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没落令嬢の大逆転〜天才弟の未来を掴もうとしたら、推しの様子がおかしいのですが〜  作者: たんぽぽ


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01

 荘厳な門の向こうにそびえる校舎。ここシルナリス学園は、13歳から16歳までの貴族の子が通う、由緒ある学園である。

 勉学に励み、剣を収め、縁を結び、16歳で成人を迎えた子供達が卒業と同時に大人社会に羽ばたいていくのだ。


 そんなシルナリス学園に、一際目立つふたりがいた。

 ひとりは、第三学年、ライナス•エルヴァリア第二王子。文も武も卒なく収め、黒髪に金の瞳の美しい容姿は見る人を惹きつける。性格は明るく気さくで、人うけも良い。

 もうひとりは、同じく第三学年、スウェン•ローウェル伯爵令息。歴史の古い由緒ある伯爵家の嫡男で、小さい頃から文武共に頭ひとつ抜いて優秀だと噂高い、若いながらに実力のある人物だ。プラチナブロンドにアイスブルーの瞳、顔立ちも中性的で美しい。


 スウェン•ローウェル伯爵令息はその能力を認められ、幼少期より友人兼側近として第二王子と行動を共にしており、学園でもふたりはいつも一緒である。




 「はあぁぁ…!!今日も眼福、カッコいい…!!!」


 私は、ソフィア•ダーレン。いつもライナス殿下に寄り添っているスウェン様を拝見しては癒しと潤いをもらっている、彼らのクラスメイトのひとりだ。

 特に話しかけたり目を合わせたりせず、離れてそっと眺めているのが丁度良い。


 窓から入る陽の光を透けさせてキラキラ光る、背中でひとつに括られた長いプラチナブロンド。クールな彼の性格にピッタリな、深く冷たい澄んだ湖を連想させるアイスブルーの瞳。中性的で美しく整ったお顔。剣術も長けていると言うだけあって引き締まって均整の取れた体躯。学園の制服がとても似合っていて、毎日見ていてもずっと見ていたい。気持ち悪いと思われたくないから、そっと気付かれないように見ていたい。


 没落していても貴族たるもの、心で悶えても顔には出さない。あぁ、今日もスウェン様を堪能した。この後も頑張って働こう。

 学園の就業の鐘が鳴り響き、労働に勤しむべく学園の門をくぐり、平民街に向かった。



 私の家、ダーレン伯爵家は農業がメインの伯爵領を持ち、今までそこそこ上手く領地経営をしていた。代々先祖も両親も領民に寄り添い、信頼しながら力を合わせて生活して来たのだ。

 一年前の、高温と長雨による歴史的凶作に見舞われる前までは。


 歴史的凶作による大赤字の財政を立て直すため、屋敷の使用人は紹介状を付けてほとんどを解雇し、今は節約に節約、貧乏に貧乏を重ねた生活だ。

 父は執事長とメイドをひとり連れて、伯爵領現地で立て直しの指揮を取っている。

 母はメイド長と王都のタウンハウスに残り、王城との手続きやこちらでしかできない執務を一手に請け負っている。

 私は王都の学園に通っているのでタウンハウス、下の弟妹4人も母と姉と一緒に暮らした方が良いだろうという事でタウンハウスだ。

 タウンハウスで生活しているのは、母、メイド長、子供5人。女子供だけで過ごせる王都の治安の良さ。ありがたや。


 執務や手続き等は成人前の私にはできないので、とりあえず私の目標は、良い成績で学園を卒業して給料の良い王城の文官になる事、来年学園入学予定の弟の学費を稼ぐ事だ。


 私の弟、ルイ•ダーレンは3歳下の12歳で、金髪碧眼、姉の私が言うのも何だが美少年の類である。彼は見た目だけではなく、幼少期から非凡な頭脳明晰さを発揮し、剣術にも長けた天才児だ。憧れのスウェン様と並ぶ、将来を期待された逸材だった。

 今は家で弟妹の子守りをしながら独学で勉強をしているが、学費が足りなくてルイがシルナリス学園に行くことのできない事態だけは何としても避けたい。

 努力して成績を維持している平凡な私と違って、彼は学園にさえ行くことができれば将来を約束されたも同然の、天才児なのだ。


 と言うわけで、今日も学園帰りに平民街に行き、労働に勤しむのだ。

 待っていて!ファナリス食堂!!



 学園帰りに働かせてもらっている、平民街のファナリス食堂。

 家族経営している食事処で、品目も多く美味しいと評判の食堂だ。食事が中心の品目だが、お酒を飲むこともできる。


 キッチンで料理の腕を振るっているのは親父さん、ホール担当はおかみさん。彼らの一人娘は地元の学校に通っているが、放課後や学校が無い日は店を手伝っている。

 道沿いにいつも美味しい料理の匂いを漂わせているこの食堂は、特に夕方から繁盛しすぎて手が回らなく、娘に私を加えたフルメンバーで回転させている。


 「ソフィア!待ってたよ、早く!早く!」


 既に三角巾にエプロン姿で、左手に料理を載せた大皿、右手にビールジョッキを3つ持った一人娘のキャシーが、パッと顔を上げて私を呼んだ。


 「ちょっとだけ待ってて。急いで着替えてくる!」


 キャシーは、私と同じ歳の15歳で、気が合って今や身分関係なく友人でもある。

 キッチンの横から小さい休憩室に入り、急いでキャシーと同じ三角巾とエプロンをつけてホールに戻る。


 「ソフィアちゃん、鶏肉の香草焼きをビール付けてセットで!」


 「お姉さん、こっちも注文!ポテト&ミートオムレツをセットでふたつ!」


 次々と注文を受けてはキッチンの親父さんに伝え、両手に料理とお酒を持ってテーブルに運んでいく。私も常連のお客さんも慣れたものだ。


 閉店ギリギリまで賑わって、ひと段落ついた頃には全力を尽くした戦いの後のようにくたくただった。


 「ソフィアちゃんお疲れ様。今日も助かったよ。ソフィアちゃんは可愛くて元気で接客上手だから、本当にお客さんウケが良くて。」


 もう、うちの看板娘だね!と言うおかみさんに、一人娘のキャシーがむくれて言う。


 「私も看板娘なんですけどー」


 私もキャシーに全面同意だ。

 キャシーは、女子として平均的な身長で、二つ結びの薄茶の髪、顔にはそばかすがあり、くるくる変わる表情が魅力的の愛嬌の良い可愛い子だ。

 私は家の予算と忙しさに、しばらく手入れの出来ていない、櫛を入れるだけの金髪は色が抜けたようなパサパサさだし、顔も手も似たようなものだ。とても看板娘にはほど遠いように思える。


 「ソフィアちゃん、今夜の持ち帰りの料理は用意出来てるから、持っていってね。」


 「いつもありがとうございます!ここの料理は美味しいので、家族みんな喜んで食べてます!」


 学園帰りにここで働かせてもらって、従業員割引で家の夕食を買って帰る。ここまでが毎日のルーティンだ。

 大人2人と子供5人分の夕食をよっこらしょと持ち上げて、帰りの挨拶をしてから食堂を後にした。



 食堂からダーレン家のタウンハウスまでは少し距離があるが、徒歩で帰れないほどではない。街灯もあるので両手にみんなの夕食を持って、てくてく歩いて帰る。

 今日はいい天気だったので、夜空には綺麗な星々が瞬いている。屋敷と屋敷の隙間から三日月が見えた。

 王都の治安は良いので、こんな暗い夜道も不安無く歩いていられる。ありがたや。

 お腹を空かした弟妹たちの顔や、明日の学園の授業、今日のスウェン様の麗しいご尊顔や立ち振る舞いのひとつひとつを思い出しながら家路についた。

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