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第七十九話 可愛い悪女M


 私は書くこと自体が好きだからいろいろな話を書く。やっていくうちに己の心のありようが見えてくる……残念ながら根底に人間不信がありますね。特に悪意を隠した善意……見かけは優しげだが、悪意に満ちた行為、コレを何度となくやられているからでしょう。

 今回の話は、第五十一話の思いやり、親切という名のいじめ と傾向は似通っていますが全く違います。そしてこの手の話をずらずら書く私は人を導く宗教者様には絶対になれません。善人ではないので、人さまから悪意に満ちたことをやられて忘れられない。許せないです。単純に執念深いのでしょうね。

 しかし。

 こんな私でも根本的に人間は好きだし好きでありたい。そして一度限りの人生を楽しみたい。私はこれを言いたいがために創作しているようなのです。創作活動のうち、書くということは己の心を丸裸にする行為と一緒です。ともあれ拙作を読んでくださる人に改めて感謝します。


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 中学一年生の時に、隣り合った席にMという女がいました。女、と書くのは悪意があります。とてもかわいい顔をしているのに悪意ある女でした。今も覚えていますが英語の発音記号を習っていて、私は苦手でした。当時から難聴があり先生の細かい発音の違いが聞き取れなくて困っていました。耳で覚えるのではなく書いて覚えるしかない、と思い教科書からノートにうつして覚えていたらMが手伝ってあげるといいます。席替えがあったばかりで、隣り合ったMのことはよく知りませんので英語の得意な人かと思いました。しかし私は断りました。

「教科書をうつして覚えようとしている。だから手伝いはいらない」

 何度もいっているのに、Mは書きたいという。

「書かせて。お願い」

 その時のMの顔、白い歯を惜しげもなくみせた笑顔。私は今でも覚えています。どうしてそんなにしつこいのだろう……どうでもMはノートに書き写すのを手伝いたいという。MがMのノートに書けばいいだけなのに私を手伝いたいという。根負けして「じゃあ……」 といいました。

 みなさんここまで書けばご承知だと思いますがMはわざと間違えてノートに書き写していました。鏡文字にしたり、さかさまにしたり。通常ではありえない文字を混ぜ込んでいました。私はすぐに気づきました。なぜならば教科書をなぞって、間違いなく書き写してくれていたかをチェックしたからです。あんなに親切そうに言ったのに、そんなことを平然としたのです。一度や二度では偶然間違えたと思いますがあからさますぎます。私は消しゴムでノートを全部消して一からやり直しました。

 私はMがなぜわざわざこんなにわかりやすいミスをしたのかと思いました。これが今から思えばMの私に対するいじめでした。私はMの顔を見ることはできませんでした。間違えたよ、ひどいわね、とも言えませんでした。当時の私は隣の席になったMの機嫌を損じるとクラス内で声をかけてくれる人がまたいなくなるという恐怖があったのです。

 その後は一切ノートの貸し借りはしませんでしたし、テスト前に貸せと言われても嫌だといいました。すると通学バッグからノートがなくなりました。テスト終了後にはノートが私のつくえの上に放り出されていました。この件はM以外にも心当たりが多すぎて犯人はわからないままです。

 Mは私を見るごとにおはよう、とほほ笑みかけてきます。私もおはようとはいいますが、何事もないように接してくるMに人間不信になりました。バレエをしていたのですが、それを知るとMは、あなたの顔では似合わない。その体型ではチュチュも無理ねと平気で嘲笑してきました。小学校でもそんな女はいたのですが、Mは相当な美人だったから余計にショックでした。私はMにこうまではっきりと言われたからにはバレエが似合ってないのかと思いこんでしまいました。今となっては当時の自分を叱りたい気分ですが当時の私は自己卑下がひどかった上に、容貌ではレベルの違う女から私は見下げられていると感じて何もいえませんでした。Mは周囲から秀才で美人とされていましたからなおさらです。Mは私ならいじめても大丈夫だというあざけりがあったと思います。Mの美貌に隠されて皆の目にはわからぬのです。

 席替えは期末ごとにありましたので、Mから離れたときはうれしかったです。次にMのとなりに座ったコは、Mと表立ってケンカをしていました。詳細は知らないのですが、おそらくMがそのコに対して何かやったのです。

「M,あんた、性格が悪すぎる!」

「うそつきおんな」

 Mはそう罵倒されていました。Mは数人に囲まれてつるし上げられていたのですが、Mは腕組みをして薄ら笑いを浮かべているだけでした。どうしてそんなに平然としていられるのだろう。私は今でもそのシーンをありありと思い出します。

 Mを嫌う人は嫌っていましたが、一部からは好かれていました。たぶんMは好きな人、嫌いな人をはっきりわけていたからでしょう。

 繰り返しますが、私もMも当時はまだ中学一年生です。対人評価は己だけのもので、世間的な評価はあてにならぬということを実地で学びました。大人になってからのMのことは知りませんが中学生でコレですので、異性がからんだ深刻なトラブルを起こしているのではないかと思っています。

 これも推測ですが、Mが生まれつきというかプチサイコパスである可能性が五十パーセント、家庭内の成育歴のゆがみもしくは環境に過大なストレスがあった確率が五十パーセントであるかと思います。

 思うだけでは解決はしないが、そういった輩との対処法とかは誰も教えてくれないので、対人トラブルは

① 耐えるか

② 反論するか

③ やり返すか

 ですね……こういうのは学校の教師には絶対にわからぬようにしますし、個々の信頼できる大人もしくは保護者から学ぶしかないと思います。でも通常は性格上 ① の選択になるだろうし、相手もそれを見越してやってくるのだろうということが今回のイラクサです。



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