↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/9

閑章

「嬢ちゃんは、どんな服が好みだ?」

 コンクリートでできたマンションの一室は、標準的なものだろうが、少年はいつまでも珍しそうな顔をして眺めていた。寝に帰るだけでなにもないタケミの家は殺風景で、必要最低限の家具家電しかない。缶ビールしか入っていない冷蔵庫に、少年は目を見開いたものだ。

「服なんて、わかりません」

 眉を寄せて首をかしげる。少年は衣服を身につけておらず、すらりとした肢体をむきだしにしていた。しかし、その肌の色に生気はない。

「タケミさん、メンテナンス中ですよ」

 服よりこちらの方が重要だろうと、少年がとがった声でたしなめる。タケミは少年の顔を見ないまま通販カタログのページをめくった。

 機械に侵されすぎた彼の人形めいた身体と、向き合いたくなかった。

「お前の顔は綺麗なんだから、綺麗な服を着るべきだろ。もったいねえ」

 わざとらしくふざけた調子で言うタケミに、少年も苦笑する。

 金に余裕のないマスターがサイボーグにしてやれることなど限られている。いつかのようにタケミと共に死線に立つことなどもうできない。戦闘用のサイボーグはもうそこにいなかった。ただかろうじて歩行と会話ができる程度の、人形のような少年が横になっているだけだった。

 タケミさん、と少年が声をあげる。その声色でタケミは次に言われることがわかってしまって、目を閉じて大きく息をつき、ゆっくりと少年を見た。

 いつか見た、寂しそうな笑みがあった。

「ねえ、タケミさん。僕の体はもういよいよ、ダメです。人間の部分はほとんどないし、タケミさんの仕事をお手伝いすることももうできない。タケミさん、もう一度、お願いします。少しでも人間であるうちに、僕を殺してください」

 ああ、そうだな。

 タケミは目を閉じてため息のように呟いた。

 彼がここに死にに来たのだということを、忘れていたがった自分をわかっていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。