4話 竜達の長
「俺……死んだか?」
そう思わせるほど、竜の大群のインパクトは凄まじい。
少しばかりだが、見ることの出来た青空は今じゃほとんど見えなくなってしまった。
しかし、何故かそこに「怖い」という感情が生まれる事は無かった。
俺は竜の大群に右手を向ける。
「ヘルファイア!!」
俺は魔法を発動させた。
魔方陣が組み込まれ、凄まじい勢いで漆黒の炎が噴射される。
しかし、燃え尽きて絶命するのは、ほんの一部でまだ20体前後は残っているだろう。
竜達までの距離が遠すぎて炎が当たらないのだ。
「ウギャーーー!!」
俺が「ヘルファイア」を放った事により、竜たちを触発させてしまった様だ。
竜達は空中に留まると同時に一斉に口を開く。
ヤバいっ!なんかくる!!
殺気を感じ、対応しようとするがそれはもう遅かった。
既に竜達は「ブレス」の準備が整っていたらしい。
約20発の炎の弾が発射された。
「いやいや、ちょっと待って待ってヤバイってーーーうああああああああっ!!」
俺は全ての炎の弾を食らってしまった。
熱いっ熱いっ熱いっ?
え?
熱くない。
竜達は舞い上がる炎の中を勝利を確信した眼差しで眺めていた。
突如現れ、子供や仲間を殺した男。
黒い炎を操り、棲みかを荒らした男。
この男のせいで、竜達の怒りは最高潮に達していた。
そして、この竜達の長はその男を敵と判断し過剰とも言える攻撃を仕掛けた。
それが20体余りの竜達が同時に放つブレスだ。
そのブレスは、彼の勇者をも苦しめる威力を秘めている。
それが20発だ。
竜達の長はしばらく炎を見ていたが、それを無意味と判断し、撤退するように仲間の竜達に呼び掛けた。
そのときだった。
総勢20体の竜達の上に表れた巨大な魔方陣から、地獄の鉄槌が降ってきたのは。
竜達の長は思い出した。
千年前、魔王がここを襲った時に発動した魔法。
地獄の様な灼熱の炎を纏い家族をも殺した、伝説の魔法。
それが今、自分たちの上に存在しているのだと言うことを。
竜達の長は咄嗟に咆哮をあげた。
しかし、それはもう遅く、仲間達は既に地獄の炎に飲み込まれてしまった後だった。
竜達の長は自分の死を感じ取り行動に移す。
どうせ死ぬなら仲間達を殺した元凶とも言える男を道連れにしようと。
行動に移ってからは速かった。
竜達の長は炎の中にたたずんでいる男を見つけると、一直線に飛び込んだ。
仲間の敵、そして、最後の悪掻き。
男との距離約10m。
その時だった。
男の手に禍禍しい黒い剣が出現したのは。
竜達の長は感じ取った。
これは魔王なんてレベルじゃない。
まるで…………
竜達の長はその思考を最後に「ヘルソード」により絶命した。
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