文鳥のぶんちゃん
先日、大事に大事に育てていた……文鳥が亡くなった。
はじめは実感なんて湧かなくて、ただ寂しいと思っただけ。
だけど、ある日、文鳥のお墓を庭につくりに行く時、母が本当に悲しそうに寂しそうに言ったんだ。
「ぶんちゃん、今までありがとうね……」
その言葉を聞いたとき、私の胸はギュッと締め付けられて泣きそうになった。
私の弟がホームセンターで唐突に飼いたいと駄々をこねて、それから長いもの一緒に育ったぶんちゃん。ぶんちゃんのお世話は、弟は数日で飽きた。そのあとを引き継いでお母さんが一生懸命面倒をみていたのだ。最後は、エサも水もあまり摂らずにやせ細って亡くなった。その日は、信じられないという驚きと今まで一緒に暮らしてきた仲間が一人減ったような……複雑な気持ちでうめつくされた。
それから数日後のことだっただろうか。ペットの柴犬が、いつも通りリビングに来て様子を見るのである。ぶんちゃんが居た場所を。そっと覗くのである。だから、私は言ったのだ。
「もうそこにぶんちゃんはいないんだ……ごめんね」
「わかるのかな……そこにぶんちゃんが居たって、覚えてるのかな…………?」
母は、呟くように言うと、そっと涙をこぼした。