6.イヴとアンの力
チュンチュン…
小鳥の囀りが耳を擽る。
『そろそろ起きてください』
頭の中で直接響くような声で我は目覚めた。
「…誰だ?」
辺りを見渡したが人影はなく、ただ数多の巨大な樹木が生い茂っていた。
「…気のせいか」
『いえ、気のせいではありません』
また声がした。
我は瞬時に立ち上がり警戒を強める。
『私はあなたの中にいます。アン様の力の一部です』
と無機質な声が響く。
「なるほど…話し相手と言ったところか?」
『いえ、そうではありません。私は簡略的に言えば辞書です。様々な魂の記憶からこの世界の知識を蓄えています。アン様は私をメティスと呼んでおります』
「それは助かるな…」
我は強張っていた体を解放した。
すると、違和感を感じた。
体が妙に軽い…不思議に思い体を見た。
前の姿の名残なのか浅黒い柔肌。
小さな手に小さな足。
まさに赤ん坊という姿がそこにあった。
「これが…人間か」
『見た目年齢、2歳の人間といったところですね。今、魔物に襲われれば死ぬ確率は100%です』
「な…100%だと!?間違い無いのか?」
『はい。10000通り以上の演算を行いましたが100%死にます。ステータスをご覧になりますか?』
「ああ…頼む」
『ではステータスを表示します』
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名前『イヴ』
個体名:人間
職業:なし
L v:1/5
HP:4/4
MP:0/0
攻撃力:1
防御力:1
素早さ:3
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「…は?」
開いた口が塞がらなかった。
「これが…これが我のステータスなのか?」
『はい。間違いなくあなたのステータスです』
我は飲み込めず、もう一度開こうとした。
『警告です。MPのない状態でステータスを閲覧することは自殺と同じです。私を通して頂ければMP消費もなく見ることができますので聞いてください』
「本当に生きにくいのだな…人間は」
『その通りです。続いてスキルの閲覧はいたしますか?』
「スキル…だと?何だそれは」
『…簡単に言うと技みたいなものです。回復させたり、魔法が出たりという感じです元来、人間は持って生まれることはありませんがアン様の力により多くのスキルをお待ちです』
「なるほど…是非とも知りたいな」
『かしこまりました。それではスキルを表示します』
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肉体強化
経験値増加
習得容易化
耐性強化
アン
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『このような項目がありますが、全て開きますか?』
「いや、とりあえずアンとは何だ?」
『私を含む3つの能力です。メティス、アレス、タナトス。それぞれ役割があります。しかし、まだ私以外は出て来ることは無いため気に留めずとも良いでしょう。』
「そうか…では、肉体強化と言うのはどういったものだ?」
『肉体強化の項目を全て開きます』
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聴覚強化
触覚強化
視覚強化
脚力強化
腕力強化
肌硬質化
骨硬質化
言語即時理解
身体成長
保護色変化
……
……
……
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凄まじい量の情報が頭の中を行き来する。
「少し待ってくれ!こんなの全部覚えれるわけがないだろう。あと、身体成長ってスキルあったな。あれは何だ?」
『身体成長とはその名の通り身体を強制的に年齢を重ねさせるといった能力です。手っ取り早く成熟できますが寿命をそのまま縮めるためデメリットもある力です』
「すぐ使いたいのだが…MPは必要なのか?」
『いえ、MP消費はございません。スキル身体成長を使用しますか?』
「ああ。頼む」
自分の中から極彩色の光が出てきて
小さな全身を包み込んで行った…




