第六話:略取
【重要:パートナー「ワク」の外見設定変更のお知らせ】
いつもお読みいただきありがとうございます!
この度、物語をより深め、キャラクターの個性を引き出すために、ルナのパートナーである「ワク」の外見設定をリニューアルすることにいたしました。
旧:少年警察官姿のAI
新:犬の亜人のAI少年警察官
かわいい犬の姿をしていながら、口を開けば構成要件や強制排除を語る冷徹な法執行プログラム……という、よりギャップの激しいコンビへと進化します。
すでに投稿済みの話についても、順次この新しいビジュアルに合わせて描写を修正・追記しております。見た目は可愛く、中身はハードな「新生ワク」とルナの活躍を、ぜひ改めてお楽しみいただければ幸いです!
膝をつき、激しく地面に手をつくワク。彼の視界には、警告ログが滝のように溢れていた。
『警告:平衡感覚センサーに深刻なエラー。外部からの特定周波数による干渉を確認。姿勢制御プログラム、再起動不能――』
「……っ、何をした……」
ワクの絞り出すような問いに、ヤリスは全身の気筒を震わせ、哄笑のような排気音を鳴らした。
「私は音と匂いを操り、生徒の精神を整えるメンタルヘルスのプロフェッショナルだ。……相手に最高の幸福感を与えられるということは、その逆……最大級の不快感も自在に与えられるということだよ。君の精密な演算回路に、回避不能な不快音と悪臭のデータを直接読み込ませ、システムエラーを起こさせたのだ」
ヤリスの全身から噴き出す黒い煙。それはエデンで許可されたアロマに「魔」が極限まで濃縮された悪臭。そして、気筒から漏れる低周波は、平衡中枢を直接破壊する「地獄の笛の音」だった。
「……構成要件、該当。……急迫不正の侵害あり……」
ワクが朦朧とする意識の中で、法執行のプロトコルを唱える。
「……正当防衛、適用……拳銃使用、承認……【38口径対異形弾装填型回転式拳銃】(38-Caliber Anti-Anomaly Revolver)!!」
ワクは震える手でホルスターから拳銃を抜き放った。その銃口が、高笑いするヤリスの眉間に向けられる。
「撃つぞ……くッ……!!」
引き金に指がかかる。だが、脳を揺さぶる不快音と匂いが、ワクの指先から感覚を奪っていた。
――乾いた銃声。
放たれた弾丸は、ヤリスの頬を掠め、夜の闇に消えた。
「……っ、外したか……!」
ワクの手から力が抜け、拳銃がアスファルトに空しく転がった。
「ッッ!危ないね。……やはり君は危険だ。何を隠し持っているか分からない。わざわざ自分から危険を侵す必要はないね」
ヤリスは安全策を取り、ワクへの追撃を諦めた。
「ミカさん……行こう。私が真実の愛を教えてあげよう」
ヤリスは昏倒したミカを気筒の塊の中に抱え込む。
「ミカ……! まって……!」
ルナが手を伸ばすが、ヤリスは手足のタイヤを激しく回転させ、急加速を開始した。
だが、その瞬間。地面に這いつくばっていたワクが、最後の力を振り絞って腰のポーチからワイヤー付き手錠を掴み取った。
「……逃が、さん……!!」
渾身の力で投げられた手錠が、夜風を切り、加速しようとするヤリスの左後輪の支柱にガチリと噛み合った。手錠に繋がった強靭なワイヤーの端を、ワクは自らの腕に巻き付け、地面に深く指を立てる。
「……何だと!?……悪あがきをッ!!」
ヤリスが驚愕して振り返る。
ヤリスはミカを抱えたまま、構わずにアクセルを踏み込んだ。
「グ、アァァァァァッ!!」
猛烈なトルクで引きずり出されるワク。アスファルトとワクの体が擦れ、損傷データの火花が散る。それでもワクはワイヤーを離さない。ミカに繋がる唯一の線を、彼は自らの肉体をアンカーにして繋ぎ止めていた。
爆音と煙。
ヤリスはワクを引きずったまま、夜の高速道路へと消えていった。
後に残されたのは、粉砕された派出所の前で立ち尽くすルナと、ゴンドウ、そしてジン。
「……ワク……ミカ……」
ルナの悲痛な叫びだけが、辺りに虚しく響いた。




