけど」少女が思案。「――……いいや、ちがうわね。まさか!」気がつく。

「うん」

 彼が聞く。


「真斗! あんたミナから『う○こ型チョコ』をもらったわけ!!?」


「あ、そっちにいったか」

「…………」その幼馴染はあきれてなにも言えなかった。

「ちょっとミナ、あの子何考えてるわけ? どういうわけ? 愛してる彼氏だったら『う○こ』渡しても喜んでくれるって思ったってこと? それはいくらなんでも……愛がいきすぎているというか……愛がぶっ飛んでいるというか……真斗、アンタほんとに『う○こ』もらったわけ?」

 少女混乱。

「もらってないから!」

 彼、否定。

「はっ! そうだった。ミナが食べちゃったんだった。……ってことは、え、え、じゃあ、ミナが食べたの? ちょっと、ミナが『う○こ』たべ――」

「落ち着けアスカさん! 人聞きが悪いからチョコって言ってくれ! ちゃんとチョコって末尾に付けてくれ! なんかすごい勘違いをされそうな発言が見受けられるから!」

「いやだって、もうそれしか……」動揺している。「ミナ、最低限の常識はある子だと思っていたのに……」

「大丈夫。それ、ちがうから!」

「え?」


「皆元さんが僕に渡そうとしていたのは『メッセージ入りホワイトチョコ』だから!」


「え?」

 聞いてもわからなかった。

「ほら、誕生日ケーキの上に乗っているだろ? おめでとうなどのメッセージが書かれたチョコレート。アレのすこし大きいものを自作して用意したんじゃないかな?」

「え、どういうわけよ? ミナはそんなチョコ作っていなかったわけよ? あたしン家でもナオの家でも」

「ああ。でもヒントはあっただろ?」

 彼が訊ねて確認する。

「ナオ、例の『う○こ型チョコ』作成の話で、ミニチュアみたいな小型のものも作ったって言っていたよね? でもさ、それ普通はチョコで文字を書くための道具、いや材料(?)なんじゃないかな?」

「……ん。ああ、そうだな。チョコペンだな。実際は文字を書いたり絵を描いたりするものだな。チョコで」

「だろ? それでアスカさんの家で作ったチョコレート、大量に作っていくらか余ったって言っていたけど」

「ええ。そうね」

 少女は思い出す。


 ――『星形にくりぬいたホワイトチョコ』あれはめちゃ大量に作ってたわね……。くり抜かなかった素材がだいぶ余ったわけ。


「普通チョコって『形』に入れて成型するよね。それなのに平たい大きなホワイトチョコを準備して、くり抜いて大量生産した。そして素材が余った。――平たいホワイトチョコ」

「ああ、なるほど」

 少女がひらめいた。


「ミナは使わなかった素材。『チョコペン』と『平たい大きめホワイトチョコ』を使ったわけね。これで真斗への『メッセージ入りチョコ』を作ったわけか!」


「うん。そういうことだと思うよ。――皆元さんがチョコの包装を破いて中を確認して、なにかつぶやいていた。おそらくチョコ表面の文面が読み取れるかどうかチェックしていたんだろう。ダメって言ってたから、おそらく溶けてしまって読めなかったんだろうけど……」

「ああ、なるほどねー。そういうわけねー。もー。アレだけ大量の候補があったから、それらの中のどれかだと勝手に思い込んでいたわ。全種類から絞り込んでいけば正解がわかると思っていたけれど、どれも正解じゃなかったわけね。あー、なるほどー」

 少女がスッキリした顔をしていた。



























 その幼馴染は腕を組んで、渋い顔をしていた。

「……うーん」

「ナオ。どうしたのさ」

「いや、ちょっと疑問が生じてきた……」

「ん? 疑問ってなんだよ」

 彼が訊ねる。



「マコ。なんで『ホワイトチョコ』だと断定できるんだ?」



「え?」

「ミーが用意したのは『メッセージ入りホワイトチョコ』。――たしかにミーの性格ならそーゆーの作りそうな気がするし、カレシに渡すチョコを友達と一緒に作るのか、という実はアタシが引っ掛かっていた部分も、ミーが家に帰った後に1人で作ったとすれば納得できる。いい落とし所だと思う」

「……ああ」

 なんだか、嫌な予感がする彼。

「あっ、そーね。たしかにカレシに渡すチョコ、そういうメッセージ入りチョコなら1人で作りたいわね」

 のんきに聞いている少女。

「ああ。――それなのにマコ。なんで『ホワイトチョコ』って特定したんだ?」

「え、だって、素材が余ったって聞いていたし……」あせる。

「たしかに材料は余った。――けど、それで作るとは限らねーだろ?」

「…………」

「さっきも言ったが、家に帰って1人で作ったものだ。素材が余ったというのは、たしかに関係あるかもしれねーけど『確定』じゃない。普通の『黒いミルクチョコ』に『白いチョコペン』でメッセージを書いたチョコという可能性もありえるだろ?」

「………………」

「マコ、お前はミーからのバレンタインチョコを見ていない」

「……………………」

「ちなみにその時、家に2人きりだったんだよな?」

「………………………………」

「なんで『ホワイトチョコ』だと言ったんだ?」

 その女はニヤリと笑んだ。








































 彼女がハムスターのようになってモゴモゴした。

「ふぁい! ほれれふぁふぁふぃふぉほほほふんほほははふぃはふぇーふぃんはひふぇはっはひはふはひはひは!」

「ちょっ! 皆元さん。全部食べちゃったのかよ!」

「もひほんはほ! まほほふんひふはふふぉふぉははひ!」

 もちろんだよ! 真斗くんに食わすチョコはない!

 とそう言っているらしいが――

「ちょっとその言葉はわからない!」

「んん。」――うん。と言ったらしい。

「…………」

 もぐもぐ。

「…………」

 もぐもぐもぐ。

「…………」

 もぐもぐもぐもぐ。

「…………」

 もぐもぐもぐもぐもぐ。

「…………」

 もぐもぐもぐもぐもぐもぐ。

「…………」

 もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ。


 沈黙。ただ彼女の咀嚼の音だけが聞こえる。


「あのさ……でもさ――」

「も?」――ん?

「皆元さんのチョコが溶けた件。僕、悪くないよな?」

「む、むむ」――ん、うん。

「チョコを仕込んだ皆元さんの落ち度だ。それに僕の鞄を許可なく開けたりして――」

「…………」咀嚼が止まる。

 彼が彼女に近寄っていく。

 その彼の顔は、ちょっと怒りを含んでいるようだ。


「これ、僕も怒っていい場面だよな?」


 手が伸びる。

「むん?」――なに?

「僕も皆元さんに怒っている。罰を受けてもらう」

 彼女の顔を両手で捕まえる。固定する。

 優しく。でも離さないように。

 逃さないように。

「だから文句は聞かない」


 彼女の顔に、彼の顔が――

 唇が唇に――

 近付き。


 そして――





























「――とか、まあ、そういうことが考えられる」

 幼馴染女子が邪推を披露した。


 小型少女が動揺している。

「ちょっちょっちょっと! まっ、真斗っ! あっ、あんたそんなハレンチな! 自分の家に無理やり連れ込んでそんな……入れるなんて!」

「アスカさん人聞きが悪い! 連れ込んだわけじゃない! 『入れろ』言ったのは皆元さんだろ?!」

「えっ、ちがうわよ。ミナはハムスターになってたわけだから、舌を入れろなんて言って――」

「ごめん! 僕が言葉足らずだった! 『家に入れろ』と言ったのは皆元さんの方だから! 僕が無理やり連れ込んだわけじゃない、ということを主張したかったんだ」

「で、でもアンタ、挿入したわけでしょ!? それも無理やりに?!」

「なんで『挿入』とか『無理やり』とかピンポイントにヤバそうな言葉チョイスしてくるのかなこのヒト?!」

「でも間違っていないわけでしょ?! あんたミナに入れたわけでしょ? 舌を!!」

「いや、そんな……ことは、ないよ」


「じゃあ、なんでホワイトチョコって知ってたわけよ!」


「…………いや、それは」

 言い淀む彼。

 少女が叫ぶ!

「ほらやっぱりそういうわけじゃないのよぉおおお!!」




 幼馴染がニヤニヤと笑っている。

「まったく、お熱いことだなぁ。ふう。あついあつい」

「いやいや、ナオ……なんてこと言ってくれたんだよ……」

「ちなみに、ミーのチョコは溶けていたから、箱の中にチョコの痕跡が残っていて、それを舐めた。とか、言い訳できるが……。――ああ、それはそれで情けねえもんな。そっちでも言えねーか」

「…………」彼が何とも言えぬ顔をした。

「はは」楽しそうに笑う。「んで、ホントにしたのか?」

 

「はあ」

 彼は溜息をついて。


「ご想像にお任せするよ……」














4話構成の長い話にお付き合いいただき

お疲れさまです。ありがとうございました。


そんな訳ですべての謎が解き明かされてスッキリですね。よかったです。


え、彼女のメッセージの内容ですか?

……。

…………。

いや、どうなんでしょうね。

いつかわかるといいですよね!(ブン投げ)


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