1/5
0 帰還の冬
季節は冬。山脈を駆ける風が、山肌を伝い滑り落ちる。その先には森があり、乾いた冷やかな風は木を撫でながら、麓の村を吹き荒らす。
その風と共に山を下るのは、無数の羊や馬などを連れた遊牧民だった。馬に荷物を運ばせ、彼らは森の中を流れる川に沿ってゆったりと歩きながら、時々動物たちを休ませる。
彼らが来ている毛織物の服には同じような模様が刻まれていた。それは、彼らが一族である証である。
そして、向かった先の村の入り口にも、同じような模様が刻まれていた。木々に囲まれたその村に入ってすぐに広場があり、その向こうには森の木で作られた家々が立ち並んでいる。その向こうに、この村人たちを養う畑とそれを潤す湖があることを、彼らはよく知っていた。
彼らがそこへ着くと、広場で遊んでいた子供たちが急いで大人たちを呼び始める。やがて、この村の長老がやってきて、彼らを快く歓迎した。
これが一年に一度、村人と遊牧民との間で行われる、交流祭の始まりである。