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第三十四話・いじめっ子は、いじめられっ子の「親の恨みも一緒に買う」 ものと思え

いつものように事実の一部を変更しています。

 勤務先には毎月市役所や各公民館の催し物のお知らせ、健康診断、予防接種、交通安全など種々の生活に根付いた告知がまわってきます。その中に地域にある小中学校生の活躍ニュースもあります。

 そしてある月、ある学校の男子が何かで表彰されていました。その子の笑顔の顔写真が大きく掲載されています。休憩時間にその記事を読んでいたら、某委員会に所属している人が教えてくれました。

「この子はいい顔をしているけれど、ひどいいじめをして、いじめた相手を不登校にさせたらしい。いじめられた子の母親と名乗る女性が某委員会に電話をかけてきて、我が家の息子をひどい目にあわせた相手を表彰するのは何事か、というクレームを入れてきたよ」 


 ……そうはいっても、表彰した機関も普段の素行までは調査しませんので仕方がありません。いじめられっ子の親はその子の顔が大きく写された表彰ページを見るなり、矢も楯もたまらず電話したのでしょう。泣きながらの電話だったそうです。

 また聞きの上のまた聞きで申し訳ないですが、別の公的機関からにもそのくだんのいじめっ子を名指しして、「ひどいいじめをして謝罪もせず、うちの子は不登校のままなのに、表彰するなんてひどい」 という電話があったそうです。それもそのお母さんからの電話でした。ここまでくると守秘義務もへったくれもありません。学校にも電話の内容を知らせる部署もあったでしょう。いじめの内容は事実だったらしく、ちょっとした話題になりました。

 通常は仮に当事者関係の有無にかかわらず、電話の内容をばらすのは一種の守秘義務違反ではありますものの、そのお母さんは名前と住所をきちんと名乗ったうえで関係する公的機関の各部署に順番に電話をかけたようです。それで部外者の私の耳にまで入ったのです。

 ここまできたら、なりふり構わぬいじめられっ子の親としての逆襲です。私も現在は子供を持つ親ですから、その気持ちは痛いほどわかる。捨て身の攻撃といってもよいぐらいです。我が子の良くない状態に追い込んだ張本人、いじめっ子を日の当たる場所には行かせるものか、という強い決意めいたものを感じます。


 いじめられっ子の親がいじめっ子を表彰するのは許せないとクレームを入れる。子供へのいじめと、表彰すること自体は別件のように思えますが、根は繋がっていたからこその反撃でした。クラブ活動からいじめが発展し、わが子はケガをさせられた上に、不登校。一方、いじめっこが優秀な成績を修め、エラい人から表彰されるというのは、耐えがたいことでしょう。

 間違いなく、いじめられっ子の親はいじめっ子の親や学校側に法的な処置を望んだりケガをさせられたとしても納得のいく謝罪というか結末を迎えていない。双方とも義務教育中の子供でもあり、双方の将来を思えばこそ、いじめられっ子の親は悔しいが我慢したのだと思う。

 だが、いじめっ子が表彰され輝かしい将来が待っていると思うと、その我慢の糸も切れる。推測だが、いじめられっ子はそのスポーツに関しては再起不能になっていたのではないか。身体的にか精神的には不明で当人の話も聞かずにこういうことをエッセイにするのは、いけないことかもしれぬが……。

 それでも私はこういう話を書いて啓蒙したい。理由はいじめっ子は、全員、己や家族の将来的なことを一切考えないで行動しているから。目の前にいる相手を嬲る快楽しか見ない。いじめっ子は、相手の親の恨みも買うってこともわかってない。いじめをする子は頭が悪いと思う。いじめられっ子の親としてはいつくしみ育てた我が子を人間扱いせず足蹴にされたことは決して忘れない。

 告発されたいじめっ子とその親は驚いただろう。そこまでされることに思考がまわらぬから、平気で人をいじめられる。

 私は法律には疎いのでこの行為が名誉棄損にあたるかどうかはわかりませんが、ここまできたらいじめをした事実は徹底的に周知される。つまり、


↓ ↓ ↓


「いじめられっ子の親から、そこまでの行動を起こされるなんて……キミはよほどひどいことをしたんだね……」 


 と周囲に思われます。これは一種の復讐になるかと思います。


 にこやかに歯を見せて笑っているくだんのいじめっ子の顔は本当に爽やかな表情でした。その爽やかな感じの良いお顔をゆがませ、いじめられっ子に対してどんな罵声を浴びせ仲間と一緒に暴力を奮ったのかまでは、詳細は私も知りません。でもまた聞きであってもそれを聞かされた皆の表情で、その子の笑顔の裏にある黒い部分を想像しているのはわかります。そして、こういうことは人の記憶にいつまでも残ってしまう。今は得意満面の笑顔でいるいじめっ子の将来にもその影響は少なからずでるでしょう。

 告発された側のいじめっ子とその親がその後、どういう行動をとったのかは知りません。


 私は元いじめられっ子の親の衝動的な行動は、子供を持つ親としては全面的に理解をしたいです。つまり、悔しい気持ちはよくわかるってことです。

 わが子をいじめて地獄に突き落としたくせに、日の当たる世界に行かせるものかと行動を起こされても仕方ないと思っています。衝動的だし短慮がすぎると思う人もあるかもしれませんが、その抗議行動に至るまでの感情を思えば、いじめられっ子の親のしたことは責められないと思います。そしてそれ以後は双方とも前を向いて生きてほしいと思っています。

 




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