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第九十話・コミュニケーション障害に特化した話


 先に健康の定義を書いてみます。世界保健機関憲章に全幅の信頼を於いて書き写してみます。以下のとおりです。


 ……健康とは身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態であり、たんに病気あるいは虚弱でないことではない……


 今回はそのうちの精神的なことについての話です。非常にデリケートな話題です。どなたかのお怒りを買って炎上する可能性もあります。が、私は書きたいことしか書けないデリカシーのない女。覚悟の上です。また変なことを書いて、と思って読んでください。


 私は成人後一貫して医療従事者の末端として働いています。病気と健康のはざまって何だろう。命ってなんだろうと思いながら。精神科単科の病院に勤務するようになってからそれをもっと意識するようになりました。おまけに親戚にも精神疾患、AD/HD患者がいる。いわゆる禁治産者もいる。だからこういう話を思考する機会は人さまよりはあると思います。つまり内外ともに接して精神疾患とは何かを愚考する機会は十分にあります。もちろん大っぴらにいうことではない。匿名かつ無名だからこそ書ける話でもあります。というわけで今回もGOです。炎上させてやりたい人は手ぐすね引いておられるかもと恐れつつもGOです。もちろん人さまを悲しませる意図はないので、重々推敲はしておりますが、不適切だと思われる個所がありましたらご指摘いただけますとありがたいです。


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 病気は誰しも不快なものです。先天的といって生まれつき病気、後天的といって生まれてからの病気あり、不測の事故あり、どの人もいろいろな経験や大変な思いをしていずれ死に至る。どういう死に方をするかは人間は自殺以外には戦争や自然災害も含めて厳密には誰も決められない。お互いがお互いを尊重するがこのうち意思が通じ合えないと思われるものには恐れと共に侮蔑を感じる傾向があります。特に精神疾患に対して。

 精神疾患あるなし関係なく、誰しもこちらが意図していない受け止め方、行動をされると混乱してしまう。基本、見た目でわかる障害持ち……携帯酸素を持ち歩いている、松葉杖を使用している、車いすを利用しているなどには、さりげない配慮ができます。白いつえを持っている人には、こちらが障害物にならぬよう除けて歩くなどは当たり前です。しかし精神疾患のある人は見た目では不明なので、会話上の配慮などができぬ。いや、できてはいても受け止め方が深刻になってコミュニケーションが取れなかったりします。双方とも相手が悪いもしくは己が悪かったと後味の悪い思いをします。大変難しいです。

 私の失敗談、懺悔話を書きましょう。異動したばかりのころ、精神疾患関連者の作業療法の一環として、職場に手作りのお菓子などを売りに来られました。おいしそう、そして手ごろな値段。売り子さんが患者です。不慣れなことはわかっています。私はお札をだし、ゆっくりと計算をされるのを待ちます。おつりを受け取ったときに何気なく「また買うからよろしくね」 というとパニックになられました。私はその人にとっては予想外の言葉を言っちゃったわけです。背筋を伸ばして硬直され、「あっあっ」 と呻かれたのでこちらもびっくり。私に言われて何か返事しなくちゃ、という思いが先走ったようです。その人には作業療法士兼販売指導というか責任者がついていますので、すぐに落ち着かれましたが、私は後で先輩に大変怒られました。一般的なスーパーなどの売り場ではなく、こういう精神医療施設に売りにくるということを鑑みての配慮が欠落していたというのです。発作を起こさせた私の失敗で、今なお反省していますが、これを医療機関以外の場所でやると、買い手とのコミュニケーションが取れません。精神疾患があると知りえぬ相手によっては「それがお客に対する態度か」 と怒るでしょう。特には侮蔑の対象にされ、お店の経営者にとっては客が減る原因となるかもしれません。

 つまり社会にとっては精神疾患は見た目ではわからないので配慮のしようがない。そういうこともあって精神疾患履歴のある人は対人関係のトラブルを避けるために採用を見送ることもあるでしょう。近年は精神疾患でなくとも、家庭で基本的や礼儀やマナーを教えてもらってないコドモオトナというか、見た目成人をうっかり雇って職場の画像一枚で世間を炎上して変な意味で有名になってしまうこともあり得るのです。危険は避けるにこしたことはありません。疾患差別はあってはならぬのは確かなのですが、それを雇う場合のマニュアルやトラブル対応策がないまま、行政が差別なく雇いましょうと推し進めるのは問題だと感じます。

 基本的に私は人類性善説を取っています。初対面で精神的な病状が非常に悪く錯乱した状態であっても薬があえばこんなに穏やかな温かいお人柄だったのだと感じ入ることもあります。精神疾患の履歴ありでも偏見を持つのは良くない。ただし治療対象ではないが他人の感情や行動への配慮が全く欠落している人間がいるのもまた事実。

 残念なことに精神疾患の履歴がなくともこういうのは存在する。わかり次第さりげなく避けて通るしかありません。これは差別ではなく、防御です。相手にわからずに、傷つけずにさりげなく……です。そして差別と防護の境目は存在しない。

 だからこういうのも縁のものだと思います。



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