始まりの冬 1
(どうしよう...)
先月買ってもらった鈍色に光る自転車にまたがり、眼下を流れる二流河川を見つめ、心の中でつぶやく。
傍
かたわら
を大小様々な車が通り過ぎて行く。
ヘッドライトの光がほおをかすめる中、ペダルを漕ぐことすらわすれて俺
・
は滔々と、いや、のっぺりと流れて行く水に目を向けていた。
やがて、
「どうしよう」
白い息と共に、今度は声に出た。
いっそ、このままここでこうしてるのもあり、、、か?
だが、このままでは埒が明かないし自殺志願者に間違われ面倒なことにもなりたくない。
結局、自転車からおりて遊歩道の橋の上を、冬の寒さで凝固しかけた川よりおそくあてなく歩き出した。
俺は一人だった。
けれど、周りに人がいなかったわけではない。
勉強も部活もできた俺は友人に囲まれ、認められ、毎日がとても楽しかった。
けれど、それでは自分には足りなかった。
俺は周りにいる友人みんながみんな仮面をかぶっているように見えたんだ。家族も、例外ではなかった。
なぜそんな風に見えてしまうのかはわからない。
ただ、心からみんなを認めることはできなかった。
俗にいう、「チュウニビョウ」だったのかもしれない。
けれど、信じることがてきないのは事実で、心なし、本当に無意識のうちにみんなを遠ざけてたんだ。
しばらく無心で歩いた。
もうずいぶんと遠くまできたものだ。
尻ポケットの中の携帯が振動を発する。
家出してからこれで五度目。
もう嫌でも誰からの電話なのかわかる。
メールはもう数しれない。
意地になって、無ず痒いのも我慢して鳴り止むのを待った。
気がつけば、今回の家での元凶となったあの忌まわしき学習塾の前にきていた。