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第九十四話・時間と精神、精神医療の話


  時間の使い方も人それぞれ。お金持ちで趣味に邁進できる人は幸せな人だと思いますが、最近そうでもないなあと思うようになってきました。

 人間が一生「幸福感だけを感じて」 生きていけるかというと、それは無理。人間の感情に基本の喜怒哀楽システムが備わっている以上、人間同士のコミュニケーション上、全員が全員幸福感のみ感じて生きるのは絶対に無理。このあたり宗教的な指導者はわかっていると思う。信じる者は救われるという言葉は本物です……誰かに奉仕して喜んでもらえるという感情も本物の幸せだと感じます。そういうことをずっとやり遂げられるのは幸せですが、わが国で人間はお金がある程度ないと幸せになれないのもまた事実。そのために働かねばならないのが大半です。

 成功者インタビューで「好きなことしかしてない」 という人がいますが、私自身はそういう発言は逆に人間を下げると思います。誰かの支えや協力者なしでは社会的な成功はありえない。気づかないこともまた愚かです。でも気づかせない方が芸術的にいいと思う場合もある。もしくは他者の感情に配慮が欠落している人間がその他者を感動させる芸術的素養が豊富にあるのもまた事実。人生不平等、運次第、心理パラドックスの連続です。

 周囲の人とのある程度の関わりができてあたり前ですが、できなくても大丈夫。しかし家族や周囲を困らせる場合は、それは病的という。家族に金銭的や心理的余裕がある場合はそのままでいけるときもあるかとは思いますが一生ずっとこのままというのは稀なケースだと思う。今回は時間と精神医療の話です。


忘られぬ悲しい体験、怒りの感情、憤りはある程度、時間が解決してくれます。その時の憤激を反芻して涙を流すこと、肉体的もしくは心理的に惨いことをされた相手に怨念や殺意が再度湧き上がったとしても。時間はある程度は風化してくれる。これは日常生活の積み重ねと、繰り返しがそのまま薬になるといっても過言ではありません。誰しもが持つ時間もまた時間への価値観はそれぞれですが、時間そのものに悪意はありません。時間は偉大です。

しかし、心の深層にまで当時の怒りや嘆きが侵食されていると、フラッシュバックしてしまう。パニックになって日常的な動作ができなくなる。こういう時は時間という薬は役に立ちません。逆に時間がたつほどに許せなくなることもあります。

 そういう場合は精神科や心療内科に受診して適切な治療を受けるべきです。しかし精神科、精神疾患、心療内科の通院は未だ根深い世間の偏見があり、受診に躊躇される患者やご家族がいます。私は医療重視者のすみっコぐらしなのでそういった人々の心理に触れる機会はあります。

 所詮他人の思考と他人の人生。

 世間体第一、他人の目を意識するのも、その人の自由です。また偏見を持たれる側に落ちたくないという思考、気持ちは分からぬでもない。が、受診をすること、させることに迷いがある状況ならば、これも縁のもの。一度限りの人生なので何が大切かを見極めてほしいと思うのです。つまり、迷うなら受診をしましょうってことです。今回の話はそれが書きたくて……というわけです。


 精神科医にも相性があり、ぴんきりであるのは認めますが、それもまた縁のうち。何も行動を起こさぬよりはよいかと思います。

 薬物が処方される場合もありますが薬に頼るのも悪いことではありません。日常的な思考に問題があった場合は作業療法、行動、音楽などいろいろなやり方でアプローチして矯正を図ることもあります。現在営まれている日常生活が個々にとってベストとは限らない、治療も場合によっては善しあしだが、早期にすべきだというのが私の考えです。同時並行で時間という漠然とした存在の偉大さを書いてみようというのが今回の壮大なテーマです。

再度繰り返します。時間が癒してくれるものはいろいろあります。時間が癒してくれない、時間がたつほどに苦しさが増すのは病気です。その場合は通院して治療を受けましょう。そういう一部の人のために、この文面で謝罪しておきます。言い切ってごめんなさい。どうぞ許してください。


 今回は受診を迷われている人のために書いたつもりです。今回の話を面白くないと思われたらなんと幸せな人だと私は羨みます。ピンポイントで届くだろう少数の人に向けて書きました。ええ、少数です。それでよい。

 私は精神医療に興味があり実際に身を置いています。精神科の外来通院者は薬手帳所持拒否者、通院自体を隠している人が多いのでもうちょっと風通しをよくしたいと思って書きました。

 こんな話は関係ないと思われた幸せな人々には、ここまで読んでくださってありがとうと感謝します。



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