第四十八話・組織の中での責任問題
私は医療関係者でもありますが、一口に医療といっても職種は多岐にわたります。時計の中身のように歯車に例えますと、患者さんもしくは施設利用者を本体に見立て、いろいろな歯車という職種をかみ合わせてチームに当たっている状態です。患者さんが重体もしくは個々での生活が困難であるほど、快適な日常生活を過ごしていただくための歯車はより種類が増えて複雑かつ大きくなります。
私はそれらの歯車の一つでしかありません。また非常勤でもありますのでその歯車は取り換えが聞きます。でも非常勤であっても会社組織の一員でもありますので、責任はもちろんあります。しかも医療がからんでいるので本人にとっては重大な案件にもなります。で、今回はその話。私も絡んだ仕事の中でほかの組織との連携がうまくいかなくて、でもその責任者たる地位のある人がダダをこねて責任のがれを堂々としたのでエッセイにして考察してみます。
組織同士の連携はどうしてもあります。ほうれんそう、といって、
① ほう=報告
② れん=連絡
③ そう=相談
ついでに相手に「ちゃんと」 理解してもらうことが肝心です。双方の話し合いの上で相手が理解したと思っても、トラブルがおこってから相手が聞いてない、それはそっちが悪いといいだしたことが非常にイラクサでして……今回のエッセイにしてみます。個人情報がからみますので、漠然とした書き方しかできませんが、想像力の駆使をお願いします。問題の中心というか本体に当たる人は認知症患者で判断能力ほぼゼロ、家族がいわゆるうるさい人です。医療系の歯車にあたる私たちの責任は大きいです。
その患者さんをめぐって家族さんからあるクレームがつきました。先に書きますが某施設のTさんが家族さんへの連絡を密にしなかったことにあります。Tさんがキーマンです。
トラブルが起きた時は、もちろん早急に実際に会って協議をします。しかしTさんは、「私は悪くない、この私が絶対に間違えるはずがない」 と言い切って、私を含めた片方の機関に全責任を押し付けてきました。双方のチームワークが必要な状況なので一方的な判断で勝手なことをするはずがない。双方わかっているはずです。Tさんは長年その施設のその職種です。一種の顔役です。それなのに、まるで小さな子供のように「私は悪くない、そっちが勝手にした」 と繰り返していいます。みな呆然としました。特に実際に取り掛かる前に電話ではありますが、Tさんと会話というか協議をした人はあきれていました。患者さんの過去の病歴など個人情報はすべてTさん通じてわかるのに、勝手なことをするはずがない。
いつものように「ではその患者さんに対しては、そういうことでいたしましょう」 と話しあったのに、聞いてない、は、ない。名前を名乗り合っていて、職種も双方とも把握しています。言い訳や言い逃れができない状況なのに、Tさんは最後には「私の名前はよくある名字なので、別の人と間違えたのではないですか」 とまで主張しました。
名字がよくあるから誰かと間違えた、はあまりに見え透いた言い訳です。繰り返しますが患者の状態などの話はTさん通じてしかできないのに。Tさんは患者さんの代理人としての大事なキーマンです。それが幼稚な言い分をあげて責任のがれをする。なので私たちは、それなら患者のご家族さんと話を直接話をさせてもらって理解をもらいましょうといいました。すると、患者さんとそのご家族に関することはすべてTを通じてやってもらわないといけないといいます。Tさんの頭越しにする説明や会話はTさんの職種に対する越権行為だと非難する。
今後の処理とどうやって連携を取っていくかの話し合いなので、責任の押し付け合いをするためではない。Tさんの意志を尊重、というか、Tさんが私の所属する組織が勝手なことをしたが、今後はしないからと説明しておきます、との一点張りで、腹が立ちましたがそれで我慢しました。
Tさんが明らかに責任逃れの説明を家族にするかと思います。トラブルが起こった時のパニックと全責任をほかの組織に押し付けたことから、そういう人だと思っています。責任逃れをするためにはどんな言い訳でもする人はします、という見本の事例です。そうやって接しにくい当人のご家族も共通の敵というか被害者になってしまったといって今後はよりよい関係を「そのご家族と保つ」 ようにするでしょう。そうやって人生をうまく通っている人でしょう。
Tさんは今後とも業務上の連携を保たないといけない人なので、切るわけにはいきません。社会とはそんなものです。人を簡単に排除する方がおかしい。通常は歯車ががっちりからんでうまくいっていても、この件のようにトラブルがでると肝心の歯車が逃げてしまうこともあるという見本のような例です。
人は見た目ではわかりません。私はTさんを知っていますのでとても意外でした。人は困った時、トラブル時に本当の人格が出るといいます。以来、私もTさんには業務上の絡みがあっても用心して接しています。何事もなければ有能な人です。しかし誰だって失敗はあるのに間違ってないとはこれいかに。強情にもホドがあるってものですよ。こちらは業務上のつきあいもありますので、引き下がりましたが、私も関与している案件だったので非常にムカつきました。十分なほどのイラクサが採取できましたので、書いてみました。
◎◎◎まとめ◎◎◎
己(この話ではTさん)の失敗を、他人(この話では私が所属している機関)の失敗に仕上げて悪者にする。そうしてTさんは病人とそのご家族との関係をよりよくしようとしました。高度な責任転嫁ができる立場の人でこういう誰が見てもわかるイラクサをしても責任追及ができないのが更なるイラクサポイントになります。