11.おもり開始
「イヴさーん早く早く!置いてっちゃうよ!」
シエロはイヴを置き去りに走り出す。
「…ったく、どうしてこんなことを…」
なぜこんな状況になっているかというと、およそ1日前…
エテールに手を引かれ強引に家に入れられた我は、まず服を着させられた。
それからこの世界の動向について聞かされた。
魔王イヴァンがいなくなって5年の現在、人間の領地が3割ほど減ったらしい。
メティスからの補足を交えると、まず最初にこの世界は名前をディオストリアという。
魔界、地上界、神界の3つの世界からなりそれぞれ接してはいるものの干渉はもともと薄かったそうだ。
それが何らかの理由で神界の王が地上界、魔界との接点を断ち切ったらしく、今存在しているのは地上界と魔界の2つといってもいい。
神界はそれこそ死んだ時、神と呼ばれる者に召喚された時などしか、行くことは不可能とされている。
アンがいる場所も神界の一部なのだろう。
そして、神界という抑止力がなくなった魔界の住人達は、地上界を乗っ取ろうとし始めた。
と言い伝えられているが、地上界の有権者どもも魔界の土地などを乗っ取ろうと侵攻をしていたのも真実である。それもあって均衡が続いている状態らしい。
しかし、現魔王ゴルゴンは元々、軍師な上に好戦的でなおかつ人間を見下している。
イヴァンがいなくなり、邪魔するものも無く悠々と侵攻しているのだろう。
そして次に、魔王軍というものが現れ四将軍というアンデッドが率いているという。
ゴルゴンは死霊魔法、精神魔法を得意としていた。
死体は全てゴルゴンの魔法でゾンビやリッチ
ホロゴーストなどの魔物に変えられるそうだ。
…魔物が増加するわけだ。
と、ひとしきりエテールの説明が終わり、次に依頼を申しつけられた。
「娘の護衛をお願いしたいのです」
ソラとエテールには娘がいるようだ。
名前をシエロといい、この名前もソラの口から聞いたことがあった。
15歳の少女で、勇者の娘として、魔物から狙われているらしい。
普通なら断るところではあった。
ゴルゴンのこともあり、魔王より1つ前の前世のことも調べたいことがあったため急いで向かいたかった。
しかし、今ここに存在し、明確な目的があるのも
ソラやエテールの計らいによることも大きい。
「…わかった」
了承する選択肢しかなかった。
「イヴさん遅いよぉ〜」
「わかったからもう少し危機感を持て!お前は魔物に狙われているんだ」
エテールの話を了承した後、わりとすぐにシエロが狩りから戻ってきたのだが、こんなにわんぱくと思っていなかった…
家の扉を開けた時、ソラが現れたかと思うほど面影があった。
物静かそうな顔をして金色に輝く髪が印象的だった。
しっかりエテールの血も継いでいるようで、背も160ほどあり、女性的な体つきをしていた。
見た目だけでは15とは思わないだろう。
「え?お母さん…浮気?」
しかし、一言目の言葉で幻想は消え去り、ただただ元気でわんぱくな少女が現れただけだった。
結局、首都キャプテラまでの護衛ということで話はついたのだが、キャプテラまでは歩いて1ヶ月ほど。
最低限のアイテムは譲ってもらったが、なかなか前途多難な旅になる予感がしていた…




