第二十八話・価値観の相違からくるいじめは本能?
少しずれてるのは悪いことか。
みんなと違うのも悪いことか。
不特定大多数に紛れ込み、目立たないことが美徳されるのは日本の社会。少なくとも私の育ってきた環境はそうでした。みっともない、という言葉や「やっぱり変わっているね」 という言葉に怯えていた子供時代。家庭環境もあって仕方がないし、時は戻らない。だけど不特定大多数に紛れ、目立つというだけ、ちょっとムカつくというだけでいじめが発生するのはおかしいと思う。もう少し心の許容量を増やしてほしい。
私はいじめに関する番組をテレビで見ていて愕然としたことがあります。政府の肝いりで集った有識者の顔ぶれですね……立派な経歴を持つ方々ですが全員が六十才台以上に見えたからです。元教師や大学教師などそうそうたる顔ぶれですが、なんというか、現場に出ている人々ではなく、元いました、という感じ。
現場は忙しいので指導者を指導する立場を呼んでなんとか委員会を作成して提言してもらった方がいいとなったのかもしれません。一見いいように見えますが、現場にいる生徒たちの生の声を救い上げる人物が皆無という点で驚いたのです。
多分に直接いじめの当事者に介入してあたっている人物はそういう集まりに行く時間的な余裕、報告書を作る余裕もないはずです。私の推測にすぎませんが。
人それぞれの価値観を相互で認め合うこと。反社会的な思想でない限り、双方とも「アリ」 だよね~と言いえる社会になれたらどんなに風通しがいいか。
だけど現状では年齢層が高いほど、「家柄」「国籍」「学歴」「育ち」 にこだわる人が多いのもまた事実です。これを打破するのは難解です。
私があるフィルムを見ました。一人の白人が黒人に抱かれているシーンです。双方とも男性で初対面。男性はクー・クラックス・クラン(英: Ku Klux Klan、略称:KKK)といって白人至上主義の人間でした。名前と顔をさらしてそれをいうのは自由です。そして黒人の方はその白人に「なぜぼくを憎むのか?」 と問いました。皆の前で。黒人に対して憎む理由を正々堂々と聞きました。
「肌の色が黒いから嫌いなのか?」
問い詰められた白人男性は次第に回答に詰まります。そして最後に「黒人がどうして嫌いなのかわからない」 と項垂れます。
その黒人はその白人を優しく抱きしめました。私は双方とも顔と名前がわかっているのでそういう会話のやり取りの記録ができたと思っています。
差別の話はつまるところ、単純明快でそういうこと。
それと関連付けて。
なぜいじめがなくならないか……名前を失念してしまいましたが、ある脳生理学者さんの説明が単純明快でした。
「もともといじめる心理が人間にプログラミング、遺伝子に刷り込みがされている」
というもの。そうなのか、と納得できる文面でした。
いじめは人間の持つ本能からきているといわれたら、なるほどとも思うし、そんなあ、とも思う。
もともと優位に立ちたい、という心情を目指す……ならば根絶はむつかしいのか。しかし抑制はきかせるやり方はあるはずです。私たちは原始人ではないのです。文明を持つ人間ならばのやり方でそれなりの抑制方法を探すべきでしょう。
どういう価値観であっても、他人を脅かしたり傷つけることがない限りお互いの主義主張を尊重すべきだと思いますが……。個性も文化もすべてが己の生まれ育った価値観を大事にするあまり、他者を侮ってはならぬと思います。
政治に関してもその延長で同じ時代に生きている限りは対立は避けられないと思っています。戦争もできるならば回避したいが、回避すると侵略される場合はそうはいかないでしょう。
急に話を変えますが日々のっそりと生きている私の老母は単純思考人間ですので、「だからこの世に神様や仏さまがいるのよ。悪いことが続けば厄払いや祈祷をするのよ、お守りを持つのよ」 と言います。宗教問題まで思考を飛び火させますと話がややこしくなりますが、救い主の存在がいると思うことによって理不尽に思える運命に対する哀しみが癒されることもアリかとも……。
いじめは価値観の違いの延長とはいかない。私個人はいじめは犯罪だと思ってますが根絶は本当に難しいです。
元記事は2017年10月20日のニューヨークデイリーニュースより、「君はなぜ僕を憎むのか?」
http://www.nydailynews.com/news/national/protester-hugged-nazi-pleads-hate-article-1.3575977
ハグのフィルムはPolitics 4 Dummies 氏のツイッターからも見ることができます。