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第十話・知的障碍者にかかわった思い出話

トイレ関連話があるので、食前、食後の人は読まないでください。



 今回の話は筆を押えます。私は他人様を悲しませようという意図は一切ありませんので、この書き方はおかしい、傷つくということがありましたらどうか遠慮なしで教えてください。同時に「こういう書き方ならば許せる」 とあわせて教えていただけるならば大変助かります。

 再度小学生時代に戻ります。Hさんという女の子がいました。軽い知的障碍がありましたが、特別クラスに入るほどではありません。登校しないときもあってクラスにあまりなじんでいませんでした。大人しい女の子でいつもにこにこしていますが、突然怒ったり泣いたりします。そしておもらしをします。でも私もあまりしゃべらないし、ほぼ会話はありませんでした。Hさんは機嫌が悪くなると運動場のすみでうずくまって動かなくなったりします。その機嫌が悪くなるポイントが私にはわからない。先生からHさんを見てやってと頼まれたりはしたが、困ったこともあります。

 ある時スケッチの時間だったと思います。私とHさんとその他二名とは運動場で写生をしていました。ところがHさんが私たちにはわからぬ理由で機嫌を損じました。Hさんは機嫌が悪くなると、教室のすみに行ってじっとするのです。でもその時は運動場だったので、すみにあるブランコの後ろに引っ込んでしまいました。当時はどこの学校でもあった二宮金次郎の銅像の後ろと樹木の間にはさまっています。

 私たちははっきりいって「またか……」 と思いました。経験上、Hさんが動かなくなるとずっとそのままです。両手で優しく手をひいてもひっこめるし、両脇を二人でかついでいこうにも今度は座りこみます。もう少しHさんの怒りランクがあがると寝転がります。興奮するとおもらしもしちゃうので、私はHさんの濡れた下着を足元まで下ろす感覚を覚えています。先生はそういったグループ行動を取れない生徒もまわりの大人しい生徒まかせにしていたところがありました。でも私たちはどうしてよいかわかりませんでした。

 寝転がるランクまで行くと、先生を呼んで抱っこというか袋担ぎにして保健室に連れて行ってもらいます。

 

 Hさんは興奮がなければ、普段は本当に良い子で発語はなくとも、お花を摘んで花輪を作ったり、絵を描いて穏やかに遊べたのです。でもやっぱり小学生、そんなHさんを目の敵にしているコもいました。クラスのIさんです。Iさんは背が高く、気が強いので男子も一目置いているところがありました。しかしHさんを邪魔にしていました。ある時、Hさんが機嫌を損じて教室のすみにいたとき、私たちグループは「ああ、またか」 と思ってそのままにしていると、IさんがHさんのところにいって「どうしていつもそうなのよ」 と怒りました。Hさんは怯えてしまいおもらしをしてしまいました。私は保健係でもあったので、Hさんを保健室に連れて行こうとしたのですが、例によって動きません。

 Hさんはその時以来、私のそばからはなれなかった時期があります。とばっちりもありました。林間学校……夜に肝試しといって山道を通ってお菓子を取りに行くときも、Hさんはおもらしをしてしまいました。暗い道が怖くてHさんは動かない。例によってグループになってしまった私はHさんをひきずるようにしてゴールをめざしました。人工火の玉を目のはしにして、重たいHさんの体重を感じつつ歩いた思い出は今にしては懐かしいです。もう限界だと思った私が、一緒に幽霊に殺されてもいいのかと聞くとHさんは急に軽くなりました。歩いてくれたのです。

 林間学校なので十人一組ぐらいの部屋になり、部屋長だったIさんは、おもらしをしてしまったHさんに怒り、私を含めたグループごと部屋に入れてくれませんでした。先生の見回りもあるので廊下に寝ないですんだのですが、困りました。こんな状態なのに先生の介入はありませんでした。先生が男性だったこともあったでしょうが、もうちょっとHさんの扱い方というか、Iさんへの注意、対処の仕方を教えてくれたらよかったのにと思います。

 現在でも面倒くさがりな教師だと、手のかかる子どもを他の大人しい子どもに面倒を見させるということも聞いています。情操教育に良い、弱いものにもかかわることを覚えさせようという言い分は、言われなくともわかるけど、子ども任せにするのはおかしい。もし何かあったらどうするのでしょう。子どもに他の子どもの面倒を見させたいならば、最低限万一の対処法、困ったら誰に言うべきかなどを教えるべきであると思っています。少なくとも私に対しては指導は一切なかったです。

 現在でも集団行動を取れるか取れないかのボーダーラインの子供たちは多いです。私もまたそのラインだったかもしれません。しかし、皆と一緒にしないと恥ずかしい、みっともないということを母から徹底的に教えられていたのでかろうじてついていける状態でした。あまりヘンなことを口走るので「考えたことを言葉に出してはいけません」 と言われていたので、私もまた発語なしでした。母の教育法はある意味正しいがある意味、間違ってもいました。これに関しては別の話で後述します。(そういうわけで私はかなりひねくれた精神的成長をしています)


 長じて医療職になりましたが、職務の一環で知的障碍者に対する虐待も見聞きしました。ある障碍者を緊急入院させて着替えさせたら生傷だらけ、ということもあります。病状が軽度になったときに、社会生活復帰をめざしえ外泊をさせていたのですが、帰院するたびにケガをしている。その人は言葉が話せる人でした。なので興奮させずかつ、数日かけて聞き取りをしました。結果、未婚の弟さんが「お前のせいで俺は一生結婚できない」 と暴力をふるっていたのが判明しました。でも本人にとっては、そこしか帰る家がないのです。しかし結局どうにもならず、施設収容になったかと思います。

 別件でかわいい子どもなのに、後遺症が残るほどの虐待をして脳外科に入院させたケースもありました。そこではネグレクトもあって見舞いにも来ませんでした。それなのにある日突然子どもを家に返せと、母親が看護師に暴力を振るって逮捕されました。母親の言い分は子どもを引き取りに来たのに、看護師が嗤ったという理由でした。しかし推測ながら恐らく虐待者であろう当の母親よりも、時々見舞いに来ていた祖母の態度がひどく、罪は罪でもこういう人に育てられた母親もまた被害者ではないかと思いました。

 詳細は書けませんが、何回も見舞いに来ていた祖母の方が善いようにみえるが違うということです。新聞やテレビで報道されるような事件も、裏にはもっと責められるべき原因や人間、環境があったかも、ということです。


 今回はぱっと見ても、真相は当事者以外は誰にもわからぬことがあると書きたくてUPしました。






◎◎◎ 第十話まとめ ⇒ 知的障碍者がいたらその仲間ごと、ハブられる経験をしたことから踏まえ、先生は子どもに子供の世話を丸投げするなという話。それと虐待事件の影や裏には世間には見えぬ真相があるという話。 ◎◎◎



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