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第二話 影と名と、鋼の誓い

《旧訓練場跡地》を抜けた廻は、リヴァースの北門前に姿を現した。


斬り、そして、何も得ずに去ったあの戦い。

それが波紋を広げていたことに、彼自身はまだ気づいていない。





「おい、あんた、、、もしかして、《KAI》って名前の剣士か?」



声をかけてきたのは、短身で茶髪の軽装剣士。

装備は一式整っているが、表情は怯えにも似た警戒心を張っている。



「見てたのか?」


「見てたっていうか、、、流れてた。公式チャンネルで」


「なるほど、、、勝手に撮られたってわけか」



淡々と応じる廻に、軽装剣士が息を呑む。


「な、なぁ、あんた、、痛覚、100%、、、なんだろ?」



問いかけというより、確認だった。

しかし、廻は心底つまらなそうに。



「それがどうした」



そう言って、去っていった。

その剣士は、それ以上何も言えず、その後ろ姿を眺めるしかなかった。



(名前が一人歩きしてるな、、、気に入らん)


彼は軽く舌打ちする。



廻は知らなかった。

あの“蒼牙閃流”の登録と同時に、彼のID《KAI》は一部プレイヤーの間で《リヴァースの鬼》として語られ始めていたことを。



そしてもう一つ。

あの戦いが、ある“管理側”の目に止まったことも。





時を同じくして、ZENO-GEAR運営本部。

通称ゼノアーク


システム制御室にて、一人のAI監視官がログを確認していた。


「、、また、予測外の挙動。ログナンバーA-70387、御剣 廻、ID:KAI」


隣にいた技術監査が苦笑する。



「AI評価ランクAの教材指定ってのも久しぶりですねぇ。しかも、レベル1の木刀使いって」


「問題はそこじゃない」



AI監視官はモニターを切り替え、プレイヤーステータスの断片を示す。


「感覚反応応答時間、0.14秒」


「それ、100%痛覚設定時の理論値じゃ、、、」


「だが、現時点で公式には“設定データ未開示”。本人のみが知る領域だ」



「なるほど、、、」


監査員は手を組む。


「なら、しばらく泳がせてみますか?“剣士型AIの対人挙動研究”って名目で」



AI監視官は無言のまま頷く。

そして、密かにプロファイルを開く。


【個別監視対象:No.00103《KAI》】

備考:接続時間パターン・行動傾向・戦闘映像の蓄積を優先。





その夜、リヴァース郊外の草原。

廻は、ひとりで雑魚モンスターを斬っていた。


目的は経験値ではない。

システム側の斬撃判定。

それがどう“ズレる”かを確かめるため。



「リアルより、ほんのわずかに深い。距離感が甘くなる、、、いや、追従処理のせいか?」


木刀を納め、彼は空を見上げる。


「まだ、全然斬れてねぇ」



その時。


森の陰から、一人の影がこちらを注視していた。



フードを被った少女。

手には“刀”。


「、、あれが、《蒼牙閃流》創始者」



その目には、ただの敵意ではない。

憧れにも似た、微かな“焦り”があった。



名を持つ者は、名を求められる。



御剣 廻という剣士の物語は、まだ始まったばかりだ。

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