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第七十二話・医療従事者への侮辱 □

種々の見返りを期待する人も存在するので、今回も私は余計なことを書いたかもしれません……。

 前話の賄賂話で思い出したので書いてみます。母が入院した時は親戚Jが見舞いにきてくださいました。忙しい時間の合間に来られたのでそれは有り難く思います。Jは病室を見まわしていました。そして母に言いました。以下のセリフがこれまたイラクサ。頭にきたので今回の話題にします。


「私は某さんをよく知っているが、その某さんはここの院長と仲がよい。だから私があなたを善いようにしてあげてと頼んであげる。そうしたら主治医や看護師もよくしてもらえるだろう」


 ……このセリフを聞いて皆さんはどう思われますか。


① そんなエライ人と知り合いになってうらやましい

② そんなエライ人と知り合いで優遇されるなんて許せない

③ 知り合いの知り合いに頼むの? ふ~ん、どこまで威力があるのかしらね?

④ ええ加減にせえ


 いかがですか? 私は④です……医療従事者ならおそらく全員が④にマルをするのではなかろうか……。当時の母は意識が戻り通常の会話が可能でした。Jを見上げてうれしそうに「お願いね」 と言いました。Jは「まかせなさい」 と頷きました。唐突ですが、私は昔からJから「可愛げがない」 と嫌われています。私の話を聞いてくれないのはわかっていますし、病室で病人の母を前にケンカするのはいけませんので黙っていました。そのかわりJが去った直後に私は病棟内にいた主治医を捕まえました。

「あの~エライ人通じて院長から何か言ってくると思いますが、医療従事者ならどんな患者でも区別することはないでしょ。治療方針を変えたりはないでしょ」

 医師は苦笑し、「当たり前です」 とおっしゃいました。次いで婦長にも言いました。目の前の患者が誰それさんの知人でほかの人より大事にしなさい、というのは医療従事者にとっては一種の侮辱です。読者の皆様にも私の言っている意味がわかっていただけたら有り難いのですが、どうでしょう。

 佐藤秀峰の漫画作品に「ブラックジャックによろしく」 というのがあります。医者ってなんだろう、がテーマの作品です。その中で大学病院の教授が手術前の患者に向かって堂々とワイロを要求するシーンがあります。そういったタイプの医師もいることはいるでしょう。私は外科医の奥さんになった知人から自主的に自宅に現金を送ってくる患者がいる話も聞いています。夫婦してどうしようかとうろたえるタイプなので「現金よこせ」 と暗にいう人ではない。しかし現実的な話として漫画のように現金を贈ることによって、手術の期日を速めてもらったりはあるとは思います。しかしエライ人というのは、過去の功績がエライひとでありますね。漫画では現実はこうだとやや誇張的ではありますがしっかりと描かれていて痛快です。医療従事者のはしくれとしては、感情的には風上にも置けぬがエライ人のやることなら何も言えぬという感覚もあります。エライ人はそのあたりが鈍感になっていくのでしょうか。

 医療従事者は、どの患者さんに対しても等しく対応します。救命の場合もそうです。この人はエライ人だから絶対救命しなきゃ、など思いません。落ち着いた状態になってもお給料以外の見返りやお礼は期待なぞしません。患者の方からお礼の金品を持って行っても医療機関の窓口には「お礼はお断りします」 とはっきり書いてあり、医師も看護師も受け取り拒否をします。それが当たり前だと思います。

 私は教授クラスやエライ人とのかかわりがないし、医療従事者としては下っ端なので現実に受け取る側の気持ちや期待感の度合いは知りません。が、私が言われたら「侮辱」 と受け取ります。この人はエライ人の知り合いだ、と思って接したりはしません。どういう相手でも態度を変えてはいけないと思っています。Jはエライ人の仲間と世間では思われていても、私のような性格相手では通用しない。権威でもって医療従事者に対して「ちゃんと治してやれ優遇してやれ」 と圧迫するのはいけないと思う。


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 私の周囲は、お中元お歳暮を主治医に対して商品券で渡す人が多いです。実は亡くなった私の父も渡す人でしたが、渡した後は診察の会話がより丁寧になるので、効果はあると信じていました。あるとき、医師がこういったそうです。

「いつもすみません、今回は自己注射の針をおまけに差し上げます」

 医療従事者や医療事務さんなら、この会話のどこがおかしいかすぐにわかりますね。こんなものです。でも私自身も金品を受け取ってくださいと言われたこともあります。私は受け取らず患者の不安を払拭するように傷つけぬように話をしてわかっていただいています。






損得抜きの患者さんの笑顔でもって仕事のモチベーションが保てる。仮に笑顔が出せない人でも検査結果のデータや処方内容が代わりに語ってくれるものもあります。働かせていただきありがとうございますって思います。

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