7.青少年イヴ
体が熱い。きっと以前の我ならば、どうってことのない温度なのであろうが、
今の体ではティアマットの業火に包まれたように感じる。
『イヴ様。そろそろ17.8歳くらいになります。人間では成熟した年齢ですが、終了しますか?』
「ああ…頼む」
ゆっくりと体の熱が引いていき、目の前を包む光が弱まっていった。
森の風に心地良さを感じるころ我は目を開いた。
「おお…違う世界のようだ…巨木に見えた木々もそんなことは無かったのだな」
全身を見渡してみると、身長は180cmを少し超え、銀色の髪は腰のあたりまで伸びていた。
『成長段階にて、より戦闘向き、尚且つ繁殖にも役立つよう調整しましたが、お気に召しましたか?』
「…正直、人間のことは良くわからぬ。だが、尽力してくれたのであれば、感謝しよう」
『ありがとうございます。…少し忠告がございます。よろしいでしょうか?』
「ん?ああ…よい。申してみよ」
『恐れながら申し上げますが、イヴ様は人間として暮らしていかなければなりません。人間らしい振る舞いをしなければきっと長くは生きられないでしょう』
「人間らしい振る舞い…だと?どうすればよいのだ」
『まず…一人称を俺、もしくは僕にするべきです。外見的要素から鑑みるに俺の方が適正でしょう。さらに言うなればもう少し砕けた話し方になさってください』
砕けた話し方…
勇者一行のような話し方ということか?
「わかった。努力してみる。すまないが至らないところはメティス、君に任せる」
『もちろんです』
メティスの声が少し高めに感じた。
どうやらうまくいったようだ。
ガサガサ!!!
背後から物音を感じ、即座に振り向いた。
「グオオオオオ!!」
眼前には大型のモンスターが立っていた。
『個体名:フォルミーツと認識。ステータス表示しますか?』
「頼む」
【ステータスを表示します】
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個体名:フォルミーツ
種族:蜘蛛族
L v:27/45
HP:269/269
MP:48/48
攻撃力:104
防御力:89
素早さ:340
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『続いてイヴ様の現在のステータスも表示します』
【ステータスを表示します】
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名前『イヴ』
個体名:人間
L v:1/70
HP:1204/1204
MP:421/421
攻撃力:715
防御力:443
素早さ:259
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「かなりのパワーアップじゃないか」
『経験値増加のスキルの内に増加値補正が含まれますのでそのせいかと。ちなみにイヴ様の勝てる確率は97%です。』
「そうか…せっかくだし、スキルの実験台にしてやるぜ」
イヴが身構えた瞬間だった。
ドォォン!ピシャアン!
目の前フォルミーツにめがけて黒い雷が降り注いだ。




