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第九十五話・オバン・前編

 差しさわりがありますので一部を脚色しています。



 時折私は実父の人生を思います。彼は鬼籍に入る十数年前から脳梗塞による口角麻痺がありましたが、もともと寡黙な人でした。体調がつらくとも愚痴一つ言いませんでした。ましてや父の継母、つまり祖父の後妻に対しても恨み事も何も言わずに逝ってしまいました。私が聞いても忘れたとだけ言って。

 徹頭徹尾、黙って亡くなりました。

 父はどこまで不運だったのだろうと思います。

 私は父の存命中から不審だったことを調査した結果を、供養を兼ねて今からこの話を書きます。


 私は両親が揃った家庭で養育されました。で、親戚がいます。冠婚葬祭でしか会わぬ親戚……。母方の親戚とはしょっちゅう会いますが、父方とはまったく縁がありませんでした。交流もありません。幼いころからそういう状態でしたが、その理由を教えられていないので、おかしいとも思いませんでした。

 しかし父方の祖父が事故で死去した時には成人したばかり。私は祖父の葬式に出席して、初めてその異様さに気づきました。自宅で葬式を出したのですが、知名度は一部にある人なので会葬者は数千人。出立時は道を埋め尽くす勢いでした。

 ところが。葬式の親族席にいる私の父とその子供である私に対して、親戚の一部が軽蔑の視線をよこしてくるのです。私は理由がわからず、どうしたのだろうと思っていました。特に私よりもずっと年下に見える従妹たち……私に敵意と軽蔑が混ざった視線を向けてきます。思い当たりが全くなく、傷つきました。

 これから家系に纏わる恥部を書くことになりますが、私は書くことで癒されたいのです。これは私の実父が受けた話と重なります。結論から先に書くと私の父は父の継母による被虐待児童でした。

 父の人生は、理由なく生きる尊厳そのものを奪われた人生でもありました。これには本物の悪人が登場します。犯人は父の義母、祖父の後妻です。父から見て継母。この人は実父の人生のみならず、実父の生まれ育った家と家柄、尊厳もすべてを壊しました。


 その人を後妻として入れたのは祖父です。社会的な地位は高い人でしたが私から見れば諸悪の根源です。祖父がその人を後妻に迎えたのです。祖父にとって先妻にあたる私の祖母は、父たちを出産したのはよいが出産時のトラブルから寝たきりになりました。祖父はまだその先妻がまだ産褥期にあるのに、その女と交際して家事手伝いと称して家に入れました。その女は当時ではまだ珍しかった外国籍です。わざわざ書いたのは国籍を貶めるためではなく、その女には祖父に飽きられたり捨てられると後がないという特殊な状況であったことをわかってほしいからです。祖父は一人息子で祖父の父親(私から見れば曽祖父)は存命でしたが、母親は若くして亡くなっていました。女を引き入れるのは祖父の意思で実現しました。女はこの家に首尾よく入れてもらったからには、絶対に出まいと決心したでしょう。

 女の写真が残っています。外見は大変美しい。先妻であった祖母よりもずっと美人です。その女は某有名公園で花売り娘としてお商売していました。祖父が一目ぼれをし、神社の社務所に住まわせていました。つまり最初はおてかけさん……女も祖父がすでに妻帯者であったのを承知でつきあっていたわけです。先妻が寝たきりになったから子供の世話係が必要だという理由で家に引き入れた……床に就いたままの先妻の怒りや嘆きはどんなだったでしょう。親戚同士の結婚だったので、周囲から諫めや忠告はかなりあったようですが祖父は一切聞く耳を持ちませんでした。祖父は害虫、寄生虫を入れて家を壊したのです。その女の手段はかなり陰湿でした。ただ曽祖父が存命中は、おとなしく従順であったそうですが、彼の死後から本性を現しました。女には相談相手がおり、しょっちゅう淀屋橋や北浜に行っていたそうです。相手は弁護士です。

 その人はアルファベット明記にせず「オバン」 とつけておきます。祖父の葬式で私に向かって明らかな軽蔑の視線をよこしてきた例の従妹は、そのオバンから見ると実の孫にあたります。言い換えれば父の義弟の娘です。


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 話は昭和ヒトケタ時代にさかのぼります。先ほど書いた先妻、父の実母、私から見れば祖母は、二十六才の若さで亡くなりました。当時父三才。叔母ゼロ才。父の人生の最初の記憶が母親の葬式の黒と白の幕だったそうです。父は実際我慢の多い人生だったと思います。

 そして、ここからがずっと私に続く迷惑話の発端です。大げさな言い方かもしれませんが、私はこの話を読んでくださる方にマジで感謝します。アマチュアの無名でも発表できるネット小説バンザイです。



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