エピローグ
入学してきたルイも共に過ごすようになった学園生活最後の一年は、思った以上に賑やかだった。
婚約者になったので、私とスウェン様は名前呼びになり、ルイとスウェン様も名前呼びになった。
ライナス殿下も「これだけ一緒にいるのだから、名前で呼んで構わない」との事だったので、お名前で呼ばせていただいている。
いつものガゼボで、何故だかいつもルイとスウェンが張り合っている。
「姉さんはスウェンには勿体無いから、うちに返してもらう!!」
「シスコンは見苦しいぞ。ソフィアを見てみろ、昔から私ばかり見てくれているではないか」
「僕だって!生まれた時から、姉さんに大事にしてもらってる!!」
スウェンにガルガル食いついていくルイと、ヒラリと片手を上げ余裕満々自慢げに言い返すスウェン。
何故、こんな事に。
「貴女の一言で、この国の天才2人が動く。傾国の美女とはこのことか」
ボソリとライナス殿下が呆れたように的外れな事を言う。
ルイは、スウェンに初めて剣で負けて以来、スウェンに追いついていない部分を全力で追いかけているようだった。
彼は昔から出来が良いだけに、近くに目標となる人やライバルがいなかったから、とても良い傾向だと思っている。
逆にスウェンは涼しい顔をしつつ、ルイに追い付かれないようにこっそり全力で引き離そうとしているのを知っている。
大好きな二人が切磋琢磨し合う様子が嬉しくて、ニコニコと見ていた。
◇ ◇ ◇
そんなこんなでドタバタしているうちに第四学年が終わり、卒業してすぐ結婚式とその後の準備をするため、ローウェル伯爵家に通うようになった。
義両親は誠実そうな穏やかな方達で優しく接してくれたし、スウェンの妹さんとは今や友達のような関係だ。
学園で没落時に距離を置かれた人達とは友人に戻れないが、卒業してからは私の歳の上下の世代と多く交流を持つようになった。
どうやら上の世代には「没落した家を支えた健気な令嬢」、下の世代は「第二王子殿下に選ばれた見目も麗しい天才、ルイ•ダーレンの姉」というイメージがあるらしい。
ローウェル伯爵家に通うと、私限定、スウェンの赤面沈没ポンコツ具合が伯爵家の家族に露見し「結婚するのにそんなんじゃどうにもならないでしょう、少し慣れなさい」と、時折ふたりきりの触れ合いの時間を強制的に取らされた。
私もイマイチ婚約者の触れ合いがよく分からず、プルプルと赤面しながら私の手を握るスウェンをぎゅうっと抱きしめる時間になったが、スウェンの鼓動と体温を感じられる、好きな時間だった。
少し腕に力を込めて私をぎゅうっと抱き返したスウェンは、よく私の肩口に顔を埋めて深呼吸していた。
肩に触れる彼の頬が、熱かった。
結婚式は、ライナス殿下の出席やローウェル家の顔の広さもあり、盛大なものとなった。
真っ赤なお顔でギクシャクと私の手に触れ、カチコチに固まって誓いのキスをするスウェンの様子に、クールな顔で何でもこなす彼しか知らない参列者は、目を丸くしていた。
その夜は、照れ屋が突き抜けていて治る見込みの無いスウェンに私が押し倒そうかと本気で考えていたのだが、スウェンが色々なものを総動員して頑張ってくれた。
途中からは記憶が朧げで勿体ないが、スウェンは隅から隅まで美しかった。
婚約前は、スウェンと同じクラスで過ごしても、離れてそっと見ているだけだった。
それだけでもその姿は憧れで、没落して必死に生活しながらも、学園でスウェンに会えることが心の支えだった。
学園を辞める覚悟をしてからは展開が早く、目を回している間にスウェンと婚約者になって。
沈着冷静で何でも出来るキレイな人形のように見えていたスウェンは、とても温かく血の通った人間らしい人で、すぐに真っ赤になってテーブルに沈み、ポンコツになった。
私を、好きでいてくれた。
窓からの光に瞼を開けると、目の前のプラチナブロンドがキラキラと陽の光を反射させている。
白い肌に整った顔立ち。その閉じた瞼の下には、深く冷たい澄んだ湖を連想させるアイスブルーの瞳があるのを知っている。
それは、私を見つめると温かみを増し、昨夜のように時には熱を孕むのだ。
イマイチ現実感が無くて、そうっとスウェンの頬に触れる。
ぼんやりと薄く目を開け、そのアイスブルーの瞳を覗かせたスウェンが、ぎゅうっと私を抱きしめた。
そのまま、またスースーと聞こえる寝息に、私もスウェンの胸板に顔を埋める。
彼の体温と鼓動に息を大きく吸い込みながら、私も再び目を閉じた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!




