第二十話・命にかかわるいじわる運転、あおり運転
私は現在、田舎暮らしの状態です。車がないとどこにもいけないぐらいの田舎です。運転は常に命がけという意識を常に持っています。それでも事故にならなくてよかったと思う故意のいじわる運転にもでくわしたことがあります。あおり運転の話題も広がっていますが、私もされたこともあります。車ではなく、バイクでしたが。
そして私は祖父を交通事故で亡くした経験があります。j祖父の死はあおり運転ではなく、相手⇒車、祖父⇒バイクでした。バイクはヘルメットをかぶっていたとはいっても、車のように金属で囲まれているわけではありません。ぶつかるとダメージ大きいです。祖父はほぼ即死でした。バイクからふっ飛ばされて亡くなったと聞いています。相手は交通刑務所に入りました。故意ではないのはわかっていますが、事故とはそういう展開で収束になってしまいます。
そういうのも見ていますので、運転は慎重派です。長い間ペーパードライバーだったのが、田舎暮らし開始と同時に運転必須になってしまい、最初はどうしようかと思いました。
毎日運転しないと仕事も買い物もできない状態だと、やがて恐々でも慣れてきます。国道を使いますので時間帯によっては他県ナンバーの商用車、運搬車とも行き来します。しかし都会での運転のように渋滞はない。ここまで前提。
一つ目はいじわる運転の話。私が利用した山道の峠あたりは国道でも曲がりくねっています。前方が見えにくい状態になったりします。その前を大型運搬車がいるとよけいに見えないので車間距離を開けて運転します。これは当然ですし、私は怖がりです。一歩間違えたら即死、そうでなくとも大けがはしてしまいます。運転怖い。大雨や雪道はもっと怖い。でも働いている限りは運転しないと職場にいけない。お金がもらえません。
その時は休日でした。休日に子どもが病気をすると田舎なので片道一時間かかる休日診療所にいかないといけません。その時の帰り道で私は大変怖い思いをしました。まだ昼間だったのですが、休みの日は連休以外は大型トラックは見かけないのに、私はその大型車の後ろに続いていました。上がりの道で車体が重いのでゆっくりと速度を落として行きます。
すると曲道にトラックがより減速して私に「先へ行け」 の合図をしてきました。前方が見えぬ状態なので瞬間迷いつつも、ウインカーを出したとたん、反対車線で猛スピードで降りてくる自家用車とすれ違いました。あの時素直に私が追い越しかけようとしたら、確実に衝突したでしょう。
「前のトラック……わざとやったな」
私は真っ青になりました。後部座席のチャイルドシートには熱さまシートを額に貼りつけて寝ている我が子がいます。なんてひどいことをするのだろう。アレ絶対にわざとだ。
大型トラックであれば車体が自家用車よりも高いので曲がりくねっているとはいえ、あの時間だと山道を下りてくる例の対向車が見えていたはずです。私はハザードランプをつけたまま車を止めました。また命にかかわる意地悪をされてはいけませんので。
道は一本しかないので別の道に抜けようとしても無理。やがて私はゆっくりと車を走らせます。車と車の会話はランプや車窓からの手の合図でわかりますが、これはひどすぎる。
トラックがやがてより細い林道を抜けるべく、左折して行きました。だからどういう人だったかわかりません。大型トラックには当然車ナンバーがついていますが、奥にひっこんでいるタイプでしかも泥除けがあって読みにくいというよりも、全く読めないタイプです。意図的にやったとしてもあれだと私が事故ってもそのままやりすごして、前が見えてないのに追い越ししようとした、といえば、その運転手は単なる目撃者です。私の命がなくなれば、それこそ言いたい放題だったでしょう。
この話はあおり運転とはちょっと違う話ですが、以後私は親切そうに「前方へどうぞ」 合図があっても絶対に人気のない山道では合図に従いません。当時は証拠になるドライブレコーダーは高価で手が出ませんでした。
悪意ある人の親切ごかしの誘導にひっかかれば私と子供の命がなくなってしまう。相手は何の気なしにしたのかもしれませんが、私はその顔も名前も業者名もわからぬ大型トラックの人が怖いです。
二つ目。あおり運転は私の場合はバイク、暴走族ぽい人にやられました。国道を走っていたら恐らく私が女性ドライバーでその時は原色の目立つ車だったからだと思います。二、三台でまわりを囲まれまして、交互に運転席の私の顔を覗き込むようにされました。後ろにぴったりついているバイクも。追突されそう。私がゆっくり減速すると交互に座席を覗き込んでいたバイクは興味がなくなったのか(私が年寄り、不美人、貧乏そうな外観でよかったとつくづく思う)急に追い越されました。そしてバイクの人たちはバイクの座席からお尻をひょいとあげてそのお尻を左右に振る。あれはバイクの人用の「あざけり」 ?かな?
でも解放されて私はうれしかったです。これも人目につかない田舎道。一歩間違えたら惨事になります。どこかに連れ込まれてもお金を取られても困る。何よりもそんな非常識な振る舞いをする輩と接触事故を起こしても困る。どうかかわっても困るのです。
車はないと困る便利な道具ですが、あればあったで何らかのストレスの解消で暴走したり、意地悪する人がいるのが困りもの。
今年は平成二十九年の六月にあおり運転で夫婦が死亡、この事件は社会的に大きく報道されましたが、最初は単なるベタ記事扱いでした。特殊性がなく単なる穴埋め記事扱いだったらしいですね……しかし、亡くなった被害者夫婦がとっさに「追い回され、車線変更しても前に入られブレーキ。最終的に停車」 というメモを残してたそうです。これ、対バイクでも私もやられてましたからね。実際後部座席にいた娘さんもラインで友人に「怖い」 など訴えていたそうで、そりゃそうだわ……本当に犯人が逮捕されてよかった。犯人は最初事実と全く逆のことを警察にいっていたそうで……あやうく死人に口なしにされるところだったのです。逮捕されて本当によかった。忘れ形見の娘さんも生き残ってよかった。
被害者のあのメモ……自動車運転をしているひとならば追いかけまわされるというのはどんなに怖いものかわかるでしょう。一瞬で人生が壊れる可能性を感じるのです。ジェットコースターの怖さなんか比べ物にならないですよ。しかも高速道路上だし。犯人は最初言い逃れをしていたし、これは結果的に殺人をしたといっても過言ではないと思います。
私も渋滞中の高速道路でクラクションを鳴らしたり、無理な割り込みをする人がいるのはしょっちゅう見かけます。雄大な気分で運転をというのは無理でも最低限、事故ルとどうなるか、ということをよくわきまえてほしいです。車はオモチャではないでしょう?
三つ目の話もついでに。これも田舎道での話。でもいじわる運転の話ではない。
そこは昔小学生が横断中に轢かれて死んだ事故現場でした。なので車の歩行量が少ないながらも、信号が設置しています。また事故後、小学生の集団登下校に必ず信号のところで保護者やボランティアが見守るようになりました。そういう道での話。その日は天気のよい昼下がりでした。見通しはよい所。
私は横断歩道の前で赤信号のため、停止していました。対面の車がゆっくりと減速して停止、と思いきやいきなり九十度といってもよいぐらいの角度で曲がり、横断歩道を乗り越え川の柵を超え、川に落ちました。あまりのことに私はびっくり。ドライバーを握ったまま固まりました。横断歩道で青になった側の車には幸い当たらず、歩行者もいず、誰もいない状態で本当によかったです。しかしあれは減速していきなりスピードを出して急角度で曲がって柵を飛び越えていった、一体アレはなんだろうか?
へしゃげた柵ってあんなに簡単につぶれてしまうものなのですね。頑丈な金属なのに。同時に青側になった車は勝手にさっさと行きました。多分かかわりあいになるのを恐れたと思っています。
やがて私が停止している側も青になりました。私は対面していた手前、相手が川に落ちたので警察に通報しないといけないと思い車を歩道に寄せ、ハザードランプをつけて停止しました。後続の車も私同様見ていた筈なのに、さっさと通過していく。一瞬私も見なかったふりをすべきかと思ったことを告白します。
でもまあ通報しました。そして目撃した周囲の店舗の人が店の服や作業服のままで集まってきました。現地で働いている人の方が人情ありますよ。私は警察に通報し、川に落ちたことを告げますと、警察は堤防まで行ってどんな状態か確認してくれといいます。私は川になんか下りれません、というとぎりぎりまでいって見てくださいと。くそー。確かに救急車が必要かどうかのチェックぐらいはすべきです。見に行きました。
でも川に直接ドボンではなく、細いながらも川沿いの細い道に落ちたようで本人がドアから出ていました。二十代から三十代の男性です。足取りはよろよろです。表情までは目が悪いので見えないですが、私は何か薬物をヤッていたなと感じました。でも憶測でモノをいってはいけないので、警察には生きて自力で車から降りていますと言いました。救急車は不要でしょう。集まってきた人々のうち、一人が私に向かって「あなたの車がなにかをしたので驚いて車を方向転換して川に落ちたのか」 と言いました。私は大変ショックを受けました。横断歩道を前に、私が事故車から一番近い場所にいたからでしょう。ひどい言いがかりです。事故のかかわりを皆が避ける理由がわかるというものです。私はすぐに首をふって違う、と言いました。
「赤信号で停止するかと思いきや、急に曲がって川に落ちていきました」
私は警察にもそう言いました。若い作業服姿の男性が川に下りていって当人に話しかけています。応答しているところまで見届けました。結局原因は不明で終わりました。
今年、高速道路で急に対向車が防止柵を乗り越えて飛び、バスと衝突した事故がありましたが、運転手は即死、バスの方は運転手の機転で乗車していたひとは全員命には別条有りませんでした。その時も原因不明で終わったかと思いますが、その報道を見て私も危なかったと思いました。
事故を起こした両男性とも、いわゆる危険薬物とは一切かかわりがなかったとしたら、アレはなんだろうか。急に方向転換して自ら死に向かってダイブしたということですよ。どうしてだろうか。
狭い敷地内での急な竜巻がおこり、車がひっくり返る現象が不可解にありますが、これと似たような感じでピンポイントで人の感情をコントロールさせるなにかがあるのでは……と思う一件です。オカルトめいた話は私は嫌いなので、事故死した小学生が、ということは絶対にない。
でも人の行動は常に死と隣り合わせですよ。私は怖いながらもとおりゃんせ……で毎日を車を運転しています。
◎◎◎第二十話のまとめ ハンドルを握れば全世界は俺のものではなく、譲り合いです。 あおり運転はじめ、運転にかかわるいじわるは、事故に即つながります。私は殺人未遂犯だと思っています。 ◎◎◎