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第二章 実証

縦読み推奨です、そんなにガチなミリタリー系として書いているわけではないので用語などに違和感がある場合があります、ご了承を。

尚、この小説はピクシブに上げていたものを各サイト用に再編集したものです。

ネットで人々は言う、「AABは友好的な生物である」 と。人間は自分が経験したことのない物事を極端に軽く見てしまう、勿論その逆もあるがどっちにしろ極端だ。でも現実でネットの世界ほど極端な人間はあまり見ない、当たり前だ、相手が目の前にいるのだから。では相手が目の前に居ると何が変わるのか、相手が目の前に居ると言う事は自ずと相手の顔を見ている事になる。人の性格というものは顔を見れば嫌でも何となく分かってしまうものだ、ではこれをAABに当てはめてみよう、AABと言うのは我々の星の存在ではない、当然顔も分からない、顔を見れても性格は分からないだろう。

では何故、ネットの人々は「AABが友好的な生物」 だと言うのか、それは与えられた情報から物事を判断するしかない為であると私は考える。今回の場合だと人々は 「Hello」 と言う少ない情報からAABの特性を理解しなければならない。簡単に考えればごく普通の気さくな挨拶だろう、人々が友好的と言うのも無理はない。しかし人々はAABと戦闘をしたことがあるのか?AABと話したことがあるのか?いや、無い。そして人々が言う「友好的」とはあくまで単なる第一印象に過ぎない、人でも長く付き合っている間に相手の印象が変わることはザラだろう。仮にAABが侵略的外来種だと人々が知ることになったらどうだろうか、友好的だと言っていた人々は直ぐに手のひらを返すだろう、中には友好的だと言い続ける人も居るだろうがこうなってしまったら「異端者」扱いだ。

つまり何が言いたいかと言うと、人は大衆の意見に流され易い、ごくごく普通の事だろう。しかしそれ故に今度は間違った情報が大衆の意見となった場合が非常に厄介なのである。間違った情報が大衆の意見になると言うことは今度は逆に正しい情報が異端扱いになってしまう、そうなれば正しい情報はいずれ透明に近くなってしまう、俗に言う「迷信」に近い状態だろう。

そして技術が発展するにつれて正しい情報が正しいと証明される事になる、しかし大衆は見向きもしない、自分が間違った情報を信じていた事なんて忘れているからだ。人は常に新しい物を求めると言って良いだろう、例えば芸能人のゴシップや大企業役員の不祥事。ネットでは新しい情報に溢れているが、正直大半は間違った情報だろう、新しいと言うことは十分に深堀されていない。しかし人々は深堀されていない少ない情報で物事を判断する、そしてそれは大衆の意見となってしまう。これが上記で言った厄介な事案である。AABに関しては私たちが情報を出していないのもあるが、いろんな場所にいろんな憶測が溢れている、くれぐれもこの資料を見ている皆さんにはあくまで中立の姿勢を取っていただきたい。

安久24年 4月17日 国際連盟発、対AABにおける共同声明の一部

 

[chapter:第二章 実証]

 

「では改めて君の処分を通達する、月居揚一中尉、君を現状の戦闘偵察部隊からより対AAB戦に特化した部隊に異動となる。2番機も一緒だ、喜べ」

喉に突っかかる様な粘っこいいつもの声、だがこの声も聴くのは今日までだろう。

前回の戦闘から一週間経った頃、この一週間は意外と快適であった。形だけの軍法会議、形だけの謹慎、形だけの説教。

AABの脅威を世界が理解した今、国際法もAABの前ではほぼ無力であり、形だけが残っている。かたち、かたち、かたち、未曾有の事態が起きると例外が当たり前になってしまう。声明が発表された今、言うまでもないが世界は例外に直面している。にらみ合っていた国同士も協力せざるを得ないのだから面白い。現状でいつも通りなのは一般市民だけだろう。そう、あいつ等は何も知らなくて良い。

「さて、肝心な異動先だが…これは面白い場所だ!」 突如湿った笑い声をあげながら令状をこちらへ差し出す基地司令。

そこに書かれていたのは 『旧前線基地』 という文字、ではその前線基地とは何処にある?と聞くYO-1。ヤツは答える

「今居るここだ!、連邦に一番近いからな!畜生め!」 と。確かに先に交戦した場所は確かに連邦だ、しかし一度でも全機落とされた場所に来るとは考えられない。何故この場所を西連合の対AAB戦における拠点にするのか理解できなかった。

戦術においては一番守りが薄い所から攻めるのが普通であろう。守りが堅い所から攻めても消耗を加速させるだけだ。

では何故、西連合はここに前線を置くのか、それをYO-1が訪ねようとした時に事は起きる。

 

耳を突き刺すサイレン、いつになってもその音を聴くときは死を感じてしまう音、「スクランブルだ!!!」

整備要員が一斉に航空機へ駆け出す、 スクランブルに備え3機は常に待機状態のため発進には数分も掛からない。

しかし問題はそこではない

「待て、こんな機体で太刀打ち出来るのか?俺の機体でやっとの相手に?まさか奴らに遠距離から攻撃を仕掛ける気なのか?」 窓から様子を伺いそう喋るYO-1。それもその筈、この基地に配備されているのは第7世代機、ステルス戦闘機なのだ。たった2世代前の機体だが、隠密にかつ遠距離から戦闘することが前提のステルス機でAAB相手のドッグファイトなどできる筈がない。機体残骸からの採集で奴らは全身にECMを纏っている様な状態であり遠距離からのミサイルなど意味を成さない事がわかっている。だから近距離、かつ目標に直接レーダーを照射できるセミアクティブレーダー誘導ミサイルが使用される。

「仕方あるまい、なんせこの基地が前線となったのは今から3分前の事なのだからな。何より侵犯機がAABと決まった訳でもないだろう?」

「それはそうだが余りにも無謀すぎる、再三言うがあの機体は運動能力だけで言えば第5世代相当だろ?しかも無人機仕様でもない...機体は替えがあるが人にはそれが無いのはあんたにも分かってる筈だ。」

「ああ、勿論分かっている。しかし私も再三言わしてもらうが侵犯機がAABと確定した訳ではないんだ。不確定な情報で正確な判断はできない、君にも分かっている筈だ。」

双方一歩も引かない言い争い。当たり前だ、何人もの人命が掛かっている。戦争において人は最も重視される事柄の一つであり、実質的に防衛側に回っているこちらにとって最重要と言っても過言ではないだろう。


「では、こうしませんか?」


その言葉で二人とも争いを止める。発言したのは他でもない、YO-2だ

「今飛ぼうとしている部隊と、後続でもう1部隊飛ぶじゃないですか?そこにうちの隊も混ざる様な感じで飛ぶと言うのは?」

それを聞いたYO-1は賛同する、彼には絶対的な自信がある。反対にヤツは考える様に黙り込む、部屋に響くのはせかせかしたYO-1の声と電話の音。

「ふーむなるほど、君の意見は分かった。しかし君は大事な事を忘れていないか?」

その言葉の後にYO-2の顔が引きつる、YO-1も事情を察したように黙る。彼はいくら激戦後とは言えヤツに楯突いていたのだから。

だがヤツはその心配と裏腹に思いもよらない発言をする。

「何故黙る?まさか未だに君らが楯突いた事を言っていたと思っているのか?」

彼らが驚いた顔をするとヤツは続ける

「流石の私でも永遠にネチネチ言うことはしないさ。大事な事と言うのは君の所の2番機の修理だよ、まだ終わっとらんだろう?

全く、最新鋭機など使いおって、おかげでパーツは届いたが今作業の最中だ。」

そう言いながらヤツは鳴る電話を取る。

電話を取ったヤツの表情はみるみるニヤけた表情に変わって行く、まるで何か悪い事を考えている学生の様だ。

そして相槌を何回打ったか分からない頃に電話を終えて言う。

「YO隊、発進だ。今滑走路に居る機体が飛んだら直ぐに後続が上がる。そいつらに続け!」

それを聞いたYO隊は軽く会釈をしてロッカールームへ走る、部屋に残ったのは何故か満足気な基地司令。ただ一人

 

「にしても、やっぱりここが前線基地なんですねぇ、まさか本当に再度この空域に来るとは思いませんでした。」

耐Gスーツを着ながら話す彼等、残された時間は3分。

「確かになぁ。まぁ前回の侵犯は同時多発的なものではなかったし、偵察機も落とした。」

恐ろしい速度で準備を終えた揚一は椅子に腰かけ続ける。

「ただ偵察機って言うのは勿論リアルタイムで情報を送るわけだ、戦闘前のあの高度ならここらの地形は丸わかり。そしてここら辺は山が連なる国境付近。」

そう言い椅子から立ち上がった揚一は言う。

「前回来たのはこちらと同じ戦闘偵察型だろうが、恐らく今回は純粋な戦闘型だろうな。そうなると相手の能力は未知数だ、心していくぞ。」

そう言うと揚一はロッカールームを先に出る、それをYO-2は急いで追いかける。

愛機へ向かう途中に「今の俺カッコよくなかった?」と言ってたのは秘密の話。


そうして愛機のFD-5へ向かう二人、しかし二人はある事に気が付き、急いで揚一が整備士に近づき問い詰める。

「なぁ、なんか可笑しくないか?俺達の機体はこんなにゴテゴテじゃなかった気がするんだが。」

それを聞いた整備士はやっぱりなと言いたそうな振る舞いで

「いや...これ実は基地司令に指示されてやりまして...まぁ拡張性はこの機体の良いところですよね。」

それを相槌うって聞きながら改めて機体をまじまじ見る。

空対空ミサイルが全10本、偵察用のポッドが撤去されそこに居座るのは追尾用のレーダー。機関砲は連邦製の30mmガトリング砲に換装され、銃身が今にも挨拶をしてきそうな状態だった。さらにエンジンまでもが換装されている様だ。

「俺は腐っても戦闘機乗りだからある程度知識はあると自負してる。だからこそ聞くが、なんでメインエンジンが3次元偏向から2次元偏向ノズルになってるんだ?」

それを聞いた整備士は顔を明るくして答えようとするがそこで

『YO隊、何をもたもたしている?機体についてのお喋りなど帰ってからでも出来るだろう?今は早く飛ぶことに集中するんだ』

その声の主は基地司令だった。しかし今は状況が状況だ。と、今すぐ問い詰めたい気持ちを抑え各々の機体に乗り込む二人。

「帰ったらたっぷりお喋りしてやる、今は先に行った仲間とお喋りすることに重きを置け、オーバー」

急いでる事実は変わらないので出撃前のチェックをするYO隊、コックピットには変わった様子はない。アイドル状態からスロットルを開け機体をゆっくり進ませる、いつもと変わらない。方向転換でラダーペダルを踏む、異様に軽い。

滑走路に差し掛かりブレーキを掛けスロットルをアイドルに戻す。

「滑走路クリア、YO隊、発進を許可する。」

合図の後、スロットルをいつもの位置まで開ける、何かが違う。スロットルを離陸推力まで開ける、いつもの感覚。しかし機体重量はいつもより遥かに重い筈だ。そしていつもの感覚で加速、思わず笑みが漏れる。

離陸速度に達し操縦桿を引く、明らかに違う、機体が自分の手足よりも体に馴染む。人馬一体と言う言葉が具現化したような状態。

「無線チェック、聴こえるかYO-2」 「感度良好、問題ないです隊長。」 そうして無線をチェックし巡航速度まで加速する。ここまでに大きな違和感はさほど無かったが何かが違う。例えるならば大排気量車に乗っている感覚、出力がヌルッと出て来て無限に加速して行くあの感覚。アフターバーナー無しでもドッグファイトが出来そうな程のパワーだった。

そしてその差を感じながら先遣隊が居るポイントへと向かう。回転計はまだ50%を指しており、まだまだ出力に余裕がある事を示唆していた。

そうして二機は巡航速度まで加速、司令を問い詰める為に基地へ無線を送る。

「YO-1より地上管制、テンプレ確認は後だ、奴に繋いでくれ」

「奴呼びとは酷いじゃないか月居中尉、しかし気に入ってくれたようで何よりだ。ずっとここで見守っていた甲斐があったよ」

「それはどうも基地司令、だが質問はさせてもらう。まずはエンジンだ」

空に上がった今になって分かる、このエンジンは狂気だ。

 

言葉では言い表せない何か、一瞬でもA/Bに入れればGで死ねる様な感覚。腹のエンジンまで点火しようものなら少なくとも意識は無いだろう。

「やはりエンジンか、だが期待に応えられる回答は出来ない。確かにエンジンは変わっている、だが私も詳しくは知らないんだ」

聞くとエンジン自体は連邦製だが詳細は不明、上層部もダンマリで問い合わせても「機密」とだけ言われ、基地司令でも知れない情報だそう。

エンジンは言わば戦闘機の「華」である。推力はもちろん、ラダーやフラップ、尾翼等を司る油圧系。レーダー、計器、生命維持を司る電気系。おまけにこの機体にはDFBWが搭載されている、その全てを支えるのがコンピュータだ。そのコンピュータの冷却装置も電気もエンジンがオルタネーターやウォータポンプを回して成り立っている。だが正直な話、今挙げた話は内燃機関を搭載する物であれば大体は当たり前の話、

では何故この話を挙げたのか、それはYO-1がエンジンの詳細について執拗に聞く原因にもなる。すなわち「信頼性」だ。

航空機は空を超高速で飛ぶ特性上事故の際の死亡率が高い、戦闘機ならほぼ死ぬだろう。だから事故の可能性を極限まで減らす、そして事故で最も致命的なのはエンジン。この機体、FD-5は油圧系、電気系は完全にエンジン頼りでありエンジンの故障は死を意味する。民間機や他の戦闘機の様な緊急時に働く装置は開発期間の関係で省かれているのだ。ましてや、つい最近まで敵国だった国のものとなれば案ずるのも当然だろう。

「ここまで聞いても何も知らないの一点張りって事はマジで知らないだな、あんたは」 「分かってくれたなら嬉しいよ」

「だがこれだけは言わせて貰う」 とYO-1は今までにない冷静な声で言う。そしてこう続ける、「万が一が有ったら死ぬのは俺らだ、それだけは覚えておけ。」 と


* * *


午前八時四十八分、スクランブル発令から十五分が立つ頃。一番最初に対応のため飛んだ部隊、第225飛行隊が不明機侵入を確認した空域に到達しようとしていた。

「こちら225飛行隊、確認空域まで20km。しかしレーダーに何の機影もありません。」

「了解。現在後続の207飛行隊とおまけがそちらを追っている、おまけは先にAABと交戦したYO隊だ。」

「それは心強い...いや待て、目標と思われる隊を目視。編成は...」 「編成は何だ続けろ」

基地と225飛行隊の間に間が流れる 「連邦の爆撃機、それも恐らく」 「恐らくなんだ、さっさと言え」

そうして驚きと恐怖が混じった声で言う。


「恐らく...『TU‐160』です」


その言葉を聞き声が裏返るオペレーター。それもそうだろう、TU‐160は遥か昔の、今となっては化石に近い機体でありとてもじゃないが連邦が前線に投入する機体ではない。それに、現在この世界に動態保存されている機体は無いのだ。

「TU‐160で本当に間違い無いんだな?」と基地のオペレーターが改めて言う。「TU‐160で間違いない筈です、なんせ僕は軍用機が好きでこの世界に来たんです。博物館でみたまんまの機体です。現状は1機のみ」 「了解した、では次に一応国籍マークは見えるか?」 その言葉の後に目を凝らして尾翼を見る、「見えません、それに機体が真っ黒です。何というか...亡霊を見てる気分ですね」 「亡霊か、なるほど。では最後に武装を確認してくれ」 分かりましたと返事をしてもう一度不明機に目を凝らすが見えない。「武装が見えません、機体のカメラ映像をそっちで解析できますか?」 「生憎だが奴らのジャミングで映像は見れん、無線がやっとの状況だ」 「了解です、ならもう少し近づいてみます」 と近づこうとする、しかし近づけない。スロットルを限界まで倒す、やっと近づいてきた、そして武装が見える。しかし何なのか分からない。一か八かで機体を横に着ける、「文字が見えました、内容は爆破物の警告みたいです。それにロシア語で書かれてる」 「兵器の種類は分かるか?」 「巡航ミサイルだと思われます、主翼の様な物が付いてます」 それを聞きTU - 160 の搭載可能武装を急いで調べるオペレーター、そして一つの可能性を導き出し、慌てた声で言う。

「225全機へ次ぐ、搭載武装は核兵器の可能性あり。至急撃墜せよ!繰り返す、未確認機は核搭載機の可能性あり!」

225は即座にフォーメーションを組みレーダーロックを試みる、しかし出来ない。先述の通り奴らは存在がジャミング発生装置の様な物であり一般的なアクティブレーダー誘導は通用しない、7世代機にとっては致命的な相手なのだ。であれば撃墜できる方法は一つ 「武装を機銃に切り替え、直接の撃墜を試みます」 しかし機銃による近接戦闘での撃墜には一つのリスクが隠れていた。爆撃機の後ろを取り機銃を撃つためにトリガーを引く、機銃の蓋が開いたその時、「レーダーロック!何故だ!?何処から!?」 機銃の蓋が開き銃身が現れわずかにステルス性能が落ちる、しかしそのわずかでも奴らのレーダーには十分だったらしい。ロックされたのは225の一番機、彼は必死に回避行動を行いながらデコイを放出するが以前警報は鳴りやまない。ましてやどこからミサイルが接近しているのかさえ分からない。唯一の頼み綱であるHUDも全方位からミサイルが接近していると表示しており距離なんか分かりもしない、ただいつ来るか分からない恐怖とともに回避行動をとるしか生きる道は無いのだ。だがその隙を狙い2番機と3番機が爆撃機へ向け機銃を撃つ、「目標、効果あり!右翼が落ちて行きます!」 当たった!これで爆撃機は撃墜かと思われた。この時点で基地からは200キロメートル。こうして脅威は過ぎ去った筈が現実は非情であった。

「爆撃機から巡航ミサイルの発射を確認、また衛星画像の解析が完了!巡航ミサイルはKh‐55と断定!核弾頭型です!」

「聞こえたな?225全機は戦域を離脱せよ、君たちの任務は終わった。1番機は機体を捨ててでも生き残れ、後は後続に任せろ。アウト」 1番機は即座にベイルアウト、その他二機も巡航ミサイルを追い越して撤退する。すると前から高速で二機が接近してきた。「あれは・・・友軍ですね」 すると1番機のパイロットが言う。「F‐15だ・・・しかも亡霊じゃない、正真正銘の」 パラシュートの傘に揺られながら接近してくる機体を見ていると一つの無線が入る 「そこの傘に揺られてる一番機、通過時の衝撃波に注意せよ」 この無線から実に三秒。二機が眼前何十メートルを通過した、いや、通過した筈。なんせ見えなかったんだ、通過したのはソニックブームがあったから分かった様なもの。

 

そうして通過して行った方向を見ていると二発のミサイルが接近してきてまた目の前を通り過ぎて行った。すると二番機から無線が入る 「後方で爆発閃光を確認、巡航ミサイルを落とした・・・?」 さらに基地からも無線が入る 「空中に居る全機に通達、全脅威目標の撃破を確認。迎撃に出た全機は帰投せよ。」 その時に225各機は理解した、あの旧世代の化石がYO隊であり、AABを最も知る部隊、言わば最後の切り札なのだと。


*   *   *


翌日

「おかげさまで俺たちの出番は無かったな」 「あんた等の機体じゃ出来ることは無いに等しいからな、だからステルス機を上げても意味ないって言ったんだよ」 そう話すのは207飛行隊とYO隊の長達、7世代機を操る者と9世代機を操る者の雑談。

そこに225の一番機が通る。「ちょっとそこのあんちゃん、確か225の一番機だったよな?」 そう声を掛けたのはYO隊の長、揚一。三人になった雑談は必然的に先の爆撃機へと変わる。「にしてもよく正体不明の爆撃機にあそこまで寄せたよ、見たぞ?あの一連の動画」 一部始終を記録していたカメラ、本来は戦争犯罪を防止するために設置されたが今回は爆撃機の解析に一役買ったのだ。「あの時は凄く必死でしたし恐怖でアドレナリンが止まりませんでしたよ、なんせ核なんか言われた時には失神しそうでしたもん」 その言葉に同情と笑いを浮かべる二人、「そう言えば自己紹介まだでしたね、どうも225の隊長をやってます。本名は言えないので・・・まあジャックとでも呼んでください」 「ジャック?随分と洒落た名前だな。分かった、そう呼ぶよ」 話題は空戦の話に戻りレーダーの話になる。「あの時はもう完全に死んだと思いましたよ、なんせ警報は鳴りっぱなし、ミサイルの方向も分からなければ距離だって分からなかった。」 そうジャックが言うと揚一が尋ねる。「そこなんだよ俺の疑問は。俺の機体や基地には巡航ミサイルしかレーダーに映って無かったんだ。」 「確かに、225と機体は同じだけど俺の機体にも巡航ミサイルしか映って無かったな。まあ225とデータをリンクしようにもジャミングされてたんだが」 と実際に接近警報が鳴っていたにも関わらず他の機体には実際に飛翔してきていたデータが無いのだ。そんな会話をしていると225とYOに呼び出しが掛った。「とりあえず俺らは行ってくるわ、また今度」 207と別れて管制室へ向かう二人、急いでいたため会話はほとんど無かった。

「よし、二人が来たな。まず225、よく爆撃機を墜としてくれた。君が囮となった隙に他の機がやってくれたと聞いている、本当によくやってくれた。」 ありがとうございますと深々と頭を下げる。「よし、では本題だ。」 爆撃機はTU‐160で間違いない事、また確かにジャックはロックオンされていた事、巡航ミサイルには確かに核物質が含まれていた事などが主な内容であった。「さて、本題の中でも特に重要な部分だ」 そしてオペレーターは続ける。「あの後に機体残骸回収のため現場に行ったんだが爆撃機と思われる機体の残骸は無かったんだ」 その言葉に二人は驚きを見せる、さらにとオペレーターは話を続ける。「225の一番機の機体残骸は発見されたんだが、状態があまりに酷かったのと天候の関係でブラックボックスと録画データのみを持ち帰って残骸自体は後日回収になったんだ」 そうなんですねと言おうとしたジャックを最後まで聞いてくれと止めるオペレーター、「そうして翌日に天候も改善し回収となったんだが・・・『機体の残骸は無かったんだ』、跡形もなく」 さらに詳しく話を聞くと、一回目の回収時点でTU‐160と思われる爆撃機の残骸は現場に見られず、巡航ミサイルの墜落地点にもミサイルの残骸は無く少量の放射性物質のみが残っていた。だが天候も悪く現状ではAABの情報を得られないと判断したので7世代機、「F-27」 の機密度が高い上記の二点のみを持っていたとのこと。「なんせあの時はスコールが来てたんだ、この時期のこんな場所で?とは思ったが自然の力には人間勝てんからな」 そして翌日、スコールは過ぎ去り改めて機体残骸を回収しようとしたが、そこには炭となった草とオイルの染みだけが残っていた。「あれは本当に驚いたさ、昨日まであった何十トンの塊が無いんだぞ?座標の間違いも疑ったが戦闘機が落ちた場所には当然ギャップがあるんだ。間違いようがないだろう」 辺りは森ではなく広大な草原、そんな草原に戦闘機が墜ちればその場所だけ当然草が禿げ、土は散らばり散々な状態になる。そんな状態の場所なんて自然には生まれないだろう。「そんなこんなでジャック君の愛機は未だに行方不明だ、申し訳ないが別のF-27を充てるよ」 そうして話は以上だと部屋を出され、軽く挨拶を交わし二人は別の帰路に就く。揚一は宿舎に戻る為歩いているとYO-2に遭遇、先のスクランブルの話をしたり、ジャックの話をしたりの他愛もない会話を交わしていた。すると「隊長ってあの話知ってます?」 話を振ってきた、すかさず「何の話だ?」と返すと「あれですよあれ、航空機の墓場から機体が消えたの。知らないんですか?」 と。聞いてみると航空機の墓場と呼ばれる場所から一か月程前に機体が一機消えたらしい。「一体何が消えたんだ?墓場って言うくらいだから相当古い機体なんだろ?」 機体名が確か・・・と考えるYO-2。三十秒ほど考えた後に「そうだ!」と言う。


『トムキャットですよ!確かF-14だったかな?可変翼の』






機体紹介 『FD-5』


元は西連合国の新型機として開発されていた。

レーダー技術の発達によりステルス技術が意味を成さなくなって来たこの時代に対応する為、かつての実験機「F15 ACTIVE」をベースに開発されている。

最高速は双発時でAB無し2100km/h前後、ABを吹いて3100km/h前後とされている

エンジン3発全稼働時は驚異の5000km/hと叩き出すとされているが、余りにも燃費が悪いため殆ど使われないらしい。

機体に関しては複合強化素材を57%使用しているため重量は通常の双発機と変わらない。エンジンパワーと軽量な機体のためこの速度を叩き出す事が出来るのだ。

しかしこの複合素材はレーダー波を通しにくい素材なのでレーダーに関しては、インテークを少し小さくし無理やり外付けしている。

また、3発目エンジンの両端にもミサイル誘導専用のレーダーを搭載可能な為、主にセミアクティブレーダー誘導ミサイル使用時に搭載される。

昨今の事情を鑑みて拡張性は最高レベルなのだ。

そのため一般的なアクティブレーダーAAMは勿論の事、各種空対地兵器や上記の兵器全部乗せも可能だ。

現状は単座型しか生産されていない。本来レーダーが収まる位置にレーダーが無いためその位置に処理用のコンピューターが搭載されている。

余談だが機体ネームに付いている「FD」とは、試作機の段階でAABの強行偵察が起きたため、従来のFighterから来る「F」と事実上の侵略者である「AAB」を排除するため駆逐を意味する「Destroy」の「D」から来ているらしい。

諸元(推定値)

FD-5 (先行試作機)

機体重量 17,000kg

Engine XF-48 ×2 (???kN) 三次元偏向ノズル

FDE-33 ×1 (????kN) 二次元偏向ノズル

運用時重量 22,358kg (写真の武装から推測)

最大離陸重量 不明

最大速度 マッハ2.3(¹ミリタリー推力時)

(高度20,000m時点) マッハ2.7 (²A/B使用時)

????km/h (³三発AB使用時)

航続距離 3000km (¹)

(推定) 2000km (³)

全長 19.7m

全幅 14m

全高 5.7m


※ここに書いたすべての情報は一部の関係者からの取材や推定であり確実ではない可能性があります。


安久27年 「FXKING FIGHTERs」7月号より抜粋

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