おかしな出会い
学校からの帰り道、オレンジ色とも言えるような色の夕日が、家の壁や道を照らしている。夏に近づくにつれて日が長くなり、それとともに昼間のように周りが明るい。
俺は日差しに背を向けて帰路についていた。
「にゃぁ〜、にゃぁ〜」
「ん?猫なんてこの辺りじゃ珍しいな、どこかにいるのか?」
鳴き声のする方向に向かってみると、前方にある電柱の陰から聞こえる。俺はまるで小さい子のように、興味津々に足早で近づいて行った。
そこには、今時珍しいのかはわからないが、ダンボールに入ったおそらく捨てられたであろう猫がいた。
「これでも食べて元気出せよ」
俺は微笑みながらその一匹の猫に手に持っていた、たい焼きを一つやった。
猫に食べ物をあげるなんて、何年ぶりだろうか…幼少期の頃にノラ猫にあげたのが最後だっけか。
なんて思いながら猫を見ていると、こちらを猫がじっと見ている。
「ん?なんだ?もっとほしいのか?」
俺はまた微笑みながらもう一つたい焼きをあげようとすると、
「ほんと!?やったー!!」
「え………
ね、猫が喋ったーーー!!」
「ひゃっ?!な、なに急に大声出してんのよ!びっくりしたじゃない!」
「いやいやいや!だって…ええ?!おまっ…しゃべれるのかよ!?」
「しゃべられるわよ?にしても驚きすぎじゃない?」
そりゃあ驚くだろ。猫が喋れるなんて思わないし、それにまず、喋れるのがおかしい。
これって世紀の大発見じゃないか?!
いや、待てよ。体のどこかにスピーカーでもついてるんじゃないか?
そう思い、俺は猫の体をまさぐり始めた。
「ははは!ひゃひゃひゃひゃ!ちょ…!くすぐったいわよ!」
猫がおもいっきり笑っているが、そんなことは気にせず夢中でまさぐった。
だが、スピーカーらしきものも、なにもでてこなかった。
猫からなにもでてこなかったとわかった瞬間、なぜか素に戻った。
我ながら変態だと思う。
「なに急にこそばしてるのよ、笑い死ぬかと思ったじゃない」
「そうか」
「なんでいきなりそんな冷静になったのよ?!」
「いやぁ、なんか落ち着いた」
「は?」
「それだけ。んじゃ、俺帰るんで」
「ちょっと待ちなさいよ!ちょっと…!」
俺は猫の言うことを無視して歩きはじめたーーー
ーーーさて、寝るか。
俺は眠りについた。だが、しばらくすると、なんだか体が重い…これは、まさか人生初の金縛りか!?おお〜これか〜何事も経験だ。
とりあえず起きれるかやってみるか。
そして目を開くと、誰かいるのがわかった。
だんだんとさらに目が覚めてきたので、改めて誰か見ると…
体の上に美女が乗っかっている!!しかも、俺の体に…!
「って、おい、美川。なにやってんだ」
「暇だからきちゃった☆」
「暇だからきちゃった☆じゃないんだよ!?なにラブラブカップルの彼女みたいな言い方してんだよ!てか戻って寝ろよ!あと、よく入ってこれたな!」
「窓から窓に飛び移っただけ〜かんたん〜」
「お前は忍者かよ…んなことより、寝させろ」
「しかたないなぁ〜、戻るよ〜」
「はい!おやすみ!」
そう言って俺は窓にしっかりと鍵をかけて寝た。
だが、その翌日にあんなことが起ころうとは思いもしなかったーーー