第七十六話・不幸子の話……点数編 ●
今回は高校生の時の思い出話から始めます。
女子の世界は全部グループでできていて、私はそのグループのどこにも属していませんでした。そしてあるグループをHとします。四人ぐらいいたと思います。仲良し四人組ですね。放課後だったと思いますが、その四人組と私しか教室にいなかったですが、四人が一冊のノートを囲んでいろいろと話し合っている。とても盛り上がっていました。そして「いや、それは低すぎる」 といっていきなり笑いだしたり、「かわいそうだからおまけに五点あげよう」 と言ったりする。
大声でしたので彼女たちが何をしているかわかってきました。クラスメートの名前を書いてそれを点数にしていました。○さんは、八十点、◎さんは、五十五点、▽さんは、四十点など。Hグループは私とは接触がなく特に不快なことをいってくるわけではないのですが、私の点数はどうせ最低だろうなと思っていました。そしてばかばかしいことをするんだなとも。低い点をつけられているのも私は平気でした。それは痛くもかゆくもないからです。私は手元にある本を眺めました。
バカ笑いをしている彼女たちは、この本を開くとどんなに壮大な話が繰り広げられるかを知らない。それでも、Hグループは外見上は仲の良い可愛い女子高校生でしょう。私はいつでも顔を伏せて歩くぼっちです。どちらが世間様から好感を持たれるか私はもうわかっていました。
普通に衣食住をこの世で生きていて、日常的に自己保身のためにこの人には愛想よく、この人には冷たくしてもよいと態度を表すことがあります。実は私もそれをします。数字に表現しなくとも、無意識に点数をつけていることになります。でもそれは漠然としているようでもはっきりとしている。それぞれの個人の心の中で。
私の場合は最低ランクの点数は酔っぱらいと私の実妹Zです。もう見たら避けるが吉。絡まれるとトラブルになることが確定しますから。
まず酔っぱらい。あとで覚えてないような酔い方をする人だとわかれば普段から徹底的に避けます。お酒が入るとからむ人は怖いです。「覚えてない」 は錦の御旗ではないです。家族にそんな人間がいたら、逃げられないので大変だと思う。
ほろ酔いで上機嫌になる人だと、楽しい話も聞けますが、態度が変わる人はダメ。過去真面目で無口な人が酔っぱらって周囲に絡んでいるのを見たことがあり、お酒って怖いと思いました。
それと実妹Z。世間様の評価とは裏腹に私と私の両親には不快な感情を味わせる人間です。また私の子供の目の前で罵倒されたこと、殺してやると言われたこと、母親にも暴力を奮ったあげく借金させたこと……もう絶対に顔を会わせないようにしています。
こんなZにも味方がいて、親戚のJが訳知り顔に「Zってかわいそうなところもある、折みて仲裁してやろう」 というが、とんでもない。私も母もこれ以上不快な思いをしたくない。これまでにいろいろと綴って来た実妹のZがこれにあたります。母に殺してやると放言したことで事実上の絶縁になったのですが、Zの夫はこの話を全く知らず、実家とは距離をおくことにしたと上手に話していることが別の叔母から判明し、Zって周囲や夫の騙し方が天才的に上手だと思っています。
逆にZから見て私は最低点の女でしょう。まずZは己をどの人にも好かれるべきだという思いがある。姉に嫌われて当然だが、それを認められない。それは今までの己の行為を見つめることができないからだと思っています。Zは周囲にも私のことを「日本一憎い」 といい、時には「世界一憎い」 と公言しています。己が私と私の家族に何をしたか全く知らせず。そして実母を夜中まで暴言で寝かせず、暴力で寝かせずの状態にしてお金を得て、とうとう母を借金漬けにしました。現在病気で倒れた母を私が引き取っています。引き取る折に仏壇の中にまとまった現金があったのを知っていたので引き出しを開けましたがない。母に聞いてみるとZが着物がどうしても欲しい、同窓生代表ではかま姿でお花を来賓に差し上げるので新品の着物がいいと聞かずお金をあげてしまったといいます。母は私に怒られると思って黙っていたのです……仲のよい叔母もさすがにこの話を聞いてびっくりしていました。保険金があったはずだと思って証書を見て問い合わせをしたら、満期のお金も先に引き出してしまっていてこれにもびっくり。母に聞くと犬の世話代に使ったという。そりゃあ、犬を寝かせるための保温に専属のクーラーの電気代などの最低でも三、四万円かかっています。それが年金暮らしなのに毎月。加えてお金の要求。だから我が家にお金が一銭もない状況です。
母は殺してやろかと言われたことで、家名に傷がつくと長年黙っていた我慢の糸を切りました。本気でキレました。もう家名の恥もクソもないということ。母の引き取る際の近所へのあいさつでZへの愚痴をこぼしていたことがわかりました。美容院の人、行きつけのお店の人……しかも倒れる数日前に……近所の人は遠方に嫁いだ私が母を引き取ることで「さみしくなるが、これでよいのではないか」 と言われました。
Zは母に対して「早く死んだら翌日この実家に引っ越しする。だから早く死ね」 と脅したようですが、もう近隣の人々はこの話を知っている。気位の高いZが母の死後、どんな顔をして暮らすつもりだろうと思っています。




