9.三神
無言で森を歩いていくエテールに着いていくとあることに気付いた。
風の音以外に音も気配もまるでないのだ。
恐らく先導しているエテールが何やらしているようで魔物が一つも顔を出せないのであろう。
『メティス。一つ聞きたいことがある。暗黒魔術師とは何なのだ?』
我は念話でメティスへと問いかけた。
『暗黒魔術師とは主に呪術や闇魔法、状態異常魔法などに特化した黒魔術師の上位職です。かなり稀有な存在ですので恐らくこの世界には2.3人いるかどうかといったところです』
『なるほど…にしても黒魔術師とは…あの勇者の関係者にしては似つかわしくないな。あ、それとついでと言ってはなんだが…お前たちの能力について知っておきたいのだが…』
『わかりました。では我々三神の能力について解説いたします。』
メティスの解説をまとめると
-メティス-
この世界の死後の魂の記憶から様々な知識を蓄えており
小さな手がかりからでも本質を見極める力を有している。
さらに魂の記憶による演算を得意としており、
可能性を示唆してくれるアドバイザーの役割をも持つ。
三神の中でも一番力を多く与えられており
耐えず、神の世界≪神界>より魔力が供給されているらしく、ほぼ無尽蔵のエネルギーを持つ。
スキル≪アリス≫の主人格である。
-タナトス-
生死のエキスパートであり、瞬時に死を回避することに長けている。彼女?がいる限り
死ぬことはないと太鼓判を押されている。
言語能力、主に会話術は一級品でどんな生物でも籠絡、交渉が可能なほどであるらしい。
そのため、タナトスが発声部分の主導権を行使できる仕様になっている。
主人の許可があれば他の部位も操作可能であるらしいが
メティス曰く、性格に難があるということで
おすすめはしないらしい…
『…と言うような感じでよろしいでしょうか?』
『おい。アレスって奴もいるんじゃないのか?』
『…恐らく、お使いになられることはないと思いますので』
消え入りそうな声でメティスは言った。
『そうか。もし必要になったら教えてくれ』
『はい。わかりました』
『質問ばかりですまないが、お前達も神という存在なのか?』
『いえ、我々はアリス様に作られた神もどき…造神というものです。異世界の神の名前になぞらえた作り物となります。実態は持ちません。今はまだ…』
『ん?それは…どういう…』
「着きましたよ」
エテールがにこやかに微笑み、小屋の前で足を止めていた。
「まずは着替えを用意しますので。それから話を聞かせてください」
にこやかに微笑んだままエテールは話す。
「話…か?」
「ええ。転生やら前世やら興味のあることばかりですので…」
我は絶句した。
エテールの笑みがとてつもなく邪悪に感じたのだ。
『…緊急事態…ですね』




