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第六十六話・不幸子の話、今すぐ死ね、今すぐ殺してやろうか編 ●

不幸子ふこうごという題名は、親も子供自身も結果的に不幸になってしまうという私の造語です。親は愛して育てたつもりでも、子は違うと親を恨み、それを理由に搾取される老親がいます。様様なケースがあるとは思いますがどちらかが悪い悪くないという話ではなく、どうしてこうなってしまったかを一例をあげて検証してみたくてシリーズ化します。人名ではありませんこと、念のため申し上げておきます。

 一見仲のよさそうな家族でも内実はまったく違っていることがあります。今回は家庭内暴力もしくは暴言の話です。精神医療の話も混じっていますが、昔の偏見を恐れ、治療させなかった場合どうなっていくのか、の話でもあります。今回は私の実妹Zの話です。


 Zの年令は現在五十一才、会社員の夫と室内犬と暮らしています。実家へは電車二社の乗り継ぎと自転車を使って三十分ほどで行けます。市内駅直結のタワーマンション暮らしで子供はいない。Zはクラシックバレエと声楽とピアノとヅカが大好き。人付き合いにもマメで同窓会で無償で役員をしています。はた目からは有閑マダムに見えます。同腹の姉妹でいて、徹底的に地味に暮らしている私とは正反対です。皆さんはこの書き方に悪意があると感じるでしょうが、その通りです。だってZは、世間の体面を取り繕うために、母への暴力を奮って泣かせてお金を得ているから。

 お金はお金。お金には罪はない。そしてそのお金を使われるお教室やご友人、某友の会にも関係はありません。出所は誰にも関係ないのですが、Zは暴言暴力のあげくお金を実の母親から得ているというのは姉としては黙っていられません。母には姉妹がいてその叔母たちもZに意見をします。しかしそれをすると、Zは意見をされた怒りを母親へ向けます。母親への暴言と暴力が出ます。Zは特に私のことをこういって母を責めます。

「あいつをなんとかしろ、なぜあんなやつを産んだのや」

 ……あいつとは、私のことです。毎度の定番の言葉……Zは昔から私が憎いのです。刺してやると言いますし、実際に体を噛まれて現在亡き父と一緒に救急病院を受診したこともあります。数年前に我が子の前で暴力を奮われたことからZとは正式に絶縁していますが、皮肉なことにそれがきっかけに実家に一人暮らしでいる母に対する暴言と暴力がもっとひどくなりました。



」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


 なぜ、こうなってしまったのか。


 物心つく前からZは気に入らぬことがあれば癇癪をおこす子供でした……成人してからは友人に見栄を張るために母にお金をせびるようになりました。この経緯を書いてこのZの肉親として客観的に考察してみます。

 ちなみに私が小説やエッセイを書いているのは同居人以外誰も知りません。見栄っ張りのZがここで己が公にされているのを知ったら気が狂うと思うが、私はZが昔から狂っていると思うので、今以上にもっと狂っても全然平気です。もう絶縁してるし、昔からシネとも言われてるし。それと私は無名ですし特定はされないでしょう。

 私自身は、人間には身の程というものがあり、見栄や虚栄心を満足させるためにお金を使うべきではないと思っています。個々の思考なので、他人様の思考には介入すべきではないのですが、Zの場合は、Zに対して母が喜んでお金を出すのではなく、泣かせてお金を出させるのを問題視しています。

 念を入れてもう一度書きますが、私は他の人のお金の使い方やお金の出所は無関心です。関係がないからです。しかし、Zの母は私の母でもあります。だから、Zが母親にヒステリーを起こすごとに母が遠方に嫁いだ私に泣きながら電話をしてくる。私はこの悪循環をなんとかしたいです。

 見栄っ張りZの体面を満たすためには、会社員であるZの夫のお給料だけでは無理があります。加えてZは働きたくない女。週末だけ某の補助パートに行きますが、体力的にしんどいから本当は嫌だといいます。しかし実家の母も八十を超え年金暮らしで余裕がないのでZからのお金の無心を断る。すると、表題のセリフをいって殴る蹴るをします。

 金が出せないならば、今すぐ死ね、今すぐ殺してやろうかと喚きながら。


 Zは若い時から親に対しては「貧乏な家に生まれてしまったが、とりあえず食べていけるようにしてくれたらそれでよい」 と堂々という女でした。親はZの癇癪が怖くてそのわがままを許すところがありました。

 今年のお盆の時にそれがひどく、いますぐ三十万円をよこせといって、お供えの食物をテーブルからなぎはらい、足で踏みつぶしたそうです。母が拒否すると、だんだんとヒートアップして七桁万円をよこせ、という話になりました。Zにはもらう権利があると主張するが、お金がない母が当然拒否する。すると、今度こそ本当に殺してやるとなった。

 実は今年のお盆も、私は子供を連れて実家に滞在していたのですが、去った後でした。子供にはZのヒステリー状態というか、狂乱の場を一度見せてひどいショックを受けさせたことがあり、その場に行き合わせてなくて不幸中の幸いでした。しかし、仮に私だけがいても、どうにもならなかったでしょう。

 私が帰った後の話でもあり、他に助けを呼べなかった母は、お金を取れなかったZが怒りながら帰っていくと、すぐ母の妹に電話をしました。そして助けてくれ、七桁万円を出さないとZに殺されるといったそうです。尋常ではない電話の内容に驚いた叔母は別の叔母と義叔母を呼び、三人で実家の母の様子を見に行きました。母は泣いていたそうです。今回は出血などはなかったのですが、「私が死んだらZに殺されたと思ってほしい」 と訴えたそうです。お供えの果物やもち、団子などの食べ物が床に落ちている状況に叔母たちは驚きます。そしてその三人はこの際、Zの言い分をきちんと聞こうとZの住むタワーマンションに行ったそうです。

 Zは最初、この話し合いを拒否しました。叔母の一人を過去の浪費の件、特に母をだまして矯正歯科のお金を倍額要求して無理やり出させた件で説教されて不快だからと言いました。でも今回はそうはいきません。Zは別の叔母を指名して彼女となら話をするといいます。この叔母は祖父が亡くなった時、母と私たちが住んでいる土地に執着して一時は母と不仲になった人です。(この話はあとで生きてきます)

 それでその叔母がZと話をしました。最初に言っていた三十万円の根拠はクラシックバレエの発表会の費用だそうで、お金がないので母が出すべきだといってきかない。叔母はだからといって実の母親に殴る蹴るはいけないと諭すと、なんと姉である私の話を持ち出したそうです。

 Zの飛躍した論理で行くと、Zには子供がない。したがってお年玉も、七五三、入学祝ももらえない。だから姉の私と比べて金銭的に損をしているので、もらうべきである。お年玉だけでも三十万円の差はあるので、すぐにでももらう権利はあると主張する。こういうことを真面目に訴える。


 昔からこの手の話を私は母から何度も聞かされていました。Zが子供がない分、人生を楽しむべきだが姉の私と平等にお金を欲しいというので、私の子供に贈ってくれたランドセルや机の代金をそのまま都度請求されていてZに支払った話です。それはZの遊興費に使われました。叔母も母の愚痴を聞いてこの話を知っているし、言う通りにしないと母に暴言暴力がくるのは知っている。

 母から孫へ、つまり私の子供へのお金は、私自身が遊ぶために使うお金ではありません。ですが、同じことだと主張して、私の子供へのお金と同額をもらってZの遊興費に使うという思考は飛躍しているように感じますが皆さんはどうでしょうか……Zは本気です。

 子供がある人間はそれだけで幸せだが、子供がない人間はそれがないため、遊ばないと損だと言う。実際に言われたことにありますし、Zは本心から思い込んでいます。

 叔母が黙っていると、Zは涙ながら「あの母親と亡くなった父親、そして姉(この文章を書いている私の事)からスクラムを組まれて私を邪魔ものにされていた。一人ぼっちでつらい思いをした分、慰謝料として姉よりもずっと多くの相続をして金銭をもらう権利がある」 といいます。

 私としては、この発言には異論はもちろんあります。幼いころからZは思い通りにならないと癇癪を起します。金切り声を出してわめきます。そして家じゅうの食べ物をたべあさって、全部吐いてしまう。当時の家の中はZの吐しゃ物の匂いで充満していました。

 母の作ったお弁当の内容が気に入らないと、その場で流しに捨てる。逆に気に入ったおかずだとめちゃくちゃ食べる。私が塾帰りで帰宅が遅くなると、お肉だけまったくなくて、Zの嫌いな野菜だけ残されている。お皿に取り分けてもそうです。母が怒ると「あいつ(私のこと)ばかり、ひいきしやがって」 と怒鳴り、ヒステリーを起こします。そして「なぜあいつがこの家にいるんや、いますぐ追い出せ」 と真夜中まで金切り声をあげて両親を責める。

 そういう状況で私や両親は、いつもZを恐れていました。怒ると泣き叫んで手がつけられないのです。Zとは三才違いですので学校内での様子がわかりますが外面は良かった。私には友だちがいなかったのですがZは社交的で人気者でした。でも家庭内ではそうだったのです。

 しかし、なぜZは家庭内で居場所がないと感じていたのか……。姉妹ではありますものの、容姿もZの方が私よりずっといいです。背も私より高く手足も私より長くバレエ体型です。成績は私の方がよかったのですが、それも罵倒のタネで「根暗で友だちがいないから勉強ばかりする。だから多少成績だけがようて当然や」 とバカにされていました。今から思えば言われ放題の私を母が庇うほど、ヒステリーが強くでていました。

 Zは世界の中心にいたい人です。スターにあこがれ、友だちづきあいをすることを誇りに思っています。双方ともまだ独身で実家暮らしだったとき、Zが宝塚スターのプライベートな写真入り年賀状を何枚も持っていて、「どう? いいでしょう?」 と自慢げに見せてきたこともあります。ファンクラブなどに入会すると、スター本人から自作の写真入り年賀状をもらえるので、それが自慢になるようです。そのスターが好きというよりも、スターから年賀状が来るほど仲が良いのを自慢したいのだと感じました。そのためにZはスターに好意を持たれるよう、たくさんお金を使ったと思います。Zって万事そんな感じ。

 携帯電話がなかった時代に、Zのバレエの先生からの伝言を私が受け取ってしまったことがありました。お礼を言われるどころか、「あんたが受話器を取ったならば何度も聞き返したはず、みっともない、なぜ電話を取ったのか」 と怒る。聴力の悪い姉を恥ずかしく思っていたのは事実だが、改めて普段から恥ずかしいと言われて、これは哀しかった。当時は私自身も聴力が劣っているせいで人間性も劣っていると思い込んでいたし、これに関しては実母の思考と教育が悪かったとは思っています。

 私の学生時代は己に自信がなく、いつでも下を向いて生きていたので社交的なZとは大違いでした。学生時代からZは祖母からもらったお金や母から巻き上げたお金で趣味に生きていました。家ではあんな感じだけど人気者であるのは確かだし、世間はそんなもの。小中高で表裏のある人間からいじめを受けていた私にとってZもまた同類の人間、というよりもそういった人間を見抜けず、スターもZを優遇する(注、Zだけの言い分、スターはどう思っていたかは不明)のも、人間不信になった所以です。

 外での八方美人でいるストレスを家庭内でぶつけていたのでは、と思いますが、ある種の人格障害の疑いもありました。両親が一度診察を受けさせようとしたら例によって暴力沙汰になりました。母が気がひけたことと、精神科や心療内科の受診を体面が悪いからダメといったこともありますが、医療系大学に進んだ私が、やはりおかしいよと、さらに受診をすすめたことで、逆にZの態度と散財がひどくなりました。

 我が家は一般的なサラリーマン家庭にありますが、実は給料とは別に少ないながら家作があり、それを両親は学費やバレエの費用にあてていました。しかし際限なくお金が必要な世界でよい顔をしたいと思えば、限界があります。当然いつでもお金が不足しています。それなのに、毎日のヅカ通い、スターとの茶話会、バレエ……Zの友人は裕福な子女ばかり。Zはそんな彼女たちをうらやんでばかり。だれそれさんは月に百万円もお小遣いがあるの、いいなあ。こんな家に生まれて損をしたという。

 一生懸命働いている父に向って「貧乏は恥ずかしい、お父さんはカッコよくなくて恥ずかしい」 そんな話ばかり。そしてZのヒステリーを恐れて私の両親はZを諫めることはできませんでした。私もです。

 当時生きていた祖母だけがZをいさめて、孫よりも我が子(母親のこと)がかわいいから、その我が子を悲しませるのは許せないといったこともあります。Zは祖母にはおとなしく黙っていましたが、母に八つ当たりしていました。

「私こそ、お前が私の母親では恥ずかしい、こんな家にうまれて恥ずかしい。この私が怒られたのもお前の育て方が悪いせいや」

 母はそう罵られるたびに泣いていました。私はなぜZみたいな人間が生まれてきたのだろうかと思います。物心ついた時からZは私を敵とみなされていたと感じます。

「お前みたいなのがお姉さんだなんて私は不幸だ、みっともない、恥ずかしい」

 Zは一体どういう家庭に生まれてきたかったのだろうか。一時は皇室に嫁いでみなをびっくりさせたいと言っていました。もちろん冗談ですが、Zには不特定多数の人間に羨望や尊敬されたい思いがあるのでしょう。裏を返せばZにも私と違う形での自己卑下感があったということだろうか。

 両親はZのヒステリーが始まると「またか……」 と目配せをして素知らぬ顔でテレビをみたりしていました。私もそうしました。好きなだけ叫ばせるとあとは静かになるからです。無理に諫めたり叱るともっと荒れて暴力が出ますからそうやってやり過ごすしかなかった。それを三人で団結してZを邪魔ものにしたので、Zに対して慰謝料が必要だとはなんという言い草でしょう。私たちはどうしたらよかったのかと思います。


 私は大学に進みましたが、Zは成績が芳しくありませんでした。受験のないエスカレーター式の短大の家政科を出ました。卒論にあたる和裁作品もすべて母にやらせていました。遊んでばかりいたので、課題もできなかったのです。そして卒業後も就職はしないと言いました。

 Zは、Zが軽蔑する姉の私が四年も大学生をやるのだから、短大の二年間で社会に出るのは損だ。後二年、学生をやる権利がある、つまりあと二年分学費を出せといって専門学校に入学しました。母は言いなりです。Zはそこで幼児教育関係の教諭の資格を取りました。専門学校では周囲の学生よりも二年、年長でもありお姉さん役として居心地が大変よかったようです。でも散財は相変わらずでした。よそで借金しなかっただけマシだと思えるぐらいです。

 私は母に暴言暴力をするZがもちろん嫌いでした。私はお金のために己の身を風俗に売る女性の方が潔く尊敬します。Zは生来の人格障害があるとみていますし、母も同意見です。しかし母はZの言いなりになり、暴言を受けると結果的に財布を開く仕掛けになっていました。

 二度の結婚も貯金もないのですべて親がかり、不妊がわかると、こんな体に生まれてきたのは母のせいだからと不妊治療の費用も母に出させました。声帯ポリープ、婦人科手術、不妊、すべて母の責任にしてお金を出させます。担当医師のお中元やお歳暮も。良くしてもらいたいので、一回五万円を母に出させて、さもZの財布から出したようにして渡していたそうです。すでに医療関係機関に勤務していた私は医師に心づけは不要だといってもZが怖い母は言いなり。また当時の体外受精は医療保険外だったので一回で六十万円、それを四、五回受けています。歯の治療もすべて。全部です。

 父が亡くなり、母が老いてきてもおかまいなしです。去年から学院の同窓会の役員になってから、体面が必要、パーティーでいつも同じ柄の和服では恥ずかしいから、などといってお金をせびる頻度が高くなりました。和服の件では、最低でも二十五万円欲しいと言い出し、お金がないのを見てごらんと証拠の貯金通帳数冊を差し出す母に「絶対隠している、あいつ(私のこと)と結託してどこかに隠している」 といって新品の硬い帯芯の入った帯で母の頭と腕を二時間かけてZの手が疲れるまで殴り続けました。この時の母の腕は骨折こそなかったのですが、赤く腫れあがり、腕が動かせないと泣きながら電話してきました。急きょ、仕事を休んで実家に帰った私が病院に連れて行こうとしたら外聞が悪いと拒否。こんな状態です。

 思い起こせば十代の頃のZに摂食障害があった時点で、心療内科に連れて行くべきでした。しかし両親は一度だけ連れて行こうとしただけで、私をキチガイ扱いした! と狂ったようになり家の中をめちゃくちゃにしました。両親はこのあと逆に、ヒステリー状態は確実に精神科案件であると思っても、家名に傷がつくと心配して受診させないようにしました。もちろん本来は受診案件ですが、はっきりと病名と治療をされるのを恐れて逆に隠そうとしました。この世間体を重視する親の心理を私は哀れに思います。でもそれが一体何の役にたったのでしょうか。そして今、そのツケが老いて弱って来た母にきています。

 私は逆に母にお金をかしている状況ですが戻ってきていません。年金だけでは確かに一人暮らしでは十分暮らしていけるはずなのに、お金がない、が口癖になりました。入金があると母自身が散財するくせがあり、かつその上にZのお金の無心で実家はぼろぼろです。



 以下は叔母から聞いたZからの言い分からの感想です。つまり第三者の感想。 

① Zは、母や私より優越感を感じていたい

② Zは、幼いころから両親から邪魔者にされ、姉の方(私の事)を優遇していたという勝手な怨みの念

③ Zのこの思考が、慰謝料にあたると考えている現在のお金の無心、母への暴言暴力につながっている。


そして叔母たちは、母に対して

④ あんなみっともない育て方をして、あんたの教育が間違っていた

……と責めます。


」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


 結果ですが、Zの言い分を全部聞いたこの叔母は、なんと母に借金をさせました。繰り返します。叔母が母に借金させたのです。Zが主張した三十万円どころか、Zがもらう権利があると主張する七桁万円をぽんと渡しました。この叔母だってZがまだ生きている母に無理やり公正証書を作らせたのを知っています。母の住まう土地と家をZのものにする内容です。その弁護士の費用もすべて母のお金です。私や私の子供たちのことは一切考えていません。私自身は不利な案件でも、私は遠方に嫁いだしZが母に万一のことがあれば動いてくれるだろうということもあって、承知しましたが、その上でこの仕打ちはひどすぎます。

 その公正証書の作成時だって、まだ母が生きているのに早すぎると私がしぶると「殺してやりたいと言われてつらいから、あの子の言う通りにしてやってくれ」 と母が電話してきます。そして涙ながら私に実印をお願いといってきたから、私は母のために言う通りにしたのです。でもいつものパターンでした。思い通りのことをして、さらにもっと思い通りにしようと要求する。公正証書は母の死後、Zにすべて行くというものです。でも生きている間は、自由にできないから、お金を慰謝料を兼ねて七桁万円もらう権利があると言い出すのです。それ以前にマンションのお風呂のリノベーション費用もZの夫の貯金から出すのは嫌だ、借金もしたくない、と七桁万円を母が出しています。母はこれを相続の勘定に入れていたのですが、別件だと怒って足腰の弱っている母を蹴り飛ばしたそうです。骨折がなくて本当によかったですが、これは、あまりなことだと思っています。


 母は私にも借金しているので、Zの言いなりになって七桁万円を渡したことがばれると絶対に怒ると思って黙っていたそうです。しかしもう一人の別の叔母から私に話がいきました。改めて母に聞くとZが話し合いに応じた例の叔母は現在の母の住んでいる家と土地を昔から欲しがっていたのでその腹積もりもあるのではないか、という。またこの話を提案してきた叔母には、七桁万円は縁切り代もこめて、家には一切来ないことも含めているからと説得されたそうです。それで母は叔母からお金を借りました。しかし母には本当にお金がないのです。

 この例の叔母はお金持ちでもあるので七桁万ははした金ですが、母が亡くなればZはすぐに売ってお金にするつもりなので、叔母が買い取る話をしているようだとも。

 母は困ったことに年金が入ればすぐにタクシーで百貨店に行き、外商のツケで買い物をするような人です。それが老後の唯一の楽しみだと言います。そして終生一度も働いたことがないのが自慢の人です。私から見ればこんなの自慢にならないです。働き者の方が偉いです……なので、Zの浪費癖は母からきているのかもしれません。


 しかし七桁万円のうちの早急によこせといった三十万円はクラシックバレエの発表会費用とは恐れ入る。

 繰り返します。Zは、五十一才です。周囲には虚実をいう性格、加えて美容外科で定期的に若返りのメンテナンスをしているらしい……そりゃ、お金がいくらあっても不足します。事実、若く見える人ですが、実態はこうです。

 Zは、己の性癖からくる家族からの恐れを全部「家族から私だけのけ者にされた。私だけがいつも怒られた」 という事実と違う話をZの周囲、友人にも言っているはずです。それがZの矜持だから。実の母に殺してやろうかと脅してお金を取ったとは決して言わないでしょう。私もZには積年の怒りもあるが、哀れさも感じる。

 私とZとの絶縁のきっかけは、先にも書きましたがまだ小学生の私の子供を前にして、ヒステリー状態になったZから、着ていた服を破られ裸にされ、髪を掴まれて部屋中を引きずり回された経験をしたから。私は子供に暴力がいかないようにするために、必死でした。一切抵抗しなかったのですが、背中が血だらけになりました。私の夫は帰宅した私の傷を見てZに電話する、できねばZの夫に言うと怒りましたが、それをやるとZは私と母を殺すからやめてくれと言いました。現在でも受診勧告案件だと思います。

 私の夫は今回の件で、今度こそZの夫にいうべきだとは言います。私もそう思いますが、それでZの夫がZに愛想を尽かし、離婚となれば本当に私と母は殺されます。Zに都合の悪い事はすべて母や私のせいにする癖が染みついていますから。

 だから私はZの夫には何も言いません。叔母もその方がいいだろうといいます。そういう意味では私たちは共犯者になるかもしれません。Zの夫は後で知らせてくれたらいいのに、というかもしれませんが、言えません。ZはおとなしくZに従うZの夫の事を稼ぎが悪いと罵っています。それでも夫ナシよりは夫があった方が体面がいいのです。ちなみに私の夫は高卒ですが、Zの夫は前後二人とも大卒なので「勝った」 という女ですから。Zにとっては夫もまた一種のアクセサリー、ないよりまし……という意味のアクセサリーなのでしょう。

 Zは叔母から、この七桁万円で絶縁となり、母の葬式だけは来てもよいと言い渡されました。でも母の性格からして、またZから電話があれば、お金を用意するのではないかと思います。Zもお金がなくなれば、早く死ね、そうしたら公正証書の効果が出てすぐに売り払えるからと母に直接言います。これは公正証書を作成した時に実際に母に言ったセリフです。人間性のかけらもない女だと思います。それなのに「両親と姉から疎外されていた」 と思い込んで、その代償にお金をもらう権利があるとは、そしてそう思い込んでいるのも人格障害の現れかと思っています。これが巨大イラクサなのは誰もその思考法を諫めることができないから。


 我が家は一見裕福でかつ平和な家庭に見られていた時期もありますが、実情はこんなです。近所の人はZのマダム然とした見かけと家の中の振る舞いの落差を知っています。Zは声楽をやっていたこともあり、母に対する罵声が家の外までよく通るらしいです。これはZは知らないでしょう。皮肉なことです。

 また母も年老いて周囲に愚痴をいうようになりました。昔の母だったら家の恥、家名に傷をつけてはならぬと黙っていたことも話すようになったようです。私が実家に行った折に、母の行きつけの店の人から「妹のZさんって見かけと違うね……」 と話しかけられて仰天したこともあります。

 殺してやる発言と七桁万円はどうやって叔母に返したらいいのだろうと母が気鬱になりかけているので、先週、私は母に内緒で包括支援センターにこの件を通告しました。遠方に嫁いでいますので、すぐ動けない場合、緊急事態に備えてのことです。センター職員によると、お金の無心から老親への虐待になっていくのは結構ある話だそうで、連絡があればすぐに緊急保護しますと言われました。Zの住所、生年月日を聞かれたので言いました。

 

 何度でも繰り返します。Zは母から暴言暴力、殺してやる発言で得たお金、二百万円ののうち、三十万円を今年のクラシックバレエの発表会費用に使います。一体どんな気分でしょう。またZの所属している伝統ある同窓会の役員同士のつきあいも金持ちばかりで大変と自慢していましたが、付き合いにいつも同じ着物でもいいでしょう。私なら、その立ち位置にあっても恥ずかしくない。親を貧乏人と罵ったりしない。パートの勤務時間を増やすか、もしくは手持ちの小物や帯を変えたらいいだけの話。それなのに、新しいものを欲しがり母に帯で数時間をかけて叩き続け、夜中の一時半まで罵声を出して責める……そうしてお金を得て、どんな上品を顔をして取り繕って学院の同窓会の賢婦人や役員、来賓に花束贈呈や茶会の世話をしているのだろうと思います。

 Zは姉の私を地味でいつも同じ服を着て、バレエも下手で、耳も悪いし、恥ずかしいお姉さんと言い、バカにしていました。でも華やかな世界で夢を見たいならば、外面よりも内面を磨くべきだと思う。七桁万円を得ても外面の良さはすぐにぼろが出る。Zの両親や私に対する憎しみ、孤独感はすべて己の内面から来ているのに、それをすべて、お金に換算して慰謝料とするにはどう考えても無理がある。

 叔母が母の実家欲しさに実家の権利書を担保にしてZにさらにお金を与える可能性も大ですが、そんな些末なことよりも、「家庭内ではひとりぼっちだったから、精神科に連れて行かれそうになったから、子供がないから損だから、憎い姉よりもお金をたくさんもらう権利がある」 という理由で


 老いた母親に向かって、

① 殺してやるという、

② 今すぐ死ね、手伝ってやるという、

③ ものを使って殴る、蹴る、

④ 食べ物を踏んづける、

⑤ 最後には必ずお金をせびる


 ……私はこのZを哀れに思います。

 解決に結びつけない事案もここにまたあり。

 








 私の家庭内の実情はこんな感じだったので、偉い人や有名なタレントさんが成人した子供の不祥事でカメラの前で謝罪をする姿を見るたびに違和感を感じる。親の育て方を責めてはいけないと思う。私の母だってZの育て方が悪かったと叔母から責められ、Z本人もそういう。でも違う。

 母はZの姉である私のことを「まとも」 でよかったともいう。でも「まとも」 って一体なんでしょうか。この件ではもう少し考えて書くべきかもしれませんし、なんの解決もなっていない。

 Zはそんなことも考えずに今年の発表会はチュチュかな、ロングかな? と楽しみにしているでしょう。母親を殺してやろうかと罵ったその手足を優雅にしならせて踊る……どんな気分だろうか。親への思いやりがまったく欠落した人間が踊ってもバレエはあくまで美しいバレエですが。

 


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