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ただいま開店準備中 4

「精霊使いを見たことがあるんですか?」


後ろでまとめて垂らした髪をその場で素早くまとめ上げ、あとはショールを被るだけにして、私は店員さんに尋ねた。


精霊使いは資質を持つ者が稀なため、魔法使いよりも圧倒的に数が少ない。普通に生活をしていたら、まず出会うことはないはずだった。


珍獣なみに希少な精霊使いは引く手あまただ。準貴族扱いの彼らの多くは、神殿や国のお抱えになっている場合が多い。そこいらをフラフラと歩いているわけがないのだ。


今さらダンジョンに潜って肉体労働をする、物好きな精霊使いがいるとも思えないし、彼女はどこで見たのだろうか。


その私の問いに答えてくれたのは、いつの間にか側に立っていたイルクさんだった。


ちょっと、いや凄くびっくりした。思わず飛び上がりそうになった。大きい体の人はのっそりと動くイメージがあるが、イルクさんは意外と敏捷らしい。静かに動く人だな。今足音しましたか?


「そういえば二、三年前に王室お抱えの精霊使いが来たことがあったな」


「ええ、ダンジョンの視察に来られたんですよね」


なるほど。ダンジョンは国家間で、それを巡って戦争が起こってしまうほど貴重な資源だ。この町には騎士団が常駐しているくらいだし、王国お抱えの精霊使い様がダンジョンの結界がきちんと機能しているかを見に来たとしてもおかしくはないか。


この町は作りがずいぶん変わっていて、普通ならば町外れや町の外にある筈のダンジョンが町の中心にある。


というか当時の王様が、ダンジョンを中心に町を作っちゃったのだ。町の中心部にひときわ高くそびえる魔封じの塔、それがダンジョンへの入り口です。


塔自体が目立つ場所にあるから、当然のこと出入りする人間も人目につく。よそのダンジョンのように、こっそりと入るのは無理なのだ。


その精霊使い様とやらも、きっとすごく目立ったことだろう。店員さんやイルクさんが知ってるのも、そういうわけだ。


「まだ若いかたで、綺麗な青い髪をしていましたよ」


青かあ。単純に色で考えたら、水の精霊使いかな?


ちなみに私は、御先祖さまが盟約を交わしたという自分の守護精霊を知らない。かなり昔のことなので、いまとなっては精霊の真名も失われてしまい、誰にも呼び出せないのだ。


そもそも見えないことには、目の前にその精霊がいたとしてもコミュニケーションを取りようがないんだけどね。


しかし今さらだけど、守護色がピンクってどんな精霊なんだろうか。護られているのに、どんな効果があるのか未だにさっぱりわかりません。


髪色が人より派手で目立つこと以外に、とくに運がいいとかの自覚もないし、守護の内容がさっぱり想像もつかないのだ。


単に 《目立つ》 とかだったらいやだな。


しかし精霊の愛し子とは言われているものの、守護の効果がわからないって……我ながら微妙すぎる。せめて違う色だったらよかったのにな。


土の精霊や闇の精霊みたいに、落ち着いた色がよかったな。髪色としては一般的だから、一見して精霊の愛し子とは気づかれないし。


火の精霊でもいいかもしれない。イルクさんみたいに綺麗な赤毛に変わるのも悪くない。


ちらっとイルクさんの頭を見上げる。派手は派手なんだけど、イルクさんの髪色はガーネットみたいで綺麗だ。


まあ、ピンクよりはなんだってマシってことだな。




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