3話 水竜ちゃん
竜の谷底は少し肌寒く、上を見上げると遥か上の方に青空を見ることが出来た。
しかし、不思議なことに辺りは真っ暗ではなく、ちゃんと谷底の様子を伺うことが出来た。
「ふう~ちょっと寒いな」
少し肌寒いが我慢出来ないほどではない。
早くドラゴンを倒して経験値が欲しい所ではあるが……
……勢いで来てしまったがドラゴンはこの世界では雑魚キャラって事でいいのか?
まあ、「賢者眼」が始めに教えてくれたモンスターだしな。
「じゃあ、ドラゴンを探すかぁ~」
俺は谷底を見回しドラゴンを探す。
岩の後ろや洞窟の中。
しかし一向にドラゴンは見つからない。
「はぁ~何なんだよ、なんもいないじゃん」
賢者眼はデマを教えてるのか?
もう一時間位探してるのになんもいないじゃん。
帰ろうかな……
コツンっ
あれ?誰かに背中を叩かれた気が……
コツンっ
まただ!
もしかして、ドラゴンか?
ふっふっふ、ついにドラゴンと対面か~。
俺はゆっくり後ろを振り返る。
「ピぎゃああー」
「!!!?」
小さ!
これがドラゴンなのか?
表面は水色っぽくて、全長30cmって所じゃないか?
俺は今も俺の頭を噛んでくるドラゴン?に「賢者眼」を集中する。
ほうほう。水竜の子供か……
こいつを殺すのは心が痛むが……
「ぴぎゃああーーー」
「ごめんね、俺の経験値になってくれ!」
俺は賢者眼を集中する。
へぇ~闇魔法の「ヘルファイア」ってやつを使えるのか。
あとは、「ヘルメテオ」と「ヘルソード」か……
これが魔法ランク【S】か……
ランクの事はちょっとよく分からないが、魔法の名前を叫べば使えるらしい。
さて、殺るか
「ぴぎゃああーーー、ぴぎゃああーーー」
相変わらず水流の子供は俺に噛みついて来る。
全然痛く無いけどな(笑)
俺は右手を水竜に向けて叫ぶ。
「ヘルファイア」
すると、俺の右手から魔方陣が浮かび上がり、漆黒の炎が水竜を飲み込んだ。
一瞬の内に谷底内の温度が急上昇する。
周囲の岩々を巻き込み溶かしていく。
「っ!これはヤバいやつやっ」
止まれ、止まれ、止まれ!!
やがて炎が止まり辺りに静寂が訪れる。
「えっ?何なんだこれは……」
俺の目の前に広がるのは、赤く燃える谷底。
狭かった谷底は炎に溶かされて原形を留めていない。
そして、その上空には30体以上のドラゴンが俺に殺意を放ってたたずんでいた。
あっ俺、死んだな
死にません